ーこれからー
・・・泣き止むのに、
しばらく時間がかかった。
ピンッと張っていた緊張の糸が切れてしまったように。
私が泣いている間、
アカズサさんは、ずっと私の頭を撫でてくれていた。
その横で、
「・・・・、で。
何で俺を縛る必要があんのさぁ?」
少しイライラしながら呟くカンヌイさんを、
今、イオリくんが椅子に縛りつけている。
「何でも何も、お前は余計な事ばかりするから。
・・・本当ならシオンのヤツに枷を行使させてやりたい所なんだ。」
イオリくんは、それは嫌な顔でカンヌイさんを見やる。
「ハハハハハハ!!!!
あー、確かにぃ、シオンちゃんには無理だねぇ♪
そんな酷い事させたら、
シオンちゃん、泣いちゃうもんねぇ?」
カンヌイは、イオリにニヤリと笑いながら答えた。
「・・・・イオリ、
さあ、コーヒーを淹れ直す、
今後の算段をしよう。」
アカズサさんが、睨み会うイオリくんとカンヌイさんを
見て、その会話に割って入り、
そう言うと、
イオリくんはもう一度カンヌイさんを睨んだ後、
スタスタとアカズサさんと私がいる側に来て、
椅子に腰かけた。
「 ・・・さて、じゃあ始めようか。
互いに、話の途中で意見があったら遠慮なく言い合おう。
でもまず、最初に言わせてくれ、
二人共、・・・今回は、俺のせいでこんな事になってしまって、
・・・本当にすまなかった。 」
アカズサさんは、私達二人に頭を下げる。
ーー!!も、もう謝らないで下さいアカズサさん!!ーー
「・・・まあ確かに、大体がお前のせいだよね。」
ーー・・・!!??イ、イオリくん!!ーーーー
「・・・でも、そんなのは今更だし、
もう済んだ事なんだ。
見ての通り僕達は生きてるんだから、
いつまでもくよくよしてられないよアカズサ。
大事なのはこれから、でしょ?」
イオリくんは、
・・・とても分かりにくい言い方だけど、
イオリくんなりに、アカズサさんを励ましているような気がする。
「・・・・うん、そうだな、イオリ。
・・・ありがとうな。
・・・それじゃあ、話を戻そう、
俺は、今までの事を、二人が眠っている間に、
少し整理してみたんだ。
まず、
シオンの(声)と(縁)を奪った張本人だけど、
やはり以前話したように、それは
俺の(親)である、<死の番人>の可能性が一番濃厚だ。」
「・・・それは、間違い無いかもな。
僕は、あの時カンヌイのフロアで
アイツを見てる。
その時言ってたんだ、
**ーーネズミの分際で
マナの体に気安く触るなーー**
ってね。」
イオリくんは、その時の事を思い出しているのか、
苦々しい顔をしている。
ーー・・・・・・
マナ・・・・・?ーーー
・・・・・・ドキッ・・・・・
その名前は・・・・・
確か、
カンヌイさんの部屋でも聞いて、
今朝も・・・・・・聞いたような・・・・・・
私は、言い様の無い不安がよぎった。
ーー・・・・・マナさんって、
カンヌイさんの部屋にも人形がありましたけど、
一体・・・・・・誰なんですか?・・・・・ーー
私が、意を決して切り出すと、
自然に名前を口にしてしまったのだろう、
イオリくんは、ばつの悪そうな顔をした。
「・・・・・・
マナは・・・・・・
昔、
・・・・・僕を騙して、
儀式の贄にした女の名前だよ」