ー貪欲ー
クロサギは振り下ろした大剣をピタリと止め、
声のする方へ虚ろな視線を移す。
そこには、ずっと探していた娘の姿があった。
クロサギは目を見開き、シオンを見つめると、
瀕死のアカズサと深手を負ったイオリには目もくれずに
シオンの方へと歩き始めた。
「・・・!!!???シ・・・・・オ・・ン!!!逃げろ!!!」
イオリは叫ぶ。
ーー・・え・・・・な・・・・んで・・・・
ア・・・・ア・・・・・アカズサ・・・・さん・・?????
イオリくん・・・・・なんで・・・・
どうして・・・・・アカズサさんがそんな・・・・・???ーー
シオンは錯乱している。
無理もない、先程まで
彼等は元気にしていたのだ。
それが今や、イオリは大怪我をし、
アカズサは生きているのかも分からない。
イオリ達の周りの床には、
アカズサの物と思われる血が大量に流れ出ている。
シオンはガクガクと足を震わせると、
涙を流して狼狽え
思わず手に持っていた写真と勾玉を握りしめた。
「「・・・アア・・・・
・・・アア・・・・・
・・・・・・・マナ・・・・
・・・・ヤット・・・
・・・・ヤットミツケタゾ・・・・
・・・・・愛シイ・・・・・・マナ・・・・・・
・・・・
・・・・・・オイデ・・・・・・
・・・・・・オイデ・・・・・・・」」
クロサギはシオンに接近する。
そこに、クロノが立ちはだかった。
「・・・・・クロサギさん・・・・いえ・・・・・・
今は(--------)様・・・ですね?
私はクロノと申します。
申し訳ありませんが、
今彼女を貴方にお渡しする事は出来ません。
どうしてもと仰るなら、このクロノがお相手致します。」
クロノはシオンの前に立ち、
閉じていた片目を開く
すると、
ありとあらゆる所から時計盤のような紋様が浮かび上がり
それらはチクタクと、
時を刻み始める。
「「・・・・・・・クロノ・・・・・
・・・・・キサマモ・・・・・
・・・・ジャマヲスルノカ・・・・・・」」
クロサギ(死の番人)はクロノに視線を合わせると、
持っていた大剣を向ける。
「・・・私は、戦闘は好みませんが、
〈死の番人〉をなさっていた貴方様の
お力の一部を封じる位なら、私にも可能です。
彼女を、今貴方様にお渡しする事は不可能ですので、
残念ですが
その操っていらっしゃる(子供)には消滅していただきます
ご了承下さい------様。」
クロノはそう言うと、
小型のナイフを取り出し、自身の首にあてがう。
「「・・・・・・・
・・・・・・イーター(貪食)・・・・・・カ・・・」」
クロサギ(死の番人)は身構える。
「おや、さすがに
ご存知でしたか。
・・・・・そう・・・私
〈時の番人〉の本質は永遠の探求。
貪欲にあらゆるものを飲み込む貪食を
体に封印しております。
一度解放すれば、貴方を飲み込むまで止まりません。」
クロノがクロサギに対峙している最中、
イオリはアカズサの体を見ていた。
想像していたより傷が深く、
押さえていても血が止まらない。
このままでは、アカズサは死んでしまう。
イオリは自身の不甲斐なさを恨んだ。
クロサギが現れた時
イオリは
その圧倒的な魔力と殺気
狂気の前に
恐れを抱いていた。
その為、魔力の紋様を張る間を失い、
自分よりも魔力のないアカズサは深手を負ってしまった。
イオリは拳から血が滲むほど力を込めた。
「・・・・・・・アカズサ・・・・
・・・・・・アカズサ・・・・・・ごめん・・・・・
俺が・・・・・・
俺のせいで・・・・・・・・」
イオリは眉間に皺を寄せてアカズサに謝罪した。
その顔は
今にも泣きそうだった。
(・・・貪欲にあらゆるものを飲み込む貪食を
体に封印しております
一度解放すれば貴方を飲み込むまで止まりません)
・・・・と、
イオリはクロノの言葉に聞き覚えのある名前を聞いて
うつ向いていた顔をあげる。
「・・・・・・
・・・・貪食・・・・だって・・・・??」
イオリは、
その聞き覚えのある名前を、
今まで読み漁ってきた本を記憶している脳内で必死に探った。
・・・・貪食・・・・
!!!!!
思い出した、貪食は確か、
6人いる使者の1人が、遥か昔に封印したって言う・・
人喰いのバケモノの名前だ。
あんな物をこんな所で解放されたら・・・!!
血の匂いでアカズサや俺が先に喰われる・・!!!!
・・・・あの野郎、
クロサギを消す為なら俺達を巻き込むのも厭わないつもりか!?
イオリは焦ってアカズサを見る、
しかし、どう考えても動かせる状態じゃない。
でも、このままでは二人とも巻き添えになる。
・・・・・クソ・・・・・
・・・・・・ヤメロ・・・・
・・・ヤメテクレ・・・・
・・・・・・アカズサを・・・・
コロスナ・・・
「・・・ヤ・・・・メテクレ!!!!」
イオリは叫んだ。
しかし
その叫びは
1人の女性の声で遮られた。
その声のした方に皆が一斉に視線を移すと
そこにいたはずのシオンの姿はなく
髪の長い
美しい女性が立っていた。




