ーネズミ同士の確執ー
そうして、
しばらくケケのされるがままになっていた私は、
少し考え事をしていたためボーッとしていたが、
ケケの合図で、髪の毛のセットが終わったと告げられた。
髪は、もう私には表現できない結い方で、
所々を三つ編みにした部分を繋ぎ会わせ、
左側にまとめてあるようだった。
その、まとめている部分には、
華やかなアクセサリーが付いている。
私は、鏡で自分の姿を確認すると、
あまりに華やかに飾られた自分を見て、
ーー・・・・・馬子にも衣装って、イオリくんに言われちゃいそうだなぁ・・・ーー
と思わず苦笑いしてしまった。
** お気に召しましたでございましょうか、シオン様・・**
いつの間にか回りの物をキレイさっぱり片付けていた
ケケちゃんが、腰をかがめ、
私の評価を待っているようだった。
ーー!!!!あ、ありがとうケケちゃん!!
本当に、私には勿体ない位素敵だよ!! ーー
私は、また身ぶり手振りでケケちゃんにお礼をのべると、
ケケちゃんは嬉しそうに微笑んでいた。
「・・・・へぇ、
ドブネズミの割にはマトモな服を作るじゃん?」
そこへ、
あまり聞きたくない声が後ろから聞こえた。
ーー・・・・!!!カ、カンヌイさん、
起きてたんですか?・・・ーー
「うん、
何か、随分シオンちゃんの楽しそうな声が聞こえたからさぁ?
気になって起きたら、
小汚ないドブネズミがいるから驚いたよぉ。」
カンヌイさんは、さっきから失礼な物言いをしている。
ーー・・・カンヌイさん、
ドブネズミって何ですか、
ケケちゃんに失礼ですよ、やめて下さい!!ーー
** ・・・・・・・お前は、ハリネズミ・・・!!! **
ケケちゃんは、カンヌイさんを凝視している。
ーー・・・・・??ケ、ケケちゃん?
大丈夫・・・・??ーーー
私はケケちゃんの様子がおかしかったので、
もしや、
さっきのカンヌイさんの言葉に傷付いたのではと心配したけど、
・・・どうも、そうではないらしかった。
** ・・・・ここは、アカズサ様のお部屋だ、
何で人形狂いのネズミがここにいる・・・
ベッドから降りろ、
・・・・お前を殺してやる・・・・**
・・・・・・・ん?・・・・・・
・・・・今、
ケケちゃんの可愛い小さな口から、
とんでもない言葉が聞こえた気が・・・・・
・・・・いや、きっと幻聴だ、うん。
「???は・・・????
ハハハハハハ!!!!
お前・・・ドブネズミの分際で、
この俺を殺すぅ?
身の程を知らないドブネズミはぁ、
今すぐ生きたまま皮膚を剥がしてやるよぉ!」
カンヌイさんは、ハリネズミの姿から、
ボンッ
と少年の姿になると、
手から青紫色に光る針のような物を出現させ、
ケケちゃんに飛びかかった。
ーー!!!!?????ケケちゃん!!!!!!ーー
私は、思わず目を瞑りながらケケちゃんの前に出たが、
一向に衝撃がくる様子が無く、恐る恐る目を開ける。
すると、
ケケちゃんはいつの間にか私の目の前に移動していて、
カンヌイさんが振り下ろした針の一撃を、
・・・見たところ、ホウキ一本で軽々と受け止めていた。
ーー!!!!!?????ーー
私は、あまりの光景に呆気に取られていると、
ケケちゃんは目にも止まらぬ早さで
その受け止めているホウキを
・・・カンヌイさんごと降り投げた。
「・・・・ッ!!!!???」
カンヌイさんは予想していなかったのか、
とっさに受け身を取る事ができず、背中を、
壁に強かに打ち付けたようだった。
「・・・・グッ!!!」
** ・・・あら、
噂は聞いてましたが、
お前の魔力はその程度なのですか。
言っておきますが、
私は許しません。
お前はシオン様とイオリ様のお命を危険に晒した・・・
今すぐ引き裂いて差し上げます・・・!**
ケケちゃんは、スカートなのにも関わらず、
目にも止まらぬ早さでカンヌイさんに接近すると、
首を締め上げる。
「グッ!!!!!ア・・・!!!」
**・・・・死をもって、お二人に懺悔なさい・・・**
これは、
これはまずい!!!
私は、弾かれたように走りだし、
ケケちゃんの腕を掴んだ。
**・・・・・!?・・・シオン様?・・・**
ーーケケちゃんヤメテ!!!
お願い!!!!ーーーー
私は、声は届かないと言ってもいられずに、
必死に腕にしがみつく。
**・・・・・何故ですか、・・・・
コイツはシオン様とイオリ様のお命を奪おうとしたのですよ!?**
ケケちゃんの声は、少し震えている。
ーー・・・・・それは、
そうだよ。
でも、
私のせいでケケちゃんが人殺しになるのはイヤなの!!ーーー
私が叫んだのとほぼ同時に、
ドアが開き、
聞き覚えのある声が、ケケちゃんに投げ掛けられた。
「やめろケケ、ソイツを殺せばシオンが死んでしまうぞ。」
ケケちゃんは、
その言葉を聞いた瞬間、
目を見開いて
パッとその手を離した。