ー見知らぬ人ー
3人が振り返ると、そこには
山暮らしには不釣り合いな服装の男性が立っていた。
私はその男性を見る。
黒と茶色の柄が入ったタキシードのような服を着ている。
手には白い手袋をはめて、
首には紐のような物にブローチのような物が付いている。
靴は、黒い、革靴だろうか、
私は、あまりに景色に浮いているその人の顔を見る。
歳は30代~40代位、
えっと、あれは、何だっけ。
モノクル?
片目に眼鏡をかけている。
髪は真っ白で、まるで雪のようだった。
<フフッそんなに見られたら、
穴が空いてしまいそうですね。>
ーー・・・・・!!!!!!!す、すみません!!!!ーー
や、やってしまった、
雪深い山奥なのに、
まるでこれからパーティーにでも行くのかと思うような
男性の出で立ちに、思わずじっと眺めてしまった。
「・・・・あの、
失礼ですが、この小屋にお住まいですか?」
アカズサさんは、普段の口調ではなく、
丁寧に質問している。
<ええ、もうかれこれ1000年程は。
さて、こんな吹雪の中に、私に何かご用でしょうか?>
「・・・・すみません、
実は、俺達は遠く南の方より人探しに来ていまして、
情けない話、ここまでの極寒とは知らずに来たため、
このように薄着で、凍えそうで困っているのです。
もし叶うのなら、貴方様の住まいに、
せめて、吹雪がやむまで身を置かせては
貰えないかと。」
アカズサさんは、そう言うと先程まで平気な顔をしていたが、
両肩をさすり、寒そうに振る舞った。
<おやおや、それはいけませんね、
どうぞ早く中にお入り下さい、
調度今、暖炉に火をくべて、野菜をたっぷりと使ったスープを作っています。
大したもてなしは出来ませんが、
さあどうぞこちらへ、
レディ。>
すると男性は私に近づき、
滑るような手つきで私の手を取ると、
その手の甲に顔を近づける。
・・・・・
・・・・・え・・・・・?
・・・・・って、・・・・え・・・・??
<・・・・おや、
申し訳ありません、寒さに震える可憐なレディを
エスコートしようかと思い
手を差し出したのですが、お気にさわりましたか?>
私は、あまりに突然の事に呆然としていたようで、
その言葉にハッとして顔を上げると、
イオリくんは私を抱いたまま後退りし、
アカズサさんは私とイオリくんの前に立ちはだかっている。
ーー!!!!????ど、どうしたんですか2人共!?ーー
<・・・ふむ、その子達は少々文化が違うのですね、
これは大変失礼を致しました。
さあ、ここで話をしていては風邪を引きます、
中へご案内致しましょう。>
男性はそう言うと、
私達にお辞儀をすると、ゆっくりと家の中に入っていってしまった。
「・・・・・・」
「・・・・・・・。」
2人はただただ固まっている。
ーー・・・・・あの、2人共、大丈夫ですか?ーー
私が心配になって声をかけると、
2人同時に私を見る。
「シオン!!!
大丈夫か!?
急にシオンに接吻をしようとするなんて、危険かもしれない。
やはり家に入るのはやめた方がいいか・・・」
「・・・・・・・お前、自分が何をされそうになったかわかってんの?」
2人ともが同時に話始めるので、
私はどっちを向いていればいいのかが分からず、
視線を行ったり来たりするはめになった。
ーーちょ・・・・ちょっと待って下さい!!ーー
「「・・・??」?」
ーー・・・多分、今のは挨拶の類いですよ。
見た感じ、ーアチラ側ーの、私の国でも無さそうでしたし。
外国の方なんじゃないかと思います
さすがに突然だったので驚きましたけど、
確か、外国にはそんな挨拶があったと思います。ーー
私が、2人に説明をすると、
しばらく怪訝そうな顔をしていたけど、
何とか納得してくれたようだった。
「・・・・・ー外国ーと言うのは、
随分と失礼なんだな、まあ、そう言う文化なら、
仕方ない・・・・とはならないがな。」
「・・・とにかく、アイツが<時の番人>の可能性だってある。
まずは話を聞いてみよう、
そのあとで、※どうにでもすればいいしね※。」
・・・・・イオリくんが何か恐ろしい事を言っていたような気がしたけれど、
私達は、アカズサさんはともかく、
本当に凍えそうだったので、
とりあえず家に入らせてもらう事になった。
私は、イオリくんに言って玄関で降ろしてもらうと、
アカズサさんの次に中に入る。
すると、フワッと温かい空気が体を包んで、
とても心地が良くなる。
家の中は、外のイメージと全く違った。
外観から、床は木製だと思っていたらタイル張りの石だ。
でも、足は冷たくないから不思議だ。
玄関で立っていると男性が声をかけてきた。
<ああ、靴を履いたままで結構ですよ、
上着をお預かり致します。>
男性はイオリくんに手を差し出している。
「・・・僕は寒いし、このままでいい。」
<おや、そうですか?
ではレディ、その濡れた上着を着たままでは風邪を引きます、
どうぞ、コチラに掛けますので。>
私がおずおずとアカズサさんの上着を渡すと、
男性は上着を丁寧に受けとると、
玄関の端にあるハンガーポールに掛けてくれた。
ーー・・・あ、あの・・・・ありがとうございます。ーー
<いえいえ、では奥にどうぞ、
スープも用意していますし、
今朝焼いたばかりのパンもありますよ。>
ギュルルルルルゥーーー
「・・・・・。」
<・・・・・>
ーー・・・・・・・・!!!!!!!!!!ーーーー
・・・・・イオリくんがコチラを睨んでいるぅ!!!!!!
な、
なんで、
なんでまた空気を読まずに鳴るんだ私のお腹!!!!?????
私は恥ずかしすぎて死にそうな顔をしながら、
チラリと男性を見ると、
急に男性は両手をポンッと叩いたかと思うと
<これはいけませんね、
レディの前でお聞き苦しい音を立ててしまい失礼致しました。
先程まで木の実を取りに行っておりまして、
ランチをまだ頂いていませんでした。
やれやれ、私としたことが。>
男性は、自分のお腹が鳴ったと言っている。
・・・
・・・・え、もしかして
・・・・私の事を庇ってくれたのかな。・・・・
男性はさてさてと、
暖炉に掛けてあるお鍋の中から美味しそうなスープを、
真っ白な平たいお皿に注いでいく。
・・・・・
「おい。」
ーー・・・・!!!!!ひ、はい・・?ーー
急にイオリくんが話しかけて来たので、
私は一瞬変な声を出してしまった。
「・・・・さっきの腹鳴りは、
お前じゃなかったのか。
・・・悪かったな、てっきりお前かと思った。」
・・・・
・・・・・いいえ、
・・あれは間違いなく私ですイオリくん。
私は、ダイニングテーブルに次々と並べられる料理を
また鳴ってしまいそうなお腹を押さえながら見つめた。




