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ユメモノガタリ~2~  作者: 久川 りつき
2/51

ーシオンとケケー



ケケちゃんは、



私の目の前に一枚のワンピースを取り出した。



ーー・・・綺麗。



もしかして、私の為に作ってくれたの?・・ーー



私が自分を指差してケケちゃんを見ると、


ケケちゃんはニコリと笑って頷いてくれた。




** シオン様の為に、お作りしました。



採寸は、以前取っておりましたので。 **





ーー・・・!!え!?



・・・もしかして、この服を作ってくれた、あの時?



で、でも、ケケちゃんは、



確か、あの時メモとか、何にもしてなかったと思うのに・・



お、覚えてたって事?・・・すごい記憶力・・!!ーー



私が驚いていると、



内容を察したのか、ケケちゃんはコロコロと笑っている。



その様子が、年相応の少女のそれで、とても愛らしい。




** シオン様、私は今、本当に幸せなのです、



・・・長らく、このフロアには男子しかおりませんでしたので、




シオン様のような可愛らしい奥方様がいらして下さって、



いっそ、日常に光が射し込んだようでございます!! **



ケケちゃんは、両手を掲げて大袈裟に話をしている。




・・・何だか、恥ずかしい・・・でも、





・・・こそばゆい位





・・・嬉しかった。




ーーフフッ



私も、ケケちゃんが居てくれて、




良かった。ーー





私が微笑むと、ケケちゃんはそのワンピースを


丁寧に手にとると、私を部屋の端に連れていく。





何をするのかと見ていると、


ケケちゃんは(おもむろ)に壁に手を差し入れた。





ーー・・・!!??ーーーー




** 私達一族は、


壁の中で暮らし、また行き来します、



なので、



主人が必要になるであろう物をその都度判断し、



このように、常に壁の向こうに様々な用意をしております。**




ケケちゃんは驚く私に、そう言うと、




壁の中から、何やら少し大きめな板を取り出した。





ーー・・・・??何だろう?ーーー





** ・・・これは、パーテーションと申します。



お召し変えの際に、目隠しの役割をいたします。



それではシオン様、こちらへ・・**




ケケちゃんは、





それは、見事な手際の良さで着替えをしてくれた。




最初、手取り足取りで着替えをしてくれると言い出した


ケケちゃんに、私は恥ずかしいから自分で着替えたいと、


身ぶり手振りで申し出たのだけど、



それは、



泣きそうな顔で見つめてきたケケちゃんの視線により



あっけなく却下されてしまった。




そうして、しばらく、絵画の絵のようにジッとしていると、




仕立てを終え、満足そうなケケちゃんが、



これまた壁の中から取り出した全身鏡を私の目の前に置いた。





ーー・・・・!!!!ーーーーー





私は、その服を見つめた。




白を基調としたそのワンピースには、



所々に桜の花柄が散りばめられており、



襟の部分には、綺麗なピンク色の石が花の形に付いている。



そして、ワンピースの裾と、


スカート部分にはフリルが付いていて、



そのレースのフリルにも、細かく桜の模様が縫われている。



靴下も、ワンピースに合わせた淡いピンク。



首には、シルバーのチョーカーが付けられていて、


そのチョーカーの真ん中には、


透明な大きめの石が付いている。




私は、思わず鏡をジッと見つめる。




ーー・・・・・綺麗なワンピース・・・ーー





ケケちゃんは、さらに用意していたのであろう、



丸いテーブルの上に、


ヘアセットののうな物を取り出して、


今度は私の髪を結い始める。




ーー・・・・ケケちゃん、





・・・・ありがとう!!!



とても綺麗なワンピース!!すごく嬉しいよ!!ーー




私は、鏡越しにケケちゃんに笑いかけお礼をのべると、




ケケちゃんは、嬉しそうに顔を綻ばせた。




** 気に入って頂けて、私は幸せ者です。



その模様の花は、ーコチラ側ーでは東の地で咲いています。




ーアチラ側ーでは、割りとポピュラーな花なのだと、



以前イオリ様よりお教え頂いておりまして、



きっと、シオン様にお似合いだと思った私は、



花の図鑑を調べ、



このワンピースを作ったのでございます。**




ケケちゃんは、そんなに嬉しいのか、


とても楽しそうに話している。




・・・そうか、




そんな話ができる相手が、




今まで居なかったのだと、さっき言っていたのだっけ。




私は、それにしても、とケケちゃんを見た。




ケケちゃんは、



容姿端麗、


頭脳明晰、



才色兼備と、



全てが整った少女のように見える。



こんな人(人ではないけれど)が居るものなんだなぁと、


私は、



ひとり、ケケちゃんを尊敬の眼差しで見つめていた。




当のケケちゃんは、



楽しそうに、


舞うような手つきで私の髪を結っている。



** ・・・・・ああ、




私は何て幸福者なのでしょう!!



こんな可愛いらしい主人にお仕えできて、



これから、私が、


長年夢見て書き留めていた、ありとあらゆる服を



着て頂ける機会があるのかもしれないなんて・・!!!



ああ、また今日も裁縫に励まなくては・・!!**







・・・・・・ん・・・・・???






な、何か、ケケちゃんが、






凄く大きな声で一人言を叫んでいるような・・・・




・・・・・




・・・・ま、まあ、せっかく楽しそうにしているのだし、





・・・今のは聞かなかった事にしてあげよう。





多分、気持ちが(たかぶ)ると、口から出ちゃうのだろう。





私は、ケケちゃんの意外な一面を見つけて、





少し嬉しかった。









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