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ユメモノガタリ~2~  作者: 久川 りつき
1/51

ーカンヌイとハリネズミー





**・・・・ーーーク・・・・**





**・・・・・ハヤク・・・・・**






**・・・カエッテオイデ・・**






**・・・ワレノマナ・・・**





**・・・コンドコソ・・・**






**・・・カナラズ・・・**






**・・オマエヲ・・・**






ーー・・・・・!!!!!!!!ーー





ガバッ





私は、




最近聞こえてくる事の無かった



不気味な声が耳元から聞こえてきて、



驚いて飛び起きた。






ハァッ







ハァッ





ーー・・・・・・・ッ。ーー






・・・何なのだろう、



あの声。





以前よりも





ハッキリと聞き取れるような気がして、





背筋が寒くなる。






「・・・んぅ~・・・・」






ーー・・・・・・・??ーーーー






私が飛び起きたせいだろうか、




枕元から、




誰かの呻く声がしたので、


私は枕元を確認した。





なんと、そこには






何とも可愛らしい、






小さなハリネズミが眠っているではないか。








ーー・・・???



どこから迷い混んだのだろう?ーー





私は、不思議に思いながら、


その小さなハリネズミを見る。



・・・・




そのハリネズミの首には




カンヌイさんに(かせ)として渡した





あのチョーカーが付いている。







ーー・・・・ま、





まさか、カンヌイ・・・さん?ーー





私は、いつかの光景が重なっていた。




そう、




イオリくんの猫の姿に、




私は知らず知らず、


じゃれてしまって、


痛い目を見たのだ。





・・・何故カンヌイさんが、



ハリネズミの姿なのかは



分からないが、




せっかく眠っているのなら、



そっとしておこう。




私は、ベッドからゆっくりと起き上がる。




少し立ち眩みがするけど、



昨日よりは大分体も軽くなった。




ここは、



アカズサさんの部屋の(はず)なのに、



持ち主の姿はない。




・・・私がベッドで寝てしまったから、




他の部屋で休んでいるのだろうか?




私は、考えても仕方がないので、




とりあえず部屋を出ようと、



ドアノブに手をかけた。




すると




**・・・・・シオン様。・・**




ーー・・・!!ーーー



驚いて振り向くと、



そこには、



うつむき、


しょんぼりとした表情の


ケケちゃんがいた。





ーー!?


ケ、ケケちゃん!?



ああ良かった!!



アカズサさんが化身の姿で暴れて、



私の部屋を壊してしまってから


会えなかったから、



どうしていたのか心配で・・・!!ーー




・・・と、





私は少し興奮気味に話していたが、



ケケちゃんは表情を変えずに


うつ向いたままだ。




ーー・・・???





・・・・あ!!




・・・そ、そうか、




ケケちゃんには、私の声が聞こえないんだっけ。ーー




回りの人(?)達とは、


あまりに普通に話していたので、


私は、声が奪われている事を




すっかり忘れていた。




ーー・・・ど、どうしよう。



彼女とは




どうやって、




コミュニケーションを取ったらいいのだろう?・・ーー




私が、途方に暮れていると、



ケケちゃんは、



そのまま話し始めた。




**・・・シオン様、



お目覚めになられて、


本当に良かったです。



・・・アカズサ様が、



それは毎日、



心配されておいででした。



本当に・・・・



嬉しい事でございます。**





ーー・・・・ありがとう、



ケケちゃん。ーー




私は、聞こえていないのに、




それでも、




ケケちゃんが、毎日、



必死に看病をしてくれていた事を


アカズサさんから聞いていたので、



お礼を言わずにはいられなかった。




**・・・申し訳ありません。**





ーー・・・??・・・ーー





**・・・あの時、




私は、アカズサ様が、




シオン様とイオリ様に、





嘘をついていらっしゃる事を、






知っておりました。**





ーー・・・!!??ーーー






恐らく、あの時とは、



昨日アカズサさんが自分から説明してくれた、



私に※名を与えた日※の事だ。





・・・ケケちゃんは知っていたのか。




**・・・申し訳ありませんでした。





あの時、どうにかしてお二人に、




私が真実をお教えしていたら、





・・・イオリ様も、






・・・シオン様も、






あのような怪我を負ったりは




しなかったと思っております・・・**




ケケちゃんは、



泣いていた。





・・・あの時、




アカズサさんは、



私達を欺こうと動いていた。




それなら、





ケケちゃんが下手に動けば、




もしかしたら、




ケケちゃんが殺されていたかも知れないのに。




それなのに、





私達を守れなかった事で、





ずっと、





今まで







苦しんでいたのだろうか・・・






**・・・・私は、




シオン様をお守りしたかった・・・!!



なのに、





魔力も少なく、




知恵も浅はかな私では・・・






・・・何も





・・・何も出来ませんでした







知っていたのに・・・





ただ、知っていただけなのです。







どうか・・・






どうか私を罰して下さいシオン様・・・・




どうか・・・**





ーー・・・ケケちゃんやめて・・ーー




・・・そんな事言わないで







そんなの、








私の方がずっと、












何も出来ない、ただの役立たずなのに。







私は、ケケちゃんの言葉に耐えられなくなって、




ギュッとケケちゃんを抱き締めた。







**・・・・・!?・・・・・**





ーー聞こえてないと思うけど、




私はケケちゃんにとても感謝しているよ?



ケケちゃんは、




あの時、私の為にこんな可愛いワンピースを、



作ってくれた。




綺麗なベッドや、




埃ひとつない部屋を用意してくれたのも、




ケケちゃんなんだよね?




ありがとう、





(声)がでたら、




どんなにお礼を言いたいかわからないよ!!



だから、




罰して欲しいなんて言わないで!!ーー



私は、




聞こえていないのに、




ケケちゃんに話しかけ続けた。




ケケちゃんは、



肩をふるふると震わせ、


私の肩越しに、


すすり泣いているようだった。




それでも、



(声)は聞こえていなくても、




少しでも私の思いが届いたのか、




ケケちゃんは、私の背中に、




遠慮がちに手を伸ばし、




そっと抱き締め返してくれた。






ケケちゃんは、しばらく泣いていた。






そして、私から離れると、



少し赤くなった瞳のまま、



私の顔を見る。





**・・・アカズサ様から、


シオン様は(声)を奪われている事は、


聞いております。



でも、何と言って下さっているのかは、




分かりました。





・・・私は、幸せ者でございます。




主人が、シオン様で良かったと、




改めて実感致しました。**




ーー・・・・??主人?・・・ーー




私が、ケケちゃんの言葉に不思議そうにしていると、



ケケちゃんは、フフッと笑うと




**・・・申し遅れました。




フロアの主人が妻に迎えた奥方様を、



女人の召し使いが、



(しもべ)となり、お付きする。




我々、



一族のしきたりなのでございます。**




成る程、



それで、



私が主人になるわけか。



ーー・・でも、





どうせなら






(お友達)が良かったな・・・ーー




私がそう言っても、



ケケちゃんには聞こえない。




何と歯がゆい事。



と、私が思っていると、



ケケちゃんは、私の服をジッと見つめているのに気がついた。






**・・・シオン様、



もしよろしければ、



シオン様のために新しい服をご用意してございますので、



よろしければ、


お召しになりませんか?**



そう言うとケケちゃんは、



用意していたのだろう、



後ろに置いていたトランクから、


一枚の、




綺麗なワンピースを取り出した。



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