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遊斎志異  作者: 山口遊子
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宅配便

宅配便




 ピンポーン。


 マンションのエントランスからのインターフォンが鳴った。


「宅配便です」


 帽子を被ったお兄さんがインターフォン付きのビデオに映る


「はい」


 エントランスからマンションの中に入る内ドアのロックを開ける。


 最初の荷物が送られてから今日で6日目だ。


 5日前、注文した覚えも何もない宅配便が送られてきた。箱の上に張り付けられた伝票に書かれた送り手は聞いたこともない会社で、調べても何の会社だか連絡先もわからない。受け取り手の名前欄には俺の名前がしっかり書いてある。


 恐る恐る運ばれてきた箱を開けると箱の中には、ビニールの緩衝材に包まれたマネキンの左足が入っていた。おそらく女性型のマネキンと思えた。


 4日前は、マネキンの右足。そして3日前は、左手。一昨日は右手。昨日は胴体で明らかに女性型のマネキンだった。


 おそらく今日は頭の部分が届けられるのだろう。誰のいたずらかわからないがずいぶんお金のかかったいたずらだ。


 玄関口で受け取った宅配便の箱を開けてみると、やはりマネキンの頭の部分が入っており、組み立て方が書かれた紙が1枚入っていた。頭部には髪の毛は付いていなかった。顔の造作は鼻筋だけで、あとはのっぺらぼう。


 紙を見ながら組み立て終わったマネキンを見ると、デパートやアパレルなどでありがちな衣装用のマネキンに見える。マネキンを床に転がしたままでは邪魔なので、ダイニングターブルの椅子に座らせておいた。物は言わないが、人一人が増えただけで、灰色だった部屋の色に少しだけだが温かみが加わった気がした。


 次の日。


 ピンポーン。


 マンションのエントランスから、今日もインターフォンが鳴った。


「宅配便です」


 帽子を被ったいつものお兄さんがインターフォン付きのビデオに映る。


 受け取った宅配便の箱を開けてみると、1週間前と同じ、ビニールの緩衝材に包まれたマネキンの左足が入っていた。ただ違うのは、マネキンの足が男性型だったことだ。


 それから5日、毎日マネキンの部品が届けられ、男性型のマネキンが1体出来上がった。そのマネキンは最初の女性型マネキンの隣に座らせてやった。



 ピンポーン。


「宅配便です」……。


 今度は、子供型のマネキンが出来上がった。


 出来上がった子ども型のマネキンを男女のマネキンの向かいに座らせてやると、マネキンの家族が出来たようだ。


 その3体の座るダイニングテーブルの回りだけ暖かそうに見える。


 この家の中で不要なのは自分の方なんだといやでも気付いてしまった。


 ピンポーン。


「宅配便です」……



2020年1月6日

種も尽きてきましたので、こちらの更新は不定期になります。

『アギラカナ外伝、法蔵院麗華』URL:https://ncode.syosetu.com/n4131fy/ よろしくお願いします。

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