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遊斎志異  作者: 山口遊子
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悪魔の賭け

悪魔の賭け




「ごめんください。悪魔でございます」


『何だ、またお前か、今度は何の用だ』


「いえね、この前、神さまとの賭けに勝って手に入れたはずの人間の魂を神さまに取られちゃったじゃないですか」


『あの魂は天に昇るべくして昇ったのだ。わしが手を出したわけではない』


「どうでしょうかねー」。そこで悪魔は自分が神さまに睨まれていることに気付く。


「そうでしょう、そうでしょうとも」


 ここで悪魔は下卑た笑いを口元に浮かべて、揉み手をしながら話を続ける。


「あのことについては、そういうことにしておきましょう。神さまと賭けをしようとしたあっしがばかだっただけですからね」


『それで、お前は何用で天まで昇って来たのだ』


「もう一度神さまと賭けをしたくなったんでさ」


『自分でばかと言っておいてまた賭けをするのか。ばかの上の大ばかだな』


「エッヘッヘ。そうかもしれませんねー。でも、今度の賭けは最後にあっしがきっと勝ちますよ。エッヘッヘ」


『賭けの内容を言って見よ。賭けをするかどうかはそれから考える』


「神さまは全能の神さまなんでしょー。少しぐらいリスクがあった方が面白いと思いますぜ。えっへっへ」


『分かった。賭けは受けよう。賭けの内容を言ってみよ』



「……この男のことは神さまもご存じでしょう」


『知っておる。その男は世のすべての悪をその身にまとったような大悪人だ』


「その大悪人が死んだら、あっしがその魂を地獄に連れて行きます。それが出来ればあっしの勝ち、そしたら、この前頂き損ねた魂をあっしがいただきます。神さまがその大悪人の魂を天国に連れて行くことが出来ればあっしの負け。そしたらあっしは地獄の底でしばらくおとなしくしてますよ。どうです? あっしだけが有利な賭けかもしれませんが、全能の神様なら問題ない賭けでしょう?」


『わかった』



 それから数年。悪魔に唆され更に悪の限りを尽くした大悪人が大往生を遂げた。もちろんその魂は神さまの力で天に昇って行った。


「神さま、やっぱりあっしの負けでした。あっしは地獄で1000年くらいおとなしくしています。えっへっへ」


 悪魔は下卑た笑いを口元に浮かべながら負けを認めました。


『これに懲りてわしと賭けをせぬことだな』




 地獄に戻った悪魔は上機嫌です。


 ――ヒッヒッヒ。これから、1000年、地獄の底からあの男が天国をめちゃめちゃにするのを眺めてやるよ。



ファウストのラストでの理不尽な大どんでん返し。メフィストフェレスもとんだインチキでさぞおこったことでしょう。かくいう私は少年少女版のファウストの最初の辺りとラストしか読んでないんですがね。

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