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遊斎志異  作者: 山口遊子
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後ろの足音

後ろの足音




「ハア、ハア、ハア、……」


 コツ、コツ、コツ、……


 夏美は暗い夜道を走っている。


 夏美が後ろを振り返りながら走っている道は、遊歩道になっている小道で車は入ってこられない。


 小道の両脇には季節の草花が植えられ、ツツジやアジサイなどの背の低い木も植えられており昼間であれば、道行く人の目を楽しませてくれる。


 今は真夜中で、夜道を照らす数少ない街灯の弱々しい光だけが道を照らしている。少し先の街灯の蛍光灯が暗くなってはまたジジジと音を立てて点灯するのを繰り返している。


 夏美は何度も振り返って後ろを見るのだが誰もいない。前を向いて進もうとすると後ろから足音が聞こえる。


 コツ、コツ、コツ、……


 50メートル先には人通りも多い大きな自動車道がある。左の足のサンダルの(かかと)が取れてしまったので今は左足はつま先立ちで走っている。


「ハア、ハア、ハア、……」


 夏美はなんとか遊歩道から街灯が明るく照らす広い道に出られた。後ろを向くとやはり誰もいない。


「フー」


――怖かったー。何だったの、あの足音。遠回りでもこっちの道を通ればよかった。


 その広い道は、街灯も多く夜道でも明るかったのだが、今はなぜか誰も歩いていないし普段は行き交う車も今日は走っていない。なんだか薄気味悪くなった夏美は両足のサンダルを脱いで片手に持ち裸足で走り始めた。


「ハア、ハア、ハア……」


 夏美は夢中でその道を走るのだがいくら走っても自宅にたどり着けない。それどころか、またあの足音が聞こえてきた。


 コツ、コツ、コツ、……



「ハア、ハア、ハア、……」


 夏美は後ろからの足音が聞こえなくなったと思い、下を向いて両手を膝に当てて苦しい息をしばらく整えた。


 ようやく息も整い前を向くと夏美の立っているのはしばらく前に走り抜けたはずの遊歩道の上だった。


 コツ、コツ、コツ、……


 夏美のすぐ後ろからあの足音が聞こえてきた。


「……」


 後ろを振り向きそこに立っていたのは、……




 翌朝、近所の老人が遊歩道を子犬を連れて散歩していると、普段吠えない子犬がやたらと吠える。


 不審に思った老人、子犬の吠える先を見てみると、赤い花の咲いたツツジの木の下に転がった1足の女物のサンダルを見つけたのだが片方のサンダルには(かかと)がなかった。



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