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記録  作者: 優希
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交渉

数分もしないうちに玄関チャイムが鳴った。私は先生であることを確認し、どうぞ。と言いながら開錠のジェスチャーをした…が開錠されなかった。どうにも動揺を隠せない。ゆっくりと息を吐ききって、開錠のジェスチャーをやり直し、開錠に失敗しました。しなおしましたのでどうぞ。といった。玄関で先生を出迎え、靴を脱ぎ終わったところで、スリッパを差し出してから、こちら私のクラスの担任教諭の塩崎さん。そして、こちらは私の…と言いかけたところで月夜野さんが、叔母の月夜野藤花と申します。遺伝子工学者をしています。と、よどみなく言いながら両手を差し出し握手をした。その後、どうぞ、とリビングへ誘導する。随分と月夜野さん手慣れているなと思いながら私はキッチンへお茶を取りに向かった。月夜野さんに話を聞かれながら準備していたお茶が良い具合になっていた。急いでティーポットからストレーナーを取り出し、リビングへ向かった。ドアをノックし入ると月夜野さんと先生がへ?という顔でこちらを見ていた。月夜野さんが、プレート持ちながらどうやってドア開けたの?と聞いてきた。私は、こうやって。と言いながらプレートを持ったまま手首を90度返して見せた。先生が少しひきつったような笑顔で、き…器用ね…と言ってきた。私は愛想笑いだけ作って、こちら、2052年ディンブラファーストフラッシュとマンゴーキウイフルーツの折生地タルトです。と言ってタルトを配り、紅茶を注いでから席に着いた。このままうやむやにお茶会をして適当に帰ってもらえれば楽なのにという淡い期待はもちろん果たされるはずもなかった。先生が、ところで、春野さん。どうして叔母さんなの。お父さんとお母さんはどうしたの。と聞いてきた。私は、えっと…とつまりかけたところで月夜野さんが、仕事の都合です。父親と母親はそれぞれイングランドとブラジルにいます。と助け船を出してくれた。続けて、見ての通り優希さんは家事の面では自立している。このタルトも…と私に視線を向けてきた。私はそれにそっとうなずいた。定期的に私も様子を見に来ていますし、この年頃。大人が干渉しない方が居心地も良い。先生も心当たりがあるでしょう?と続ける。先生は、ええ…まぁ…と心当たりがあるような反応をした後、とはいっても…と続けたところへ月夜野さんが、ここはお父さんのマンションですし…と言いかけたところで時計を見て、お父さんに通話してみますか?今の時間ならむこうは朝方なのでつながると思いますよ。と続けた。驚いて月夜野さんの方を見てしまった。先生は、いえそこまでは…と言って引き下がったから良かったものの電話すると言ったらどうするつもりだったのかと顔を引きつらせながら色々考えを巡らせている私に、あ…お父さん細かいから苦手だったね。とフォローを入れてきた。その衝撃が大きすぎてそのあとのことはよく覚えていない…先生が、今日のところは帰ります。といった後玄関先で月夜野さん、どこまで用意していたのですか?と質問してみた。どことは…?ああ…全部ブラフよ。と言いながら手をひらひらとさせた。私がそんな無計画な。と言おうとしたところ、これでまた来るようなら適当に仲間内から父親と母親を作るわよ。と続けた。作るってどういうこと?と思っていると、最後の通話の時あなた辛そうだったけれど、今日は思ったより元気そうね。そう言ってきた。私は少し考えて、ええ…良い友達に恵まれたもので。そう答えた後、心配してくださってありがとうございます。けれど貴方とは基本はお金だけの関係ですから。ただ、個人的に遊びに来たいとおっしゃるのでしたら歓迎します。と付け加えた。すると月夜野さんは、そうね。あまり深入りしすぎないことにするわ。歪んでしまうからね。そういってから靴を履き、また…合わない方が良いね。そう言って帰ってしまった。彼女とは私はどうにも合わなさそうだ…私とは違うタイプの人間。緊急時の連絡先として指定する相手なのだから彼にとっては大切な相手ではあったのだろう…どういう関係かまではわからないけれど。それとも彼女にとって彼もしくは私が特別な存在なのだろうかそんな事を考えながらティーセットを片付けた。

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