あなたは私の…
ふと目が覚めた。薫と春香は帰ったようだ…あれから何時間立ったのか…時間を確認しようと視線を動かしたところ保温カップに入ったチャイが目に入った。きっと春香が置いたものだろう…薫はこんなことはしない。ぼーっとしながらチャイに口をつけてみた。少々砂糖の入れすぎだ…後…チャイならできれば蜂蜜か水あめの少しトロっとした甘みの方が好み…ちょっとばかり贅沢が過ぎるだろうか。弱っている時にはこういう心配りだけでありがたい。チャイを8割がた飲み干したあたりでロビーからの呼び出しチャイムが鳴った。保温カップをゆっくり置いて呼び出しに応じた。そこには私が初めて見る私服の春香がいた。彼女は私が応答した事に気づき話し始めようとしたが、その前に私は開錠のジェスチャーをし、自動的に通話は切れた。画面越しの会話の方が多くなって30年もするというのに、私は未だに画面越しの会話が苦手なまま…音に立体感がなく声だけをうまく拾い上げる事ができない。残りのチャイを飲み干しカップを洗い始めた頃、玄関の呼び出しチャイムが鳴った。呼び出しに応じ春香である事だけ確認して開錠をした。その後40秒ほどしてそーっと歩く足音とともに春香が現れた。優希?体調はどう?そう言って春香は鞄を床に置いた。私は、おかげさまで、ずいぶんよくなったよ。まだちょっとぼーっとするけど。と答えた。春香は、そう…明日は休んだ方がいいんじゃない?と言ってきた。私は、テストなんてつまらないものを別室で後から受けさせられる位なら明日行くよ。どうせ今日の体調でも点数面では問題ないし…と答えた。春香は、そ…そうなんだ…とひきつった顔で答えた後、あ…それはそうと優希。あのチャイムへの出方どうなの?宅配さんとかびっくりしない?と聞いてきた。私は、ここ宅配用貨物エレベーター有るから。といったところ春香に、やっぱりここ高いんだ…と言われた。私は、よく知らない。親のだし…と答えながら宅配用貨物エレベーターについて調べてみると、そのものが高いうえに場所をとるため高級マンションにしか入っていないらしいという事がわかった。これ以上突っ込まれても彼がここを手に入れた経緯などわかるはずもなく…いや彼のプライバシーに踏み込目がわかるのだけど…それはそれで後ろめたいので話を変える事にした。ところで、春香。何しに来たの。と質問してみた。春香は、そうそう忘れていた。帰った後やっぱり心配になって夕食つくりに来たの。と答えた。私は、あなたね…あなたは私の彼氏でも彼女でもないのだからそんなことしなくても良いのよ?と一応の断りを入れた。春香は、もう買ってきちゃったから。と言いながら何かを作り始めた。私はキッチンと対面するダイニングテーブルに座り、春香は…2~3年すればもてるようになるだろうな…そんなことを考えていた。人の気持ちをよく理解できるし、困っている人の為に尽くせる。礼の代わりに春香が作っている料理には素直な感想を言おう…そう思った。今は厳しくてもその助言は未来には役に立つ…だろうから。15分ほどして卵粥と豆腐のみぞれ煮を作ってくれた。いただきます。そういって食べ始めた。味は食べられる程度の味ではあったけれど、それほどおいしいと言えるものではなかった。春香が、味はどう?と聞いてきた。私は、食べられる味だけど、あまりおいしくないかな。でも今はありがたい。と答えた。春香に、え~ひどい。せっかく作ったのに。と言われたけれど、私は、素直な感想。私相手なら良いけれど、恋人に出すにはちょっとね。今度美味しい出汁の引き方教えるね。と続けた。春香は少し考えて、ありがと。そう言ってくれた。その後10分ほど食事をしながらの雑談が続いた。頂戴いたしました。そう言った後春香に、今日もう遅いけれどどうするの?そう問いかけた。春香は、優希が心配だし泊まるつもり。と言いながら鞄を指さした。なるほど…それで大きな鞄持っていたのね…と思いながら、私の部屋の向い使って。そこ客室にしているから。と案内した。春香は、分かった。優希はお風呂入ってきて。と答えた。春香が先に入ってきて良いよ。といったものの春香の表情を見て、やっぱり入ってくるね。と言い直した。春香は、うん。私はこれ片付けないとだしね~そう言って促してくれた。




