テスト勉強(3日目)
帰りたい…帰りたい。帰りたい!こういう時に、自分は凡人に過ぎないと改めて感じる。私は、天才扱いされる事が少なくない。成績上位者リストの常連で、AI分野で論文がAcceptになった事もある。この年齢であれば天才と言われるに十分な外形的根拠と言える。そして、浅ましい私はもてはやされると調子に乗りがちだ…けれど、実態は全く違う。14歳の私から見れば、65年という無限に近い学習時間があった。さらに、私が持つ記憶の本来の持ち主はAI科学者だ…そして私が書いた論文はその記憶の持ち主の論文に「穴がある。こっちが正しい。」としか書いていない。訂正書面がたまたま論文の形をしていただけで当然できるし、しなければならない事をやったに過ぎない。確かに、彼は優れたAI理学者ではあったが、記憶を共有している私自身がとてもよくわかっている。天才でも秀才でもない。誰かにはっぱをかけられなければやる気になれない怠け者だと。つまるところ、置かれている前提がおかしいのであって、ただの凡人でしかない。故に経験した事が無い問題を解けるはずもなく、ましてや未知の状況に新たな手法で対応するなんて高度な事が出来るはずもない。テスト勉強も3日目。薫と春香は勉強している。一方私は教科書を一通り読み終えてやることが無い…こんな時に話すと受ける話題とか、これをしていると勉強しているように見えるなんて都合の良い答えが彼の記憶にあるはずもない。加えて2日後に迫ってきている家庭訪問という懸案事項が頭の片隅からと言えざるど真ん中にまでよぎっては消えよぎっては消えしている。帰りたい…逃げたい…助けて…そんなことを考えていると春香が大丈夫?顔色悪いけど。と声をかけてきた。私はうん…最近考えないといけない事が多くて…とあいまいに返したところ薫がえ…悩み事?と質問してきた。私はう~ん…話したくないし話しても解決するものではないから…と逃げたところ、友達じゃない。教えてよ。と言われてしまった。春香がすかさず無理に聞くものじゃないよ。本当に大変になったら自分から言ってくるし、でなければ大した事じゃない。くるりとペンを1回転させながら言う。普段は何でも恋愛に絡めて面倒な春香だけれど、こういう時はありがたい。ごめんね…今日はこれで帰って休む…そう言って立ち上がった。後ろから薫が、優希があそこまで弱るってよっぽどだと思うけど…と言うのに春香がそれでも人には言いたくない時もあるのよ。という言葉を聞きながら立ち去った。




