男とネコと少女
学園モノ黒ファンタジーになる予定です。
突然舞い込んだ一通の手紙。
【 国立専門学園にて教員として採用されました】
身に覚えのない内容に、はじめはイタズラかと破って捨てた。
が、次の日目を覚ますと見知らぬ校舎を前に横たわっていた。これは夢かと頬をつねると痛い。どうやら夢ではないらしい。
周りは雑木林。街からだいぶ離れた場所だとわかるほどだ。やみくもに林の中を彷徨うか。
【 なお、これは強制執行の案件であり、貴方に拒否権はありません】
ふと、手紙の一文を思い出した。
俺はこの場に強制連行されたんだと、その時理解した。
ついてない。そう思った。
なぜなら国立専門学園のいろんな話を目にしていたからだ。主にネットで。
そこには様々な憶測が飛び交い、正直ホンモノとウソの見分けがつかない。が、どれもいい話ではない。
『国から手紙が届く→入学らしい』
『入学したら寮生活だから家族と離れ離れになる』
『卒業後は行政機関の職員かな? 安定の公務員じゃん』
『そもそも卒業した誰かを知ってる奴はいるのかよ』
『全員脱落説』
噂通り手紙が届いたが、20を越えた俺には入学ではなく教員としての採用だった。ここの職員は一般人から選出されるのか。が、その基準が全くわからん。
俺、教員免許なんて持ってないし、そもそも大学を中退してからバイトで食いつないでたんだけど。
「やばっ、今日のシフト! ……て、あれ? 」
携帯がない。
携帯がない=バイト先へ連絡できない=無断欠勤でクビ
「のぉおおおお」
まずい、お金がなきゃ生活が出来ない。仕方ない、事情を説明して電話を借りよう。そんで、きっぱり教員採用を辞退しよう。
そう思い校舎の中へ入ったが、早速迷ってしまった。
というもの、校舎内は白で統一され、まるで迷路の用に階段も部屋も見当たらない。
いくらなんでもこの造りはおかしい。
「おーい、誰かいませんか」
こだまする声に返事はない。
ここ本当に国立専門学園の校舎なんだろうか。実は既に廃墟で、何かの実験に使われているとか。で、俺はその被験者なんじゃー。
そんな事を考えていると、足元に1匹のネコがすり寄ってきた。………ネコ?
「なんで、校舎にネコ? 誰かのペットか、首輪がついている」
持ち上げても嫌がらず大人しい。じっと俺の顔を見つめている。不思議なネコだ。
「ここに何の用? 」
ばっと振りかえれば、金髪少女が立っていた。ここの生徒か? 大きなリボンが目につく。
「にゃあーー」
「おわっ」
少女の声に反応して、ネコが暴れ出した。手からスルリと抜け出し、走り去っていく。
「追いかけて」
「え? 」
「ここに用がないなら、あのネコを追いかけて」
意味がわからなかったが、少女の気迫に押されネコを追う。少しぽっちゃり目のネコだったが、思いのほか足は速いようでなかなか追いつかない。
だんだん近づいたと思ったら、隙間のある窓から外へ逃げていった。流石にこのサイズは通れない。
「早く行って」
「おわっ、後ろに立つなよ。びっくりするだろ」
「行って」
「いやいや無理無理。この隙間通れないし、これ以上窓も開かないから」
「行って」
えーー、窓割って行けってか。なんだよこの女、変な奴。
「早くって、もう遅かった」
何がと、ツーンと鼻を刺す匂い。これは嗅いだ事がない匂いだが、何かわかる。鉄の錆びた様な刺激臭。
「うわぁ、ああ」
引き裂かれた何か。その何かを考えるよりも前に、意識が途切れた。