47.戦闘民族
白を基調としたドレスアーマーに黄金の手甲と足装備、空色のマントを羽織ったオレンジに近い金髪ポニーテルの16歳ぐらいの少女は、善次郎宰相の作り出した和やかな雰囲気をその一言で台無しにしてくれた。
ローランド王国第2王女、アリスティール=ローランドと言ったか、折角の美少女が台無しだな。
「さあ、漂流者、尋常に勝負しなさい。ローランド流剣術の神髄を見せて差しあげます。」
戦闘狂、戦闘民族とも呼ばれる性質。
彼女の言動の端々からは、そういった人種の匂いが感じられる。
ゲームに求めるものは人それぞれ千差万別、俺のように建築が好きで大型の建造物をゲーム内でいくつも作るプレーヤーもいれば、ひたすらアイテムの収集に勤しむプレーヤーもいる。
人との触れ合いを求めてコミュニケーションを取りたがるプレーヤーもいる。
彼女のように、ただひたすらモンスターや他のプレーヤーと戦い続けるの好きなプレーヤーもいる。
ゲームのプレイスタイルは自由でいいと俺は思っている。
でも、自分のプレイスタイルを他人に強要するヤツ、てめーはダメだ。
戦闘民族なのはいい。頼むから俺を巻き込むな。
「いえ、結構です。戦闘とか、そういうのは間に合ってますんで。」
全力で断っていく。こっちは自称とはいえ、クラフターがメインのまったりプレイが身上だ。
何が悲しくて、ゴリゴリのレイド攻略勢の人達と戦わなければならないのだ。
あちらが満足するだけで、こちらにはまったくメリットがない。
「これでもアリスティール殿下は、【皆伝持ち】だからな。殿下に勝ったら【皆伝持ち】とみなされて、この国では男爵位と同列の身分が保証されるぞ。」
宰相が、姫殿下に勝った時のメリットを教えてくれた。
「武を貴ぶ、我がローランド王国では、爵位とは別に剣聖である私の免許皆伝は、相当な身の証となる。現状の【皆伝持ち】はアリスティール殿下のみであり、実質機能はしていないが、王国の法にも、明記されていることだ。」
武力があれば、立場が確立できる。さすがレイド勢の建国した国、脳筋だぜ。
しかし、アリスティール殿下に勝つことで、辺境伯の後ろ盾とは別に、王国のれっきとした立場を確保できるのなら、こちらにもメリットがあるな。
逆に宰相が受けた方が良いように誘導している方が気になる。
善意だけで、言っているようにはとても思えない。
NPCのプレーヤーに対する好意の話もあるが、一国の宰相がこうもぺらぺらと好条件ばかりを話すのには、何かしらの意図があるように感じる。
まだ自分の戦闘欲のために俺に挑もうとしている、アリスティールの方が判りやすい。
「アツシ、気を付けてあの宰相は絶対何か企んでる。」
ティアからも注意喚起の声がかかる。
「皆、私の企てを警戒しているようだから先に行っておくが、アリスティール殿下がアツシ殿に敗れた場合は、名目上、かたき討ちとして、師である私がアツシ殿と戦う事となる。アツシ殿が殿下の挑戦を断った場合は、一国の姫の挑戦を断ったとして、この場にいるローランド王国の最上位者として、抗議がてら私がアツシ殿に挑むことになる。どちらにしても私はアツシ殿と戦えるので問題ないので、つまらん謀はせんよ。」
わくわくした顔で本音を言い放ちやがった。
この宰相も根っからの戦闘民族だ。
俺と戦うための口実は十分にあるから、あの余裕だったようだ。
師としてのかたき討ちと、一国の宰相としての抗議とでは、後々に響く影響と、周りからの見方が大きく変わりそうだ。
仕方がない、この決闘が避けられないものならば、傷は浅い方がいい。
覚悟を決めて返答しようとした考えていると、ティアが前に進み出て返答を始めた。
「一国の王女に勝負を挑まれて、簡単にお断り出来ないという事ですね。出来れば厄介ごとは避けたいのですが、王女がどうしてもアツシと戦うと言うのであれば、不敬等後々面倒になる事は無しにしていただきたい。一剣士として戦いを望まれるのでしたら、わが主がお相手致しましょう。武器の特性上、手加減はできませんが。」
言葉の端々に保険を掛けた感じはあるが、おおむね俺が想定した回答と合致している。
俺ではうまく対応できなかったかもしてない部分を的確にフォローしてくれた。
さすが俺の副官だ。
「今、こちらが提示した内容で宜しければ、お相手致しましょう。私は戦闘職のメインがガンナーなので、武器の特性上手加減は出来ません。剣や槍のように寸止め出来ないので、うっかり事故で片腕が吹き飛ぶ可能性もありますが…大丈夫ですか?」
もう一段保険をかける意味で踏み込んでみる。後で怪我させたとか言われても面倒なので、大げさに言ってみる。
「命が失わなければ、こちらで何とかできるので、その辺はあまり気にしなくても大丈夫ですよ。師匠との模擬戦でもたまにで片腕飛びますからね。強者との戦闘こそが、最強への道しるべ。さあ、思う存分戦いましょう。」
笑顔で即答しやがった。
簡単に腕1本とか言ってるし、どんな教育されているんだよ、剣聖とその弟子。
「生死を超えた先にこそ、真理はある。殿下より強いのはこの国では私だけなので、手合わせしたことのない相手との対戦に飢えているだよ。私もふくめてな。」
強さを求めすぎると、ヤバいことになるようだ。
この師弟の感覚は我々のそれとは大きく違いようなので、あまり関わらない方がいいかもしれないと、本気で考えてしまう。
相手の防御力にもよるが、さすがにアサルトライフルでは一撃死もありえるので、P90とFive-seveNに換装しておく。
レベル差があるとはいえ、姫騎士の装備のうち小手と脚装備は帝釈天とみて間違いない。ならば各部位に宿ったドレススキルを使用してくることを前提に対処していくのが無難だろう。
正直 雷帝帝釈天というレアな装備をした人間とPVP(プレイヤー対プレーヤー)をした経験などないので、知りうる知識は昔みた掲示板の情報だけだが、小手と脚装備だけでも十分厄介なスキルだ。
レベル的に見て2つが装備限界なので、あえてその組み合わせなのだろう。
こちらの準備が出来たのを確認し、姫騎士も戦闘態勢に入る。
腰を落とし、腰の剣に手をかけて半身を捻り、抜刀術のような構えをとる。
「アリスティール=ローランド、参る。」
レイド勢=戦闘民族というわけではけしてないと思います。
自身の装備を自前で調達し、常に最前線で戦い続ける完璧超人のレイド勢の方が多いと思っています。
どちらかと言うと、戦闘民族(自称)=脳筋を描きたかったのですが、拙い表現になりました。
すみません。




