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異世界サバイバルゲーマーはMODを駆使して生き残る  作者: 神崎由貴
第2章 ローランド王国編
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39.商談

 こちらの提案した内容を吟味しているのだろう、バルガス協会長は深く考え込んでいる。


「確かに非常に魅力的な話だが、辺境伯軍と我が協会にとっては有益な話ですが、アツシ殿にとってのうま味がこの話の中には含まれておりません。単なる善意でこれほどの事を行えるとは思えませんので、そちらをお伺いした上で考えさせていただけませんか?」


 確かに、俺とアルスはクエストボードの件を知っているので、ゲーム内通貨ジェムの有用性と、俺にとっての必要性を理解しているが、このことは出来るだけ少人数だけが知るようにしていきたい。

 出会ってすぐのバルガス協会長の人柄を把握するには、時間がなさすぎる。

 後日人柄を見て話すにしても、今ではない。


 そうなると、今後目に入るであろう、あちらの件が目的であるように見せていくプランBで行こう。


「実は、我々は魔境の森の開発を行うことになっていまして、探索者協会の皆さんの協力を得て、魔物の討伐を進めていきたいと思っています。すでにいくつかの有力な資源は発見しておりますので、後は辺境伯家との最終交渉を後日行うだけとなっています。ちなみにその資源からはこんなものが作れます。」


 そう言ってバルガス協会長の目の前に、鋼鉄製のロングソードを置く。


 流石、元レベルの探索者だ。鋼鉄製のロングソードを見た瞬間に表情が変わった。


「手にとっても?」


 元戦士だけあり、良武器が気になるらしい。


「ええ、どうぞ。なんでしたら試しに振ってみても構いませんよ。」


 バルガス協会長は、ロングソードを手に取ると立ち上がり、まじまじと刃を見つめて、軽く振った。


「これはただの鋼鉄ではありませんね。この刃の模様はいったい?柄から刃先へのバランスやしなり、相当な名剣です。」


 さすが元戦士、一発でこの剣の質に気が付いた。


 アイテムレベル30【高品質 ダマスカス鋼ロングソード】

 ショップの店売りでも、オート製作によるノーマル品でもなく、ドワーフの鍛冶職人でもある戦士団のカインが鍛冶師のスキルと、ガレージ内の工房で製作した逸品だ。

 ゲーム的な表現で言えば、攻撃力、耐久値、能力値上昇値すべてが、店売ショップりの1.2倍の高品質アイテムだ。


【高品質アイテム】

 店売ショップりやオート作成で出来る標準ノンクオリティーアイテムに対して、対応した職種ジョブのスキル保有者が、複数のスキルを使用し素材の耐久値以内で、ギリギリまで品質を向上させることで製作させるこのアイテムは、ゲーム内でも高額で取引されている。


「さすがバルガス会長ですね。この剣を扱える技量と、この剣の質にお気づきとは。流石にこの質のものは量産いたしませんが、この鋼鉄製の剣や槍、鎧の素材が魔境には眠っています。それを採掘、加工することでこちらは利益をえることが出来ます。」


 鉄鉱石の採掘と、その加工を魔境の森で行い辺境伯領に卸す。このプランで俺達は十分な利益が得られている様に見えるだろう。


 ガレージ内の工房には電気窯があり、ごく短時間で鋼鉄やチタン等も加工できるが、この世界の鋳鉄による鋳物の鉄製品よりも少し優れた鋼鉄でも十分採算は採れる。


 人目をひくであろう製鉄の過程が見えないのであれば、変な邪推も生みかねないので、あえて採掘場と反射炉を作り時間を掛けて製鉄を行うことでガレージの存在をカモフラージュする。


 ここにいないメンバーは、その為に現地で作業中だ。


「アツシ殿達が作成した武器や防具は、辺境伯軍に卸してもらうが、一部はこのランスの街で販売も考えている。探索者の需要も見込めるだろうし、何よりも良質の武器や防具があることで探索者の生還率が向上する。これは、魔境の開発においても重要なことですからね。」


 事前に打ち合わせしていたように、アルスがこちらのフォローに回ってくれた。


「確かにこれほどの武器や防具があれば、魔境で命を落とす探索者は減るでしょう。辺境伯軍への供給の対価と、このランスの街での販売でも十分な利益が得られるでしょう。」


 プランBで納得してもらえたようだ。

 ならば、もう一段回話しを進めよう。


「バルガス協会長にご提案があるのですが、今回、辺境伯軍から探索者協会を独立させるにあたり、支店の場所を移転しませんか?現在の場所は辺境伯軍の建物を間借りしている状態です。アルス参謀には申し上げにくいが、堅苦しすぎて、探索者は依頼を受けにくいと思います。」


 これも事前に【紅の風】メンバーに確認を取って、現在の協会支店の立地、探索者の評判等をヒアリングした上で、アルスに承認を得ている。


「確かに探索者にとっては、少し堅苦しい立地にはありますが、辺境伯軍の仕事を担ってきたという今までの事情がありますからね。」


 そう言ってバルガス協会長は、アルスの方を気にしてる。


「確かに、今までは辺境伯軍で手の回らない部分を、探索者協会に依頼する形で解決してきた部分もあるが、今後は軍からの依頼という形で対応してもらえれば問題ないと思う。協会が移転したとしても軍としては問題ないと考えている。」


 アルスからは、問題ないという言葉を得られた事に、協会長は安心したようだ。


「では、移転先は商業区が良いと思いますが、優良な物件はほとんどが商業ギルドが抑えていますので、今から物件を探すとなると少し困難かもしれませんね。」


 探索者の利便性から考えると、多層構造のランスの砦からすぐにある商業区は探索者協会が移転する上で理想の場所と言える。


 商業区は商人達による商業ギルドが半自治権を持って運営している区域だ。

 物件探しにはまず商業ギルドに話を通す必要があるだろう。


 さすがにここは、辺境伯軍の威光で話を進めると後々問題になるだろう。

 然るべき手続きをしていく必要があるだろう。


「バルガス協会長、商業ギルドと連絡を取ってもらえますか?できれば商業ギルドの上の方と移転先について相談がしたいのですが。」


 いきなり俺が行っても相手にされないだろう。探索者協会の協会長であるバルガス協会長にまずは話を通してもらってから出向くのが無難だろう。


「ではすぐにでも面談の申し込みをしてきましょう。流石にこの後すぐにというわけにはいかないと思いますので、少し時間をいただきたい。」


 今回のように辺境伯軍の参謀であるアルスを引っ張り出さなければ、即日対応は難しいだろう。

 商業ギルドとは、辺境伯軍抜きで話を進める必要があるので仕方ない。


「大丈夫ですよ。こちらも今回の件で辺境伯と一度お話をしなければならないので、一度領都に向かいます。戻りは不明ですが、数日は戻れないと思いますので、話を進めておいていただけますか?」


 この後は、アルスが辺境伯軍の軍事施設で不在中の間の軍の内情を確認して、それから辺境伯領の領都へ出発する予定だ。


 その時間を少し使用して、バルガス協会長と今後の協会の在り方と、必要な設備や移転先の条件、費用などを打ち合わせしてもいいだろう。








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