35.エンダの断層
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「ギャー、無理無理無理。」
北のランスの砦を目指して疾走するハンヴィーの中で、悲痛な叫びがこだまする。
前方を走る1台目には、ブリュンヒルデとティア、【紅の風】のメンバーは乗っている。後続の2台目には、俺とオルテ、運転手のヴァルトラとアルス、ミーアが乗っていた。
先ほどの悲鳴は、普段無口なアルスの護衛担当であるミーアのものだった。
「大丈夫ですか?一応うちのメンバーの中では、ヴァルトラが一番運転が上手いんですが、スピードもう少し落としますか?」
俺達は、ウィルから、北のランスの砦まで、未舗装の道を時速40kmで北上している。
1台目の運転をティアが担当し、半径200mのスキャンをしながら運転しているので、障害物や、モンスターなどは、事前に対応済みだ。
モンスターなどは、大体がハンヴィーのエンジン音に恐れをなして遠ざかり、向かってくるものはブリュンヒルデが撃ち倒していく。
その為、森の中を時速40kmという信じられないスピードを維持している。
徒歩で約1日かかるランスの砦までの距離は、約40kmと想定しているので、1時間程度で到着する予定だ。
「い、いえ、大丈夫です。お気になさらずに。」
真っ青な顔をしながら、ミーアが返答してくる。
恐らくあと10分ぐらいで、到着予定なので、彼女にはもう少しだけ頑張ってもらおう。
しばらくすると、ランスの砦から1つ目の開拓村が見えてきた。
今回の開発計画にあたっって、一番初めに作られた開拓村だ。ランスから徒歩1時間との事なので、ランスまで約5kmといったところだろう。
タクティカルボードに表示される全体MAPを確認しながら、村の位置を登録していく。
先行するハンヴィーから、とマリーダとルクスが降りて村の護衛の兵士と話をしている。
事前に、今日我々がランスに向かうことは早馬で通達済みだが、ハンヴィーで行くことは伝わっていない。
ハンヴィーで行くと伝えたところで、ハンヴィーが何だかわからない人間に伝えたところで無意味だからだ。
マリーダが大きく手を振ってからハンヴィーに乗車した。問題ないようなのでこちらも出発する。
村の中を兵士や住民の奇異の目に晒されながら、徐行して進む。
道が開拓村の中を通っているためだが、今後は村の外側にう回路を作ってもいいかも知れない。
開拓村を出てすぐに、森が拓けて、巨大な断崖絶壁が見えてくる。
「ああ、俺、これ知ってるわ。これがエンダの断層か。」
目の前に広がる断崖絶壁は高さ100mを超え、全ての拒絶するようにそそり立っていた。
垂直にそそり立ち、遠目にものっぺりとしたその質感は、この断層はよじ登ることが不可能な何の突起も無い、まっ平らな壁であることを物語っている。
「アップデートの壁か。」
ゲーム開始から無数のアップデートを繰り返してきた「WARS」では、大掛かりなアップデートの際には、地形生成の構成が大幅に仕様変更されるため、キャラクターデータとMAPデータのリセットが推奨される。
今でこそ、キャラクターデータは、MAPデータとの紐づけが外されて、アップデート後も保存したキャラクターデータで遊ぶことが出来るが、昔の「WARS」では、アップデート後MAPデータとキャラクターデータを消去せずに、旧データのワールドにログインした場合、未踏破エリアの地形生成がエラーを起こし読み込み不能のバグを起こす。
未踏はエリアには侵入不可能な断崖絶壁がそそり立ち、今まさに俺が見ている光景が広がる。
「WARS」プレーヤーはこれを【アップデートの壁】と呼んでいた。
建国王の逸話から考えるに、ここは建国王の探索限界点。MAPの最南端だったのだろう。まさにワールドエンドだった。
ここからは俺の推測でしかないが、建国王はMAPの最南端、ワールドの終わりで、何らかの理由で、新天地を求めて地形生成を行なったのでないだろうか。
強制的な地形生成が実施された為に、地形生成にエラーが生じ、旧MAPと新たに生成されたMAPの間に世界の終わり、エンダ(エンド)の断層が生まれたのではないだろうか。
俺は、タクティカルボードを開き、MODメニューを開く。
未収得MODの一番下に、そのMODは存在した。
【地形生成MOD】
プレーヤー自らが、自らの意思を持ってゲーム内の地形生成をカスタマイズするこのMODは、SEED値によって生成される世界を自らの思惑通りにある程度操作できるMODだ。
大きな平野が欲しい。資源豊かな大森林が欲しい。そんなプレーヤーの意思が反映する世界。
ゲームを開始する前に本来使用されるこのMODは、この世界のようにすでに生成された世界では、本来使用できない。
だが、俺のMOD一覧にも存在するという事は、後付けで使用できるという事だ。
建国王はこの地に何を求めたのか。
俺にはわからないが、いつか建国王のかつての側近に聞いてみたいと思いエンダの断層を見上げた。




