34.出発前の準備
5月3日 ハンヴィーの台数を修正
無事完成したウィルの防御壁を確認してまわる。
最終的に完成したウィルの防御壁は高さ5m、厚さ3mとネズミ返し分を含めた十分に人が上に乗り防衛できるものになった。
耐久度も焼きレンガをベースにコンクリートで強化したものなので、物理的に破壊することは非常に困難だろう。
内側には数か所、防御壁に登るための階段も設置した。
「これほどの防壁は、辺境伯領でもなかなかありませんね。軍の指令室も含めて、北のランスの砦にも比肩するほどです。」
護衛騎士のミーアを連れた、アルスが階段をのぼって、防御壁に上に上がってきた。
アルスやマリーダの話を聞く限りでは、ランスの砦は辺境伯領の南側を横断するように横たわるエンダの断層の切れ目に作られた砦で、魔物の侵攻を防ぐたために建築された辺境伯領最大の防衛拠点だ。
エンダの断層は高低差100mに達する断崖絶壁であり、南の魔境側が底側になり大森林が広がっている。
伝説では、迫りくる魔物の大群に対して健国王が剣を一振りして、大地を切り裂き魔物を大地の底に叩き落したとされているらしい。
「10年前の大地震の際に出来た亀裂によって、唯一魔境と接してしまった亀裂の上に砦を築き、魔物の侵攻を防いできたのですが、ここ最近襲撃も殆ど無かった為、豊富な資源の回収のためにこの森を開発しようとしたわけです。」
アルスは防壁の上から、目の前に広がる森を見つめていた。
確かに、木材や川沿いの岩、粘土層などの資源は豊富であり、採掘の際に我々はそれ以外の資源も発見している。
「隣国と海に囲まれたわが国は、国の発展をこの地に求めたのです。」
辺境伯領が所属するローラント王国は、西側を海に、東側を山脈に挟まれ、北を亜人国家、北東を宗教国家と隣接する微妙な位置に存在する。
他国と争うよりは、人類未踏の地へと踏み出すことにしたのだろう。
戦争により多数の戦死者が発生し、国家が疲弊するよりも、魔物の領域を開拓する方が、確かにリスクはすくないだろう。
「結果として、開拓村は襲われ、開発計画はとん挫しそうになったと。」
戦争を回避して、未開の地を開拓するにはあまりにもコストを掛けなさ過ぎだ。20名弱の兵と探索者1パーティーでは、不測の事態に対応できない。
「隣接する貴族領で不穏な動きがありましてね。辺境伯軍をそちらに動かす必要があってこちらが手薄になってしまいました。あちらは解決済みですから、今後は150人体制で警備にあたる予定です。」
ウィルの南側の軍事施設は、200名が寝起きできる設備を完備している。常駐は150名で非常時にはその倍以上が収容できるだろう。
「そうしていただけるこちらとしても助かります。新たなご提案も含め、ご検討いただければ幸いです。」
ウィル建設のための採掘時に発見した資源についての話は、領都についてから、辺境伯と直接話す予定となっている。
食料の備蓄についても、例のシリアルバーを備蓄品としてある程度、買い上げてもらった。味よりも携行性を重視した場合、あれの利便性は計り知れない。
「それでは、明日、領都に向かって出発いたしますが、アルス参謀とミーア殿、【紅の風】のメンバーをお連れする形でよろしいですか?」
領都に向かうにあたり、こちらで車両を手配することになっていた。
辺境伯家にも、建国王時代の稼働しない乗り物が残されているようで、修理の依頼を受けている。
その乗り物が使用可能となった場合の移動時間を確認したいとの事だったので、今回何台かに分乗して移動することになっている。
予定では、ハンヴィー2台に分乗して移動する予定だ。
「ええ、宜しくお願いします。うちの蔵に眠っている年代物が動けば、色々とやれることも増えるでしょうからね。」
アルスには、俺がアーティファクトの修理ができる事は、伝えてある。
彼自身の最大の特徴である眼鏡が、実は【プロメテウス】の頭部装備そのものであったので、ガレージで完全修理した。
最近、視界がぼやけると言っていたので、確認したところ、耐久値低下によるディスプレイ表示の不具合だった。
マリーダと、ルクス、ミーアの各自の部位ドレスも同時に完全修理しておいた。
修理に掛かった費用は、アルスが現金で支払ってくれた。
かなり高額な費用だったが、国に支払う正当な修理費と同額との事だったので、ありがたく頂いておくことにした。
アルス達と別れて、明日の準備を行った。
ガレージは、領都で拠点を確保するまでは、ウィルに設置しておかなければならないので、何人かは留守番となる。
装備や、備品、消耗品などを各自のストレージや、ハンヴィーのストレージに収納していく。
明日はいよいよ領都へ向けて出発だ。




