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異世界サバイバルゲーマーはMODを駆使して生き残る  作者: 神崎由貴
第1章 ニューワールド
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25.辺境伯軍参謀

 馬車から降りてきた眼鏡の青年は自らをアービング辺境伯軍参謀と名乗り、責任者と話をしたいと言っている。

 ここはキース隊長かマリーダにお任せすることにする。


「兄上、兄上自ら前線に出てこられるとは、思いませんでした。援軍感謝いたします。詳しいお話は村の中で致しましょう。」


 マリーダとキース隊長がアルス参謀と対応してくれるようだ。

 他の兵士達は完全武装だが、アルス参謀は鎧を付けず、剣すら持っていない、はたから見たら、まったくもって軍人には見えない。

 どちらかというと学者と名乗ってくれた方がしっくりくるそんな印象の青年だ。


「アツシ殿、アルス参謀との会談に同席願えないでしょうか?今回のゴブリンの殲滅についての功労賞のお話もありますし、ティアさんとご一緒にお願いしたします。」


 マリーダにそう促されては、ノーとは言えない。もともと砦からの援軍が来たら、魔族や、ロード等の見聞がある予定なのだから仕方ない。


「了解しました。ティアと共に、ご同行させていただきます。」


 ワルキューレのメンバーに民家での待機を命じて、マリーダ達に同行する。


 ざっと見た限り、砦からの援軍は100名、騎兵が20騎と歩兵と思われる軽装の兵士が80名。兵たちが乗ってきた馬車は1頭立てだが、馬車の3倍の数の馬がいる事が気になった。

 兵士達は、半数が、今まで警備にあたっていたキース隊長達と入れ替わりで南北の門の警備に付き、20名が周辺の捜索、20名が兵士が駐留するためのテントなどの設営にあたっている。


 アルス参謀と副官らしき女性騎士とキース隊長、【紅の風】のメンバー4人、俺とティアは村長の家に向かいそこで今回の報告を行うことになった。

 アルス参謀は、途中、監視塔を興味深そうに見ていた。


「失礼、君は何者かな?この村の住人ではなさそうだし、辺境伯軍の人間でもない。しかしマリーダは、君に今回の報告の場に同席するように依頼した。ならば今回の件についてよほど重大な立場にいるのだろう。」


 先ほどまでのぼやっとした雰囲気から、がらりと変わり、こちらを値踏みするような感じを受けた。


「名乗らなかった非礼をお詫びいたします。アルス参謀。私はアツシと申します。こちらは副官のティアです。今回は縁あってマリーダ様をご助力することになり、その成り行きでこの村の防衛戦に参加させていただきました。重要な立場かどうかは私自身では判断いたしかねますが、マリーダ様がお呼びになられたのならそうかもしれませんね。」


 参謀の敬称などただの大学生の俺にはわからない。参謀閣下が正しいのか。どうなのかも含めてさっぱりだったので、とりあえず出来るだけ丁寧な言葉遣いで対応してみた。


「ほう、ニホンゴか。また珍しい言葉をお使いになる。ご出身はどちらかな?」


 一瞬眼鏡の奥で目を細めてから、日本語に反応してきた。そして若干言葉遣いが変わった。おそらく日本語を使うのは、この国の貴族が式典時のみという事を鑑みて、こちらの立場を推理したのだろう。

 この眼鏡、参謀を名乗るだけあり洞察力が高いな。


「兄上、アツシ殿はゴブリンに襲わていた私を助けて、この開拓村まで送り届けて下さった上に、共に戦い、ゴブリンロードや、チャンピオンを討伐した優れた戦士です。部下の戦士に至っては、魔族を討伐するほどの今回の件で言えば、最大の功労者です。いくら兄上でも、失礼が過ぎますよ。」


 横からマリーダが怒りながら、フォローしてくれた。


「待て、マリーダ。今魔族やら、ゴブリンロードやらという不穏な言葉が出てきたが、それを彼が倒したというのか?確かに身にまとう雰囲気は只者ではなさそうだが。それほど多くの部下を連れていたようには見えなかったが、皆、戦死してしまったのか?」


「いえ、私の部下は誰も戦死していませんよ。まあ、実際に魔族やロードの死体については目的地に着きましたらお見せいたしますよ。」


 アルス参謀は、驚いた表情で俺の方をじっと見つめてきた。

 視界にアナライズの警告文が表示される。

「WARS」では相手の強さを把握するため、アナライズという特殊スキルがあり、プレーヤーには相手からアナライズを受けた場合はアナライズされているという警告が為される。

 俺とアルス参謀の間にすっとティアが割り込み、参謀の視線を遮ってくれた。

「失礼した。つい気になってしまってね。どうも私は気になったことがあると調べたくなる癖が抜けないようでね。気になると徹底的に調べないと気が済まない質でね。本当に申し訳ない。」


 アナライズにこちらが気が付いたことに対して、素直に頭を下げてきた。貴族とはもっと偉そうなものだと思っていたがそうでもないようだ。

 そして、アナライズされて、あることに気が付いた。


 アナライズは、オペレーターの専用スキルであり、プレーヤーや他のNPCには使用できないスキルである。1人のプレーヤーに対してオペレーターは1人。つまりこの国では、建国王のオペレーター1名だけのはずである。

 しかし彼はマリーダの兄であり、建国当初から生きているわけではない。

 1人のプレーヤーに対してオペレーターは1人という概念そのものがこの世界では違っているのかもしれない。



 そうこうしているうちに、村長の家の前に着いたので、許可を得てから、魔族、ロード、チャンピオンの死体をストレージから出す。


 参謀はストレージそのものに興味があるようだが、魔族を見てそちらをアナライズし始めた。


「間違いない、魔族にロード、チャンピオンだ。これほどの高レベルモンスターとなると、私が連れてきた兵士達だけでは対応できなかったかもしてないな。確かにマリーダの言うとおり、アツシ殿の功績は凄まじいものだな。」


 魔族、ロード、チャンピオンの死体は、辺境伯軍が引き取り解析するようだ。

 一応、結構なお値段で買い取ってくれるようなので、そちらは買い取ってもらい、ゴブリンの死体については、こちらでいただくことで決着した。

 一応、討伐の印として、魔族、ロード、チャンピオンは右耳だけはもらう事になった。


 村長の家で、昨夜の戦闘での報告をしながら意見交換を行った。アルス参謀はさすがに参謀だけあり、昨夜の戦闘の戦況からこちらの戦力を分析して、戦闘力についてはある程度、把握されたと考えてよいだろう。


「アツシ殿達の戦力は理解した。魔導級装備アーティファクトを修繕する技術も含めて、こちらとしては辺境伯軍で雇い入れたいぐらいだが、それに見合った対価をおそらく用意することが出来ないだろう。」


 どうやら、辺境伯軍に無理やり取り込まれるという考えうる中で最悪の状況は避けられたようだ。そうなったら、力づくでも対抗するつもりだったが、平和的に行けそうだ。


「長期雇用は出来ないが、短期的にアツシ殿を、辺境伯軍で雇うことは出来ないだろうか?戦力としてではなく、門を封鎖したあの建築力を短期間でも雇えないだろうか?」


 アルス参謀は、軍の戦力としてではなく、この開拓村を次回の襲撃に備えて砦化するために作業員として、俺達を雇用したいようだ。

 要望は4つ、監視塔の増設と、村全体を覆う石素材以上の防壁、そして兵士が駐留する建物と丈夫な南北の門だ。

 工期はこちらからの提案で7日。材料は俺たち自身で調達し、費用は請求する形だ。


「で、お代はいかほど頂けるんで?」

 一度言ってみたかったセリフを言ってみた。後悔はない。やってやりました。




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