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異世界サバイバルゲーマーはMODを駆使して生き残る  作者: 神崎由貴
第1章 ニューワールド
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24.砦からの応援

 マリーダやルクスさんから得た情報を統合すると、探索者シーカーの組織運営はあまり上手く行っていないようだ。


 辺境伯領以外では、各貴族家が私兵を使い、魔物の討伐でパワーレベリングをしているため都市部では、依頼がほとんどなく、フリーの探索者シーカーが討伐や護衛等の依頼を受けられるのは、このアービング辺境伯領ぐらいで、その為に主だった組織の運営を、辺境伯軍が一括して管理している状況だという。


 辺境伯領は魔物が多く生息する魔境と呼ばれる地域に、この国としては唯一隣接する地域であり、かつては王家の直轄領であったが、軍の維持等の関係からアービング辺境伯家へと移譲された経緯を持つようだ。

 辺境伯家は現在進行形で、魔物の襲撃に備えて各所に砦を築きながら、開拓村を作って少しづつ魔境を開発している最中のようだ。


 魔境に隣接する立地条件から魔物の侵攻が多く、防衛だけで手いっぱいなっている状況を、探索者シーカーを組織的に運用することによって、足りない部分を補っているのが現状のようだ。

 活動資金についても、辺境伯家の軍事費から拠出されているものも多く、実際に軍事費を圧迫しているが、代替え案も無い状況で、軍部を悩ませているようだ。

 必要なのは、探索者シーカーの維持と、その維持管理費を負担できる財力。

 そして、それを軍部の出来るだけ上層部に直接話を持ち込めるパイプだ。


「マリーダさん、辺境伯軍の上層部にお話をしたいのですが、お話を取り次いでいただくことはできませんか?」



 突然の俺のお願いにさすがにびっくりしたようだが、そこは辺境伯家のご令嬢だ。

「アツシ殿には、今回の件では大変感謝しています。ですが、いきなり軍の上層部を紹介してくれと言われても、すぐにできる事ではないのです。」


 ですよねー。

 どこの馬の骨とも知らない人間を、この地の防衛の要ともいえるような人物をいきなり合わせることで、万が一にでも何かあったら、辺境伯軍の機能が停止してしまう。辺境伯家の一員としてさすがに許可できないよね。


「失礼いたしました。辺境伯軍にとってメリットのある事でしたので、つい急いでしまいました。まずは今回の件を終わらせてから、意見書としてご提案をさせて頂きます。ぜひその際には、意見書が軍の上層部の方の目に留まるようにご配慮いただければと思います。」


 踏み込み過ぎてもだめだ、今回はこちらに案がある旨を伝えられれば十分だろう。


「申し訳ないが、その時は助力させていただきます。」


 助力の言質は取れたし、砦から来た援軍の指揮官にでも、同じような話をして自分が辺境伯軍にとってメリットがある人間であることをアピールすることから始めよう。


「では、お食事の済んだことですので、デザートでもどうでしょうか?」


 ケーキやプリン等のデザートも考えたが、この世界の食生活からあまりにかけ離れたものだった場合インパクトが強すぎると考えて、今回はフレンチトーストを用意した。

 この世界でもあるようなフランスパンのようなバゲットをじっくり専用の液に浸して柔らかくしたものをふんわり焼き上げて、クリームとメイプルシロップで仕上げた逸品だ。もちろんスキルを使用し、HQハイクオリティーに仕上げてあるので、味は絶品だ。


「これは、アツシ殿。凄くおいしいです。この料理はなんと言う料理ですか?」


 案の定、【紅の風】の食いしん坊担当ルクスさんが食いついてきた。


「フレンチトーストといいます。かかっているのは生クリームとメイプルシロップです。」


 こちらの手つかずのフレンチトーストをじっと見ている。

 はい、差し上げますね。


 かなりの量の料理を準備してあったので、開拓村の住人と、村人にお願いして簡単に食べられるものはキース隊長達にも届けてもらった。俺達だけ美味しいものを食べるという罪悪感からだったが、感謝されて逆に困ってしまった。


 警備の交代も申し出てみたが、救援に来たことだけで十分だと断られ、警備は自警団と、兵士で十分だと言われてしまった。


 食事の後、俺達の身綺麗さを目聡く確認していたマリーダさんからの追及に対して、ティアが風呂の話をして、マリーダさん達もガレージの風呂に入りに来ることになった。


 ガレージの風呂は、大浴場とまではいかないが、大人が4人位同時に入れるサイズがあり、洗い場も2か所完備された立派なものだ。

 設備も近代的で、シャワーや、セットさえしておけば、24時間入れるようになっている。

 ティアの案内の元、現在【紅の風】のメンバーはうちの自慢の風呂を堪能している頃だろう。



 その後ゴブリンの襲撃も無く、キース隊長達のおかげで色々考える時間が出来た。ただし思っていたよりは大分時間は取れなかったけど。


 翌日の明け方に、警備している兵士から救援の部隊が到着したとの報告を受けて、マリーダ達と共に北門へ向かった。門は俺が石材ブロックで封鎖してしまっているので、破砕しない事には応援の部隊が村に入れないからだ。


【大地の炎】の斥候が馬を飛ばして、砦に駆け込んで、救援部隊が組織されてこの村にたどり着くまで2日は要すると誰もが思っていた。


 マリーダとの話の中で、その2日という日数は、砦側が最速で準備場合という前提がつく。

 だが、実際には中1日で救援部隊が到着したことのなる。この世界の技術で1日を短縮するのは極めて難しい。


 一応、フル装備で北門へ向かい、防衛拠点の上から部隊に声を掛け、村の内側から、つるはしで破砕していく。

対ゴブリンで活躍した石材ブロックだが、レベル200の俺が相応のアイテムレベルの専用道具を使用すれば、石材程度の耐久値は無いに等しい。


 北門が開通すると、救援部隊の中から1人の男が馬車から降り立った。


「私は、アービング辺境伯軍参謀、アルス=フォン=アービングだ。責任者と話がしたい。」そう言いながら、眼鏡の青年がこちらに向かってやってきた。



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