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異世界サバイバルゲーマーはMODを駆使して生き残る  作者: 神崎由貴
第1章 ニューワールド
22/48

21.【穿つもの】

ようやく戦闘回の終わりが見えました。宜しくお願いいたします。

4月18日サブタイトルの番号振り忘れ修正 シャベルとスコップの混在修正

 地面に降り立つと同時に駆け出したブリュンヒルデは、素早く腰の簡易ストレージを確認して、自身の得物の存在を確認した。


「オルテ、10m先行する、後方よりバックアップ体制。状況によっては、近接戦闘もあり得る。その場合は近づかずに、ティア姉と共にバックアップに専念すること。近づくと巻き込む可能性があるからね。」


 ブリュンヒルデのドレスは、アツシのような高機動型ではなく、防御力と打撃力を重視した完全な近接戦闘用のドレスだ。

 単騎で敵陣に乗り込み、突破口をこじ開けるための突破力と耐久力を備えた【修羅】は局地戦においての運用を前提として設計されている。


 森の奥へと進むブリュンヒルデは、目に入るホブゴブリンを流し撃ちしながら、目的地へと駆けていく。撃ち漏らしたゴブリンは後続のオルテとティアが処理すると確信している後ろは気にしない。


 ティアから指定された場所に向かうにつれて、敵の密度が上がっていくが、後続の援護射撃もあり、問題なく目的地にたどり着いた。


 目的地には巨体のトロールが2体と肌の青い長身の男が佇んでいた。


「目標を補足、トロール2、肌の青い男は種族、レベルともに不明。ティア姉解析宜しく。」


 解析は専門のティアに任せて、自分は目の前の動きに集中する。


「人間風情が、ここまで来るとは思わなかったよ。おかしな装備をしているしお前、村の人間じゃないな?」


 青い肌の男が偉そうにこちらを見据えてくる。


「人間風情がって。自分がまるで人間ではないみたいな言い方だね。」


 こんな偉そうな態度をとる輩は、得てして戦闘における自分の立ち位置を勘違いして、情報をベラベラと喋るタイプだ。

ここはあえて挑発してみる。


「魔族であるこの俺を、人間ごときと一緒にするなよ。不快だ、死ね。」

 挑発に乗って自ら名乗ってきた。ちょろい。

 自らの種族を名乗るなど、愚の骨頂だ。


 魔族の男の指示で、トロールが手にした巨大なこん棒を振り下ろしてくる。

 よける事も可能だったが、右手で受け止める。

 鈍い音と共に、足元の地面が沈んだが、ただそれだけだった。

 受け止められたトロールと魔族の男は驚愕の目でこちらを見てくるが、トロールの攻撃など、この【修羅】にとっては、どうという事はない。

 片手で押し返しながら、素早く、SCAR-Hの7.62mm弾を撃ち込む。


 こん棒を握ったトロールの左手が千切れて宙に舞う。

 同時に魔族の男と、左側のトロールにもフルオートで、薙ぎ払う。


 トロールは仰向けに倒れたが、魔族の男は素早く盾のようなものを取り出し、7.62mm弾を防いだ。


「お待たせ、解析結果を送信します。魔族は想定より高レベルなので、油断しないように。」

【トロールレベル:Lv30】【デーモン:Lv50】


 レベル50。想定以上だ。7.62mmの斉射にも耐えうる装備を所持する強敵。


 無意識に口角が上がる。一撃で壊れない強敵オモチャ


 SCAR-Hの斉射を耐えきって、満足げな魔族の男に向かって凶暴な笑みを返した。

「いいねぇ、少しだけ本気が出せそうだ。【修羅】セイフティー解除、近接モードに移行。」


 ブリュンヒルデの声紋に反応して、ドレス【修羅】がオーバーレイを自動解除、本来あるべきドレスの姿への変貌する。

 肩甲骨のあたりからもう1対の腕が生えた異形の姿が、【修羅】の本来の姿だ。

 肩から生えた1対の手にはそれぞれ光輝く光のフォトンブレードが握られている。


「ばかな、健国王の剣がなぜこんなところに…。」

 デーモンは焦りながらも、暗褐色の小型の盾を構える。

 ブリュンヒルデは、左右の上段から光の剣を振り下ろしながら叫ぶ。


「これくらいで壊れてくれるなよ。」

 左右から振り下ろされた光の剣はデーモンの掲げる盾とが激しくぶつかり合って、バチバチと激しく音を立てている。


「ぐっ、防いだぞ。建国王の剣も、わが盾の前では無力よ。」

 盾は押し込まれながらも、何とか光の剣を防ぎ、デーモンから凄まじい勢いで魔力を吸い上げている。


 デーモンには余裕がない状況だ。


フォトンブレードの攻撃に耐えた事により、ブリュンヒルデは、驚喜した。

この相手は、アレを使っても良い相手だと。喜びに打ち震える。


「わがマスターより賜りし、至宝の武器を試させてもらおう。」

 ブリュンヒルデは、SCAR-Hを手放しサブストレージから、自身の持つ最強の近接武器を引き抜いた。

 総タングステンで作られた全長100cmの漆黒のシャベルである。


 WARSでは、採取の際に、木材には、斧。石材にはピックアックス。草にはサイズ、土素材にはシャベルとそれぞれの適した採取道具が存在する。

 採取の際には、本来はそれぞれを対象ごとに切り替える事で効率よく採取されるのだが、切り替えるのが面倒だとアツシが超重量と、硬度を誇るタングステンで自らが製作したシャベルである。


 本来の土素材だけでなく、木材、石材、金属に対しても効果的になるように様々な技法と、エンチャントが施されている。

形状的に斬る、薙ぎ払う、突くと戦闘にも十分耐えうる。


 最終的に、複数のエンチャントを行うことで、魔術的にも法則を乱す為、魔術結界さえも貫く最強の近接武器となった。


アツシがこのシャベル製作に費やした工数は164工程アクション

WARSにおけるクラフトはほぼ自動製作オートが主流であり、ワンボタンで素材さえあれば、製作できる。

生産職クラフターのスキルには、手動で製作を行うモードがあり、様々な工程アクションを行うことで、品質と、アイテムレベルの向上、魔術的なエンチャントをここなうことが出来る。

簡単なロングソードの製作が8工程アクションであることを考えれば、破格の工数アクションであり、アツシのこだわりが感じられる。


これだけの工数に耐えられる素材もそう多くない。

システム上、製作工数に制限を与えるため、工数ごとに素材の耐久値を消費して加工するため、工数が多いほど、耐久に優れた素材が必要となる。

製作完了後は、アイテムレベル、素材、付与されたエンチャントにより装備としての耐久値が設定される。

「WARS」では、クラフトしたアイテムには、製作者の銘が刻まれる。


 敬愛するアツシの銘の入ったこのタングステンのシャベルは、アツシ自身あまりの重量からスタミナ消費が激しく、採取用としては扱いきれず、死蔵していたものを、ブリュンヒルデの下賜したものだ。


 以来、ブリュンヒルデは、この【穿つもの】と呼ばれる漆黒のシャベルを振り続け、シャベルによる近接戦闘術を確立していた。

 全ては、敬愛するアツシからブリュンヒルデ専用として下賜されたこの武器を扱うために。


 正面から突き出された【穿つもの】は、一瞬の抵抗の後、デーモンを漆黒の盾ごと突き通した。



 デーモンは、信じられないものを見るようにブリュンヒルデを見た後自分の胸を見てた。デーモンは二度と顔を上げることなく胸を貫かれて死亡した。

 再生をしたトロールもティアとオルテによって頭部を破壊され、生命活動を停止していた。


「周囲の残党の処理は残っていますが、南門の周辺の掃討は完了。今回の襲撃の首謀者と思われるデーモンを討伐完了です。」


 ティアがアツシに通信で報告をあげている。


 ブリュンヒルデは引き抜いた【穿つもの】を一振りして、付着した魔族の血を振り払った。地面に血が飛び、【穿つもの】には一切の汚れはついていなかった。


 長いようで短い夜が終わり、後に語られる物語の1日目はようやく終わろうとしていた。















【所持MP9】

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