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異世界サバイバルゲーマーはMODを駆使して生き残る  作者: 神崎由貴
第1章 ニューワールド
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20.南門防衛戦

 アツシが監視塔を建設している頃、ガレージで弾薬の補給等を行っているティア達は、ある相談事をしていた。


「これから始まる戦闘では、恐らく苦戦することなく敵対勢力エネミーをせん滅することが出来るでしょう。」


 ティアがおもむろにしゃべり出し、ワルキューレのメンバーが相槌を打つ。


「まっ、そうなるわな。装備、レベル、共にゴブリンやホブゴブリン程度の戦力ならいくら数が多かろうと、問題ないからな。」

 やる気のない声で、ワルキューレ達を代表して、ブリュンヒルデが答える。

 彼女達にとっては、ゴブリン程度その気になれば素手でも倒せてしまうのだ。

 ただの消化試合でしかない。次のティアの一言がでるまでは。


「そこで、今後の活動のために、出来るだけ、経験値とゲーム内通貨ジェムを稼ぎます。各自奮戦しなさい。一番戦果を挙げたものには、次回の食事の際にアツシの横に座る権利を与えます。」


 ざわ、一瞬で、その場の空気が変わる。


 おもむろにシュバルツが手を挙げて質問する。


「・・・戦果は数?狙撃手は数・・・稼げない。・・・公平なルールの制定を要求する。」


 消え入りそうな声だが、自分の言いたいことははっきりと伝えてきた。


「質問です。トラップによる殲滅はキル数にカウントされますか?キル数の申告方法は?死体が必要ですか?」


 ヴァルトラが食い気味に質問してくる。


「べつに私達ワルキューレはこの程度で怪我なんてしないんだから、衛生兵である私自身が前線に出て、ゴブリンを倒しても問題ないわよね。兵科による制限の解除を要求する。」

 オルテが、殺気立った目つきで、ティアに詰め寄る。


「では、ルールはポイント制。ゴブリンは1Pポイント、ホブゴブリンは5Pポイント、チャンピオン、ジェネラル等の上位種は15Pポイント、ロードやその他については強さに応じたポイントで。トラップによるキルも戦闘ログが残りますので、トラップによるキル数も加算とします。兵科による制限も無し、無謀な行動でなければ許可します。」


「よし。」×3

 シュバルツ、ヴァルトラ、オルテがガッツポーズをする。


「ティア姉、もちろん、装備の使用制限は無しだよな。」

 ブリュンヒルデが確認を取り、ティアが承認する。


「すべての装備に使用を許可します、全力で叩き潰しなさい。」

 その答えに、ブリュンヒルデは凶暴な笑みを浮かべる。


「よっしゃー!久しぶりの全力戦闘、無茶しても怒られない全力戦闘ー♪、全力で戦ったうえに、マスターの隣の席のおまけ付きー♪」


 この村をゴブリンから守るという使命感からはかけ離れた、私欲に満ちたやる気を各自見せいていた。


◇    ◇    ◇


 食事を採ったのち、各自持ち場についた。


 ヴァルトラはアツシと共に北門へ。

 ティア、ブリュンヒルデ、オルテは南門へ。

 シュバルツは監視塔に登り狙撃の準備を開始する。


 南門を攻めていたゴブリンを、我先に殲滅した南門チームは、唖然とする【紅の風】のメンバーを送り出して、合流したキース隊長率いる兵士達と簡単な打ち合わせを行うと戦闘の準備を始める。


「こちらティア、これより作戦を開始する。シュバルツ、【ホークアイ】の使用を許可します。ホークアイ展開後、任意の狙撃許可を出します。各員ホークアイのデータリンクはこちらでデータ送信します。索敵後、敵をせん滅します。」


 狙撃手であるシュバルツの身に着けるドレスは【ホークアイ】。ドレスと同じ名前を持つ特殊兵装は使用者の上空200mに広範囲レーダーを展開し、索敵をサポートする。使用制限として使用者の行動と著しく制限するが、狙撃との組み合わせなら問題なく運用できる。


【ホークアイ】からの情報は、オペレーターと使用者に送信され、オペレーターが各種フィルター等で加工した戦術MAPを戦闘員にフィードバックする。

 これにより、索敵能力の低い近接戦闘専用のドレスの着用者も十分に敵の位置を把握することが出来、味方との連携も取りやすくなる。


 日が傾き、森からゴブリン達が南門へと駆け出してくる。

 キース達兵士には最終的な南門の守備を託し、ティア達が前面に展開することになっている。

 装備の違いを理由に挙げているが、本音は完全に獲物を総どりする為だ。


 森から南門までは開拓が進み200mほどの空白地帯がある。

森から飛び出してきたゴブリン達は南門を目指して駆け寄ってくる。ゴブリンの中に混じる大型のホブゴブリンが次々と頭部を撃ち抜かれて、倒れていく。


「マジか、シュバルツのヤツ気合入ってるな~。大物はみんな食われちゃうから、数を稼がなきゃ。」

オルテは呆れた顔押しながら、416Dを構えて、ゴブリンを撃ちぬいていく。


オルテが呆れるように、シュバルツの使用するMSR-338はボルトアクションの狙撃銃であり、PSG-1のようなセミオートマチックと違い連射が構造上利かない。それでも次々とヘッドショットを決めている事を考えると、リロードから射撃までの時間が異常に早いことが伺える。


「シュバルツやオルテが張り切りすぎて、こっちの相手にする敵がいなくなっちゃいそうだぜ。」


ブリュンヒルデは少し苛立ちながら、SCAR-Hで押し寄せるゴブリンを2枚抜きしていく。

SCAR-Hは7.62mmのライフル弾を使用する非常に強力なアサルトライフルだ。貫通性優れたライフル弾の特性を活かして、キル数を稼いでいる。



森からわき出すように出てきたゴブリンはティアも含めた4人の弾幕の前に門にたどり着くことなく、屍の山を築いていった。


ゴブリンの波が途切れるタイミングで、森の中から凄まじい咆哮が聞こえる。


「前方2時の方角、距離350mに大型のモンスターを確認。その付近にUnkownを確認。ブリュンヒルデは先行、オルテと私がサポートに回ります。シュバルツは、現状待機。森から出てきた場合は、即時殲滅しなさい。」


メンバーに指示を出してから、待機中のキース隊長ら兵士に声をかける。


「キース隊長、我々はあの咆哮の正体を確認に向かいます。申し訳ありませんが、もしゴブリンが再度襲撃に来た場合は、対応をお願いします。」


キース隊長ら南門の兵士は戦力が温存されている状況なので、すぐに了解し、配置についた。


キースとティアが話をしているうちにブリュンヒルデは弾倉を交換して、防御拠点から飛び降りた。続けてオルテが飛び降りる頃には、森に向かって駆け出していた。









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