20.北門防衛戦
本日2本目です。宜しくお願い致します。
【M18クレイモア】の死のシャワーが止んだ後、北門に向かってなだれ込んできたゴブリン達はほぼ壊滅していた。
当たり所が悪く、運悪く生き残ってしまったゴブリンやホブゴブリンは自らが流した大量の血の海の中で、もがき苦しんでいた。
ゴブリンチャンピオンも咄嗟に近くにいたホブゴブリンを盾にしたことで致命傷を避けることが出来たが、今は立っているのがやっとの状態だった。
それでも、チャンピオンは手にした大剣をかざし、こちらを睨みつけてくる。
「恐ろしき力を持つ人間よ、戦士としての情けがあるのなら、ここに来て俺と勝負せよ…。この戦はお前たちの勝ちだ。ならばせめて最後に戦士として戦って死にたい。」
日本語化MODの影響下にある現在の俺には、ゴブリンチャンピオンの声が聞こえてしっまった。
「マスター、殺しましょう。相手にする必要はありません。ここから1斉射するだけで簡単に処理できます。わざわざあんなところまで出向いて、直接退治する必要はありません。」
ヴァルトラが即時にP90を構えて、ゴブリンチャンピオンに銃口を向けた。
「ヴァルトラ、ストップ。俺もこの世界のモンスターがどれほどのものか、銃以外の攻撃が通用するのか、確認したい。チャンピオンとの戦闘への手出しは無用だ。但し、邪魔する輩がいれば容赦なく撃て。」
手でそれを止めながら、一歩前へでる。
俺自身、こっちに来てから、銃火器による遠距離攻撃は十分に通用することは確認できた。
ドレスの力や、レベル200のこの体が実際に近接戦闘等でどれほど動かせるか、一度本気でやってみたかった。
ゴブリン程度ではとてもじゃないが、腕試しにもならない。
ゴブリンチャンピオンは、レベル25 この世界の熟練の戦闘職と同等の力を持つはずなので、ここで試したかった。
P90を背中に回し、ストレージから、一本の金属製の槍を取り出す。
取り出した槍を両手で握って、感覚を確かめる。
深紅に染められたその槍は、穂先と柄の間に緑色の宝石をあしらったデザインで、穂先と束にはびっしりとルーン文字が刻まれている。
アイテムレベル100 ルーンの槍 白兵戦も想定して、ガレージから持ち出したもので、華奢なデザインだが、素材と刻まれたルーン文字による強化によって凄まじい強度を持つ。
ルーンの槍を一振りして、一気にジャンプし、ゴブリンチャンピオンの前に降り立つ。
「悪いが、俺は戦士じゃない。ただ自分の強さを確認するためにここに来ただけだ。お前の望むような戦いは出来ないだろうが、それでもいいなら相手になってやる。」
そう言いながら、槍を構える。
無論、日本語化MODの影響は、俺が聞く言葉に対してだけで、俺の言葉がゴブリンに通じるとは思っていないが、俺の構えに満足した笑みを浮かべたチャンピオンも大剣を構えた。
「感謝する。」
そう発して、一気に距離を詰めて上段から大剣を振り下ろす。
俺はその大剣を槍の柄で受け止める。通常の槍であれば、こんな使い方をすれば一発で折れてしまうだろう。
素材の強度と強度アップのルーンの刻まれたルーンの槍だからこそ受け止まられる。
そこにゴブリンチャンピオンは全体重をかけて押し込んでくる。
通常の人間では耐えられないような負荷が俺の両腕に掛かるが、高機動型とはいえ、アイテムレベル200のドレス【斑鳩】とレベル200の身体能力。
苦も無く支えきり、逆に押し返す。
装備の強度テストと俺の身体能力テストは十分できた。
たまらず、距離を取ったゴブリンチャンピオンに、追撃をかける。
左にステップを踏みだし、右足を軸に全力で前方へ飛び出す。
高機動型ドレスの最大加速と運動エネルギーが乗った槍の穂先がゴブリンチャンピオンの胸へと吸い込まれる。
それを目の当たりにして、ゴブリンチャンピオンは満足げな顔をしたように見えた。
そして、ゴブリンチャンピオンの上半身は弾け飛んだ。
自分のやった事ながら、レベル200の破壊力を改めて感じた。完全なやりすぎだったと反省している。
返す穂先を森に向け、全力で投擲した。
森の中で、果実の弾けたような音がして、その後、「ドサッ」と何かが倒れる音がした。
視界にチャンピオンを倒した経験値と、それ以上の経験値が表示されて、消えた。
あたりをスキャンしながら、森に入っていくと、立派な装飾品を身に着けた大型のゴブリンがルーンの槍に貫かれて、絶命していた。
経験値の量から、ジェネラル又はロードと推測されるそのゴブリンをストレージに回収しながら、北門での戦闘がほぼ完結したと俺は確信した。
【所持MP9】




