1.アップデート前夜 システムエラー
2019年4月25日 全体の文章の見直しを実施
俺の名前は東城敦史21歳の文学部に所属する大学生だ。
趣味はオープンワールドサバイバルゲーム「WAR After Revolution Survival」通称「WARS」
アーリーアクセスからスタートしたこのゲームは、サバイバルアクション要素とFPS要素、そして建築要素を兼ね備えた、永遠に遊び続けられるゲームだ。
何故、永遠に遊び続けられるゲームだと言ったかといえば、このゲームは現在も進化しているからである。
アーリーアクセス、すなわち、早期アクセスによって開発途中版のゲームをプレーヤーに提供することによって、開発側は開発資金を得ながらゲーム開発を進められる。
プレーヤーはゲーム内の様々な事案を、開発サイドにフィードバックすることによって、ゲームをより面白いものへと進化させて行く。
そしてアルファ版、ベータ版と進み最終的にゲームとしてリリースされる。
ちなみに現在の「WARS」はα(アルファ)27.5。
まさに開発中のゲームなのである。
アーリーアクセス開始から10年。未だにこのゲームは進化し続けているのだ。
少し熱く語りすぎたようだ。
小学生の時、父親がやっていたパソコンゲームを一緒に始めたのがこのゲームとの出会いだった。
当時未成年だった俺は、このゲームの建築要素にハマり、父親が集めてきた素材をもとに様々な建築をゲームの中で行ってきた。
当時は年齢制限の関係で、安全圏でのプレイしかできなかった。
高校生になり、暴力的な表現が解禁されると、武器を片手に様々なモンスターを討伐し始めるようになった。
時を同じくして、VR版 アルファ21 Revolutionが実装され、ゲームはよりリアルになっていった。
世界中で遊ばれているこのゲームには、MODと呼ばれる追加要素があり、世界中の有志が作成し、ネットワークを通じて配布され、世界中に遊ばれている。
元々はサバイバルゲームというジャンルであった「WARS」は、様々なMODにより中世の世界観や近未来、ドラゴンや恐竜、ロボットといった様々なモンスターを追加して、俺達プレーヤーに無限の遊び方を提供してくれる。
開発元もMOD作成者を排除したりせず、友好的な関係を築いている。
まあ、これがずるずると開発が遅れている1つの理由となっていると言えなくもない。
そして、俺は現在、大型建築の真っ最中だ。
「ティア、とりあえず、今やっている城壁の外溝が終わったら、このデータをプレハブMODの一番下に登録してくれ。」
オペレーターAIのティアに、創造専用モードにて作成中の建造物のデータのバックアップを指示した。
「了解、アツシ。現在、作業開始から3時間が経過しています。一旦、小休憩を取ることをお勧めします。」
もうそんなに時間がたったのか。建築をしているとあまりの楽しさに時間が経つのを忘れてしましがちだ。
「そうだな、一旦ログアウトして、水分補給してから作業を再開するから、悪いけど、必要なブロックの生成を進めておいてくれるか。」
ティアはVR画面上に表示されるオペレーターNPCで、キャラクターデザインは俺が行った。
設定やら、ビジュアル、装備に、取得スキルまで、完成に3日ほどの時間を掛けてしまった。
ちなみに俺自身のキャラの製作時間は30分だった。
ヒューマンタイプの黒髪の中肉中背の男性キャラ。ほぼ俺そのものだ。
若干ビジュアルは盛っているが、そこはゲーム、許容範囲だろう。
ティアの外観は、エルフの女性、ロングの金髪に翡翠色の瞳、長い耳と、王道の森の妖精スタイルである。
現在は敵性モンスターが出ない創造専用モードなので、Tシャツにジーンズ、スニーカーという非常にカジュアルな格好だ。
クリエイティブNPCであるティアはレベル100 オペレーター用の情報スキルと中長距離型の攻撃スキルをメインに取得している。
「WARS」の基本攻撃手段は近接武器による近接攻撃、および弓や銃火器による遠距離攻撃となる。
中世MODには、魔法による攻撃なども存在するが、通常は刃物や鈍器による近接攻撃や銃器による遠距離攻撃が主となる。
ちなみに、俺はキャラデータが上限値到達しているので、レベル200 スキルはほぼコンプリート済みの状態だ。
個人的な趣味から、メインウエポンは近代兵器の銃火器である。
もちろん、スキル構成上、近接も十分こなせる。
一旦ゲームからログアウトした俺は、冷蔵庫に冷やしてあったエナジードリンクを取り出し、口をつける。
大学にはこの実家から通っているが、今はこの自宅に一人で住んでいる。
両親は俺が19歳の時、2人揃って交通事故で他界してしまった。
両親の残してくれた財産と保険金によって、現在の俺は、気ままな大学生活を送らせてもらっているわけだ。
現在の時刻は23時15分、何とか今夜中には、ここ3か月掛けて制作してきた超大型建築が完成できそうだな。
エナジードリンクを飲み干した俺は、自室に戻りゲームを再開する。
「ティア、戻った。進捗はどうだ?」
メニューアイコンを開き、操作用のタクティカルボードを操作しながら、建築に必要なブロックの生成状況を確認した。
「城壁に必要なブロック数は作業台にて生成済みなので、いつでもアツシのストレージに移動可能です。」
俺は自分のストレージの空枠を確認して、十分な空きがあったので、城壁用のブロック200個を受け取った。
「よし、これでラストだ。」
最後の城壁ブロックを積み上げて、構想6か月、作業日程3か月の大事業を完成させた。
高さ10m(10ブロック)東西南北1.5km(1500ブロック)の正方形の城壁に囲まれた、ファンタジー風の城塞都市がようやく完成した。
完成した街並みを見渡しながら、俺はティアに向かって今の気持ちを話していた。
「いつかこんな街に住んでみたいな。この城塞都市は俺の理想かもしれない。」
無邪気にそんなことを言ってしまったが、ティアは笑顔で答えてくれた。
「そうですね、いつか・・・この街に住めるといいですね。」
しばらく完成した感慨にふけっていると、ティアから街名前登録を催促された。
「アツシ、お疲れ様です。完成した建造物のデータを登録するので、構造物の名前の入力をお願いします。」
建設前から決めていたこの城塞都市の名前をタクティカルボードに入力。
【城塞都市 アイネスブルグ】
「城塞都市 アイネスブルグ 登録完了」
「さてと、建築も一段落したし、そろそろα28のアップデートもありそうだから、久しぶりに素材集めに行ってきますか。」
噂話のレベルだが、ネット内では、近く大型アップデートがあるらしいという話が上がっていた。
「ティア、クリエイティブモードから一旦ログアウト後、ガレージの戻って、装備を整えたら、一狩り行こうぜ。」
「了解です。現在のフィールドMOD構成はファンタジーMODになっていますが、このままでよろしいですか?」
MODには世界観に反映するフィールドMODと、所持品、乗り物やスキルといった身の回りに反映するアクティブMODがあり、俺は、通常のゲームモードの世界観は中世ファンタジーに設定している。
ガレージとは、プレーヤーの拠点となるベースキャンプであり、様々な乗り物や装備を管理、修復、購入するスペースであり、手に入れたアイテムをゲーム内通貨に変換できる場でもある。
ガレージ内で、現在のラフな格好から、予め登録済してある装備一覧から、お気に入りの都市迷彩柄のフィールドジャケット、タクティカルベスト、タクティカルパンツ、タクティカルブーツ。タクティカルグローブを装備して、ライフルマグポーチなどの屋外装備1を選択して、一瞬で装備を変更する。
「WARS」では全身を覆う強化パワードスーツをインナーとして装備しているため、プレーヤーのレベルアップとともに、超人的な筋力と防御力を得られている。
この【ドレス】と呼ばれるパワードスーツには、装備レベルが設定されており、プレーヤーはこの【ドレス】をレベルアップとともに更新していくことで、攻撃力や、体力、素早さなどのフィジカルな部分の補正のほかに、オブジェクトの破壊ボーナスや、ストレージ容量を増やすシステムが導入されている。
もちろんレベルアップにより素の状態でも、肉体面のステータスは向上されているが、【ドレス】の修正値はかなり大きい。
【ドレス】には、同レベルでも、いくつかカテゴリーが存在し、それを各プレーヤーは職業のように使い分けて、ロールプレイを楽しんでいる。
その【ドレス】上から、各プレーヤーは「オーバーレイ」と呼ばれるオシャレ機能を駆使してキャラクターの個性を出している。
今俺が着ている都市迷彩柄のフィールドジャケットも【オーバーレイ】による装備だ。
極端な話、フルプレートの鎧と水着を比較しても、装甲の厚さ(防御力)で言えば一緒なのである。
武器は、弾数重視で、FNP90をメインウェポンとして選択、サブウェポンに同じ5.7×28mm弾を使用するFN Five-seveNを選択。P90にはサイレンサーを取り付けて、スリングで吊るす。
回復用アイテムと、予備のマガジンも準備して、それぞれマグポーチや専用のポーチにしまっていく。
ティアも同様の装備と、メインウエポンにアサルトライフルのHK416を選択し、サブウェポンとしてベレッタM93Rを装備していく。
「WARS」では、個人のストレージとして、アイテムをそれなり数所持できるが、ストレージ内の出し入れには、タクティカルボードを操作する必要があり、戦闘中に咄嗟に出し入れできる仕様にはなっていない。
そのため、弾薬や回復アイテムは、実際に身に着けておくか、サブストレージと呼ばれるポケットにしまっておく必要がある。
そのため、戦闘が予想される状況では、マガジンポーチなどの収納ができる装備を身に着けるのが主流となっている。
なによりも俺自身が、その方が格好良いと思っているからだ。
装備の確認を終えた俺達は、ガレージのドアを開けて外へ出た。
突然のビープ音とともに目の前が真っ赤に染まり、表示されるエラーメッセージ
=プログラムエラー=
=エラーNo.296$#%$%$##”=
=プレーヤーキャラの座標位置ロスト=
=ゲームのバージョンが異なるため、いくつかのプログラムの実行をキャンセルします=
エラーメッセージが消え、目の前の風景がようやく見えた。
「ここはどこだ?」
俺の目の前にあったのは、本来ガレージの入り口が設定されている商業都市の一軒家の庭先ではなく、鬱蒼とした森だった。
初投稿のため、至らない点や、読みづらい点も多々あると思います。
様々なご意見をいただければと思います。
宜しくお願いいたします。