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5話 僕、女子になる②

「?」


 そこにはこれまた見慣れない赤茶色の鞄がぽつりと草の上に無造作に置かれていた。


小ぶりで、長い紐がついている。肩から下げて使うのだろう。


「――あ!」


(もしかしてこの女の子の持ち物かな)


 何か手がかりがあるかもしれない。僕は早速鞄の中身を確かめることにした。地面にしゃがみ込んで鞄を開く。

 

「えっと……」


 中には、小物入れのようなものと、四角い不思議な黒い物体、そして動物の革をなめして作られた入れ物に、ぴったりと収められた小剣が入っていた。


(良かった……武器がある)


 僕はまず小剣を手に取る。また魔物が襲いかかってくるかもしれない。これは持ち歩いていたほうがよさそうだ。


(この小物入れは……)


 こちらも皮でできた黒色の小物入れを確かめる。表面には何やら不思議な模様が細かく刻まれていた。


二つ折りになっていて、どうやら財布のようだ。開くとやはり紙幣のようなものが入っていた。別のポケットには硬貨も収められている。

 


(それから――これは何だろう?)


 僕は財布を元に戻すと、四角い物体を取り上げた。 


「??」


 触れると固い。金属で出来ているのだろうか。表面には薄いガラスが貼ってあるようにも見えた。


「鏡……じゃないよね?」


 ガラスの面には顔を映すことができる。が、鏡ほど鮮明には映らない。


(うーん、よくわからない……)


 害があるものではなさそうなので、僕はとりあえずその物体を鞄に戻した。


(この荷物、きっとこの女の子のだよね)


 辺りに人気はない。とすればこの荷物は恐らく、僕が体を借りている、この女の子の持ち物だろう。


(持っておこうか……)


 いずれ体が元に戻ったときに、この荷物がないと彼女が困るかもしれない。僕は鞄を肩にかけようと紐に手をかけた。


 その時だった。



「キャアアアア!!」



 耳をつんざくような悲鳴が辺りに響く。



「!!」


 僕は慌てて立ち上がる。鞘から剣を引き抜いて構え、悲鳴のした方向を振り返る。


(誰!?)


 ガサガサと草を掻き分けて人が走っているような音がした。こっちへ向かっている。


(来る!)


 木の間、草の影から一人の女の子が飛び出してきた。悲鳴の主だろう。


 女の子は懸命に走って何かから逃げているようだった。足がもつれてよろめく。


 彼女が倒れ込んだ瞬間、草の影から今度は毛むくじゃらの物体が現れた。


「魔物!!」


ずんぐりむっくりとした、見たこともない魔物だ。


(何だあれ――)


 図体こそさほど大きくはないが、魔物はひどく興奮していて、今にも女の子に襲いかかろうとしていた。悠長にしている暇はない。


(助けなきゃ!)


 あの女の子を助けられるのは自分しかいない。そう思ったら自然と体が動いていた。


 僕は剣を構えて魔物に向かう。


「おい!こっちだ!」


 僕の声に魔物が反応する。魔物の視線が女の子から僕へと移った。


(ラルフルに似ている!これなら僕でも倒せる!)


 その魔物の姿は、よく森で訓練がてら討伐しているラルフルという魔物に似ていた。


 魔物は低く構え、僕に向かって突進する。鋭い爪が襲いかかる。


(爪と牙で攻撃してくるけど……)


 僕はその攻撃をかわす。続く牙の攻撃もいなした。


(振りが大きいから隙ができる!)


 攻撃をかわされた魔物は、勢い余って前につんのめる。その隙に僕は魔物の背中へ回り込んだ。


(ここだ!)


「はあッ」


 僕は剣を魔物の首筋に思いっ切り突き立てた。分厚い肉の感触が手に伝わる。


(やったか?!)


 ラルフルの亜種ならここが急所のはずだ。


 思惑通り、魔物は力を失いその場に崩れ落ちた。


「よし!」


 やった!僕はぐっと拳を握ってポーズを決める。訓練の成果だ。


(そうだ、女の子は――)


 僕は振り返り、女の子に駆け寄った。彼女は地面にへたり込んだまま、目を見開いている。







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