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12話 異世界の日常①



「ルイー!起きてー」


 遠くで、声がする。


「……」


 閉じたまぶたの向こうから、朝の光が差し込んだ。誰かがカーテンを開けたみたいだ。


「朝だよ~」


 母さんだ。母さんは家族の誰よりも早起きで、朝食の支度を終えてからいつも僕を起こしてくれる。


「うう……母さん、まだ眠いよ――」


「――え?」


「はっ!!」


 僕はガバッと布団から飛び起きる。


 目を開けて飛び込んできたのは、僕の部屋の風景ではない。ここはどこだ?


(ここは、美波の家だった!)


 完全に寝ぼけていた。僕は美波の家の客間で寝泊まりしていたんだった。もちろん、ここに母さんはいない。


 ということは。


(あわわわわわ……)


「ルイ?私だよ。美波だよ」


 そこには、心配そうに僕の顔を覗き込む美少女がいた。薄い茶色の瞳に長い睫が節目がちにかかる。


「ごご、ごめん」


(恥ずかしーーーー!!)


 14にもなるのに、まだ母さんに起こしてもらってるって事、ばれた……よね……。


 言い訳を、ごく自然な言い訳を考えなくては!


 僕は起き抜けの頭をフル回転させて言い訳を考える。


「あ、あの、母さんの夢を見てて、それで夢と現実がごっちゃになっちゃったんだ」


(ってそれもやばいよーーー!)


 母さんを夢に見るなんて、小さい子供じゃあるまいし!


(マザコンって思われちゃうーーー!)


 



「ルイ……」


「え……」


 ふわり、と良い匂いが僕の鼻をくすぐる。と同時に暖かくて柔らかい美波の体が僕を包んだ。


「寂しいんだね」


 よしよし、と美波は僕の頭を撫でる。


「大丈夫。私がいるよ」


「……」


「だから心配しないで」


 ぎゅ、と美波は僕を抱き締めた。




 これは、なんというか。


 どうやら美波は僕が寂しさから母を欲していると勘違いをしているようだ。


(そういう訳じゃないんだけど……)


 ――すごく、ラッキーだ!!!


(うう、美波……。いい匂い……。幸せだ……)


 僕は少しの罪悪感にさいなまれながらも、美波のぬくもりを心行くまで堪能したのだった。











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