84.王宮にて”白の宮殿”の就任式を受ける。
花子は朝からめーいっぱいムツキとキサラギに頭の上から足の先まで丹念に洗われ、次にはパン生地のようにこねくり回され、最後はなぜか銀で出来た鎖帷子を巻き付けられてから真っ白いドレスを着せられた。
なぜにドレスの下に鎖帷子?
花子が疑問符を飛ばしている間にムツキとキサラギが準備が出来ましたと部屋の外に声を掛けるとすぐにおばあ様がセバスと一緒に部屋に入ってきた。
「まあ。よく似合っているわ花子さん。セバス!」
「こちらを」
セバスがうやうやしく銀色で縁取られたどでかい透明な宝石がズラリと輝いた首飾りを花子前に差し出した。
「これは今までの”白の宮殿”の継承者が代々受け継いできたものなのよ。ですからこれをつけて今日の継承式に臨みなさい。」
ムツキがすぐにセバスからその首飾りを受け取ると花子の首にそれをつけた。
瞬間、首飾りがまばゆい光に染まっていままで透明だった宝石が黒くなって黒光りしていた。
「「「すごい!!!」」」
「セバス、見ましたか。」
「はい、もちろんでございます。」
おばあ様とセバスが満面の笑みで花子を見ている。
「「さすが花子様です。」」
「初代以外の方で始めてでございます。花子様。」
「えっと何が始めてなんでしょうか?」
「それはもちろんこの魔法石が魔力でいっぱいになったことでございます。」
「魔法石なのこれ?デカすぎない。」
花子が首元を飾っている宝石に思わず触れるとバカでかい魔法石はキラキラと輝き出した。
「この目でこの首飾りが魔力で光り輝くのを見ることができようとは・・・感無量です。」
全員がセバスのつぶやきに同意しているとフィーアが現れ、フレッドが到着したと教えてくれた。
「さあ、行きましょうか。」
「はい、おばあ様。」
花子は迎えにきたフレッドに会うために部屋を出た。
フレッドは花子の祖母であり”白の宮殿”の現当主であるマリアから送られた式典用の黒の礼服を身に着けて、右手には昨日実家に戻って両親に書いてもらった婿養子としてルービック家に入ることを了承する書類を持って、伝統通りに一時間前から玄関先で待っていた。
待っている間、フレッドは昨日の両親の喜びようと実兄の変わり身の速さを思い出していた。
フレッドが書類を出して花子の婿になることを告げるとそれを盗み聞きしていた両親、今まで散々ルービック家に勤めたことで悪態をついたり妨害工作をしていた長兄すら手を返したような表情になり、最後は全員から実家の門を出るまで褒めちぎられ万歳三唱で見送られた。
何がどうなっているのか褒められすぎで薄気味悪ささえ感じたが肝心の書類に了承を得られたので深く考えないことにした。
「フレッド。待たせましたね。」
フレッドがぼおっと考え事をしていると彼の前に着飾った花子が彼女の祖母と一緒に現れた。
一瞬見ほれ、すぐに我に返ると伝統通りに婿養子に入る書類を彼女の祖母であり、”白の宮殿”の現当主であるマリア”に渡すとそれと引き換えにフレッドの手にこの宮殿に入ることを許可する銀のカードが渡された。
フレッドが渡されたカードを受け取るとそれはスッと彼の手の中に消えて、右手首にルービック家の家紋が輪を描くようにグルッと浮き上がると白く刻まれた。
フレッドはルービック家の家紋が刻まれた右手を花子に差し出した。
「花子さま。」
笑顔で差し出されたフレッドの右手を花子は戸惑いながらもその手に自分の手を重ねた。
「フレッド。これからも花子のことをよろしくお願いしますね。」
二人の繋がれた両手を見た嬉しそうな祖母マリアの声に真っ赤な顔をした花子がボソッと呟いた。
「えっ・・・えっと今日はエスコートをよろしく。」
「畏まりました。」
フレッドは重ねられた花子の手を引いてそのまま馬車まで先導した。
本日は伝統に乗っ取り白い馬が引く馬車で王城に向かう。
ムツキが馬車の扉を押さえ、キサラギが手前で笑顔で待っていた。
最初に祖母マリアが乗り込み次に花子がフレッドに手を支えてもらいながら馬車に乗り込んだ。
フレッドも二人が乗り込んだ後に馬車の扉を閉めながら花子の隣に座った。
「花子様。出発します。」
御者席にキサラギとムツキ、後方にアインが座ると馬車全体をスッと花子の防御魔法が包み込んだ。
祖母マリアが包み込むように周囲に展開された防御魔法に笑みを浮かべ、後方ではアインがその分厚い防御魔法を見て、感嘆の表情を浮かべていた。




