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72.封印ではなく・・・

大海おおみ。」

 蒼褪めた表情のマリアが”開かずの間”に飛び込んだ。


 その後をひどく顔色を悪くしたフレッドの祖父であるミート館長が入ってくると彼は懐から黒い表紙の本を取り出して徐にそれを開いた。

 開かれた本から青い色をした文字が飛び出し”開かずの間”の中を渦を巻いてグルグルと飛び回るとまた開いた本に吸い込まれた。

 それが終わった後彼は大海おおみに回復薬を飲ませていたマリアに背後から声をかけた。

「あと処理はこちらでしますのですぐに彼女を運んでください。」

「頼んだわ。」

 マリアはそれだけ言うとセバスとツヴァイに大海おおみを病院に運ぶように指示を出すと王に礼をすることもなくそのまま”開かずの間”を飛び出して行った。


「おい。結局封印はどうなったんだ。」

 いらだった王がミート館長を怒鳴りつけた。

「封印は出来ておりません。」


「な・・・なんだと!」

 王は憤怒の表情で彼を睨み付けた。

 その王の激怒を気にせずに彼は言葉を続けた。

「これは封印ではなく浄化です。」

「はあぁ・・・じょ・・・浄化だと!」

「はい。ですから王宮でもう人が消えるということは起こらなくなります。」

 なんとも無機質な声でそう告げる。


「お前は・・・相変わらず素直ではないのだな。」

 王はミート館長を憐れむような表情で見た後、”ミート館長にあとは任せる”と告げると近衛を引き連れてその部屋を出て行った。


大海おおみ・・・。」

 ”開かずの間”に残されたミート館長は両手で黒い表紙の本を握りしめながら小さく呟いた。



 そのころ”開かずの間”から運ばれた大海おおみはこの間出てきたばかりの病院に再度運びこまれた。

 花子はなこは今回もセバスやマリアに一旦別室で休むように言われたが頑としてその場を離れるのを拒んだ。

 結局今日の封印を行った関係者は緊急治療が行われている病室の扉の前でずっと待っていた。

 治療が行われている部屋にはそれこそ何度も治療薬を持った人間が出たり入ったりしていた。


 しかし彼らの努力は今回はまったく実を結ぶことはなかった。



 数時間後。


「・・・。」

 治療師たちは無言で病室の扉を開くと扉前で待機していた彼らを病室に入れた。


 花子はなこが先陣を切ってその部屋に飛び込んだ。

「お・・・・・・な・・・なん・・・。」

 花子はなこはベッドの上で氷のように冷たくなっている大海おおみの傍まで来るがどうしたらいいかわからずそのままそこに頽れた。


花子はなこ様。」


 その花子はなこの背後にムツキとキサラギが近づくと彼女の肩にそっと手を置いて励ました。

「「大海おおみ様。」」

 花子はなこを励ましながらもムツキとキサラギの目からは止めどなく涙がこぼれていた。



「一体あなたたちはなにをしていたの。」

 背後ではマリアの怒鳴り声が治療師のリーダーである初老の男にぶつけられた。

「お言葉ですが砂漠に水を満たすことは不可能です。」

「どういう意味なの?」

「こちらに運ばれた時には生命エネルギーがほぼゼロの状態でした。逆に何の魔法を使ったかお聞きしたいくらいです。」

「生命エネルギーがゼロですって・・・大海おおみ・・・あなたはなんてことを・・・。」

 マリアは絶句してその場に立ち尽くした。


 フィーアは珍しく我を忘れて立ち尽くしているセバスの肩に手を置いて何かを呟いた後にすぐに病室を出た。


 日ノ本にいるブラン様にこのことを一刻も早く知らせなくては。

 フィーアは病院を出ると高速通信が出来る”白の宮殿”に向かった。

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