71.祝福
「花子。」
大海の声に我に返ったフレッドが彼女の前にでると八百万神社でもらった彼の祖父曰く”破邪の剣”でその奇怪な生き物を斬った。
奇怪な生き物は一瞬躊躇するがすぐにフレッドに襲い掛かろうとしたが今度は花子が後方から放った封印の札で動きを封じられた。
「いまです。その剣で斬りなさい。」
大海の声にフレッドはもう一度剣を振り下ろした。
奇怪な生き物は真っ赤な血しぶきを上げることもなく先ほどと同じように斬られた個所から泥のように形が崩れて床に広がった。
大海は懐から札を取り出すと床に広がった泥にそれを近づけた。
泥はその札を避けるように広がって逃げようとしていた。
それを見た花子が吸引と書かれた札を四方に置くと泥を一か所に固めた。
「上出来よ。」
大海満面の笑みで先ほど出した”封印”と書かれた札を花子が固めた塊の上に貼り付けた。
塊はフルフルと揺れてから徐々に小さくなっていった。
全員が終わったとそう考えた。
それが油断につながったのか。
塊は小さくなって消える瞬間に針金のように細く伸びると一番近くにいた大海の胸めがけてその細い針金を伸ばした。
大海の心臓を塊が変化した細い針金が貫いた。
大海は左手でその針金を包み込むようにすると飛び散った自分の血で空間に文字を描いた。
傍にいた花子にはその文字が祝福という意味を持つことがなぜか理解できた。
祝福と大海が空間に描いた文字は細い針金に絡みつくとそれは淡い光を発して消えていった。
「お祖母さま!」
花子が頽れていく大海に駆け寄った。
大海は花子に視線を向けて力なく微笑むとそのまま目を閉じた。
「うそ!な・・・なん・・・な・・・なんでぇー・・・!」
花子の絶唱が”開かずの間”に響き渡った。




