54.敗者復活の三位決定戦と間抜けな男
フレッドは我に返って重い足取りで控室に戻ると折れた長剣を床に叩きつけた。
カランカランカラン
長剣は音を立てて床を滑って行った。
「あっぶなーい。もうなんてことするのフレッド。せっかくフレッシュ長兄さんがくれた剣なのに。」
ミイは床に投げ捨てられた長剣を見ながらため息をついた。
「ミイ。いい加減俺のロッカーから持ち出したものを返せ!」
「何よ。その言い方。フレッシュ長兄さんがせっかく送ってくれた長剣なのにそんなに粗末に扱うなんて。」
ミイはそういうなりバンと箱をフレッドに投げつけた。
フレッドはそれを受け止めると箱のふたを開けて中から八百万神社で花子の実母から貰った剣を手に持つとまだブツクサ喚いているミイをその場に残して控室の扉をバンと力任せに閉めると次の試合が始まる会場に向かった。
それにしてもなんであのドケチ長兄があの長剣をミイに渡して寄こしたんだ。
おかげで今の試合で剣がフレッドの力に耐え切れずに折れたことで勝てた試合なのにその勝ちを落としてしまった。
今持っている剣ならあんなことにはならなかったのに・・・。
まったく腹の立つことだ。
フレッドはブツクサ文句を言いながらもすぐに会場に到着すると同じようにその会場では先ほど花子に負けた選手が待っていた。
取り合えずこれに勝てれば卒業に必要な単位は取得出来る。
それにこの剣さえあれば先ほどのように折れることはない。
フレッドの思惑通り今度は剣が折れることもなく三位決定戦は早々と決着がついた。
勝者フレッド!
フレッドはあっさり相手を負かすと二試合とも短時間で負けて項垂れる相手を試合会場に放置して控室に向かった。
戻る途中にカイトの異父兄であるミッシェルに声を掛けられた。
「今日は残念だったね。」
「・・・。」
「そうそう。フレッシュは元気かい。こっちに来たときはぜひ声をかけてくれてと伝えてくれ。」
ミッシェルは無言で何も言わないフレッドを無視してそれだけ言うとどこかで見たことがあるメイド服を着た侍女を引き連れて去っていった。
くそっ。
なんで気が付かなかったんだ。
ミイは今南条家でメイドをしている。
そのミイが長兄に頼まれて長剣を持ってきた時点で気がつかなかったなんて・・・。
間違いなく長兄に謀られたが気が付かなかった間抜けは自分だ。
だがまさかあんな罠を実弟に普通するか?
いやあの長兄ならする。
あいつはやたら空気を読むのが上手い。
それに危ない橋は絶対に渡らない男だ。
くそっだが今更気が付いてももう遅い。
フレッドは誰もいない廊下の壁に背を預けてズルズルとしゃがみ込むと剣を抱えたままめいいっぱい落ち込んだ。




