40.トーナメント開始。
花子が焦って大学対抗戦のことを聞いてみるとなんと自分が出る第二ブロックの試合は日ノ本で行われることになっていて、なおかつこの季節はよく海が荒れるそうで開始は第一ブロックの試合が開始されてから五日後に始まることに決定したと聞かされた。
おかげで花子はあれから四回もお祖母様から”書ノ道”という修行を受けた。
結果、確かにほんのちょっとは正座の訓練になったかも知れないが成果はほんのちゃっとだ。
花子にとっては蔵にあった本を読み漁れたことの方が重要だった。
それにしても今日の第一試合は大丈夫だろうか。
花子は試合会場に立ちながら思わず周囲を見回した。
そこは何もない海辺の砂浜を所々にたっている魔法結界でグルッと囲っただけの会場だった。
海辺の反対側は山になっていて観客はその山の頂上で試合を観覧することになっていて会場にはこの試合に出場する選手だけがそこにいた。
選手たちはそれぞれのパートナーと控え室で待っていた。
花子はというと結局ここに来たのが当日になってしまい。
パートナーとして顔を合わせるのは今日が初めての上その初めての相手とこれから組んで戦うことになっていた。
それよりももっと気になるのは一緒に戦う相手がまったく花子のことを見ようとしないことだった。
花子が少しでも目を合わせて話そうとするとフイっと視線をそらされるのだ。
それどころか一緒に頑張りましょうと声を掛ければ気にしないで好きに動いていいよと突き放したような感じで言われてしまった。
どうやら花子はとてつもなく嫌われているようだ。
花子がその結論に達した時にやっと試合開始の合図が鳴り響いた。
今回の対戦相手は水魔法が得意な海洋国の代表だった。
当然試合開始後すぐに海水を使った水魔法が二人に襲いかかった。
花子はそれを相手と寸分たがわず同じだけの威力を込めた水魔法で相殺した。
相手が息を呑んで動きが止まった一瞬に背後にいた花子のパートナーが飛び出すと相手選手を無力化し開始数分で花子たちは勝利を手にしていた。
それを山の頂上で観戦していた観客たちは呆気に取られて見ていた。
花子たちは第一試合終了後もお互いのパートナーと話すことなく次の試合が始まった。
次の試合は火山がたくさんある国の代表選手が対戦相手だった。
彼らも先程と同じように海岸の下に眠っていたマグマを使った火魔法を花子たちに放った。
花子は先程と同じように同じ威力の火魔法でそれを相殺する。
すると今度は相手も先程の試合で学んだのだろう。
相殺された魔法が消えた直後に彼らの前にはすでに魔法障壁が作られていた。
しかしそれは飛び出した花子のパートナーに障壁ごと砕かれ、そのまま対戦相手は剣を持ったフレッドに無力化された。
その後の第三・第四の試合も魔法は違えども同じような展開で花子たちは決勝まで駒を進めた。
第二ブロック決勝戦は公平を期すため明日開始されることになった。
花子は控え室に戻ると今回のパートナーを務めてくれたフレッドにお辞儀をして”ありがとうございます。”とお礼を言った。
フレッドはビックリした表情の後すぐに笑顔で手を差し出した。
「こちらこそ助かったよ。明日もよろしく!」
「こちらこそ。よろしくお願いいたします。」
花子も笑顔でフレッドの手を握るとそこにノックもなしに実父が背後のドアを開けて控え室に入って来た。
その瞬間フレッドがビクリと肩を震わすとすぐに差し出した手を引いた。
あれ?
花子が疑問におもう間もなくフレッドは青醒めた表情を浮かべると挨拶もそこそこに控え室を出て行ってしまった。
花子は離された手を所在なさげに引っ込めると背後にいる実父に促されて控え室を出た。




