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39.僕の不幸はまだまだ続く。

 フレッドはツヴァイに当身を喰らわされ目が覚めると見知らぬ船倉に押し込められていた。

 それにしても一体なんで自分はこんなことになっているのだろうか。

 大貴族から優勝を奪った逆恨みならわかるがまったく関係のない貴族に仕えているツヴァイになんであそこで鳩尾に当身を喰らわされる必要があったんだ。

 先程の年配の女性が話していることが真実なら別に会う場所が違うと説明をしてくれるだけでいいはずなんだけど・・・。

 あと考えられることはここに閉じ込めて相手チームの不戦勝にすることぐらいだがそれにしても・・・。


 ガタガタガタガタ

 ガタガタガタガタ


 さっきからなんとも酷い振れが起こっていてフレッドは考え事を止めると立っているのがやっとだというほどの揺れに諦めて床に座り込んだ。

 基本的にこれくらいの揺れなら体調がどうこうなるものではないはずだが自分がこれからどうなるのか分からない不安定な精神状態なのが加わっていつもの自分とは違ってだんだんとイライラした気持ちが膨れ上がってきた。

 最初はおとなしく状況を静観するつもりでいたが無茶なことをしてもこの船倉から出ようと決心した時、いきなり酷い揺れがピタリと収まり頭上にある板の一部が開いて明るい光が差し込んで来た。

 なにがどうなっているんだと思っていたら今度は縄梯子が垂らされた。

 フレッドは頭上を見てから周囲を見、結局諦めて縄梯子を掴むとそれを登って船倉を出た。


 まぶしい。


 目の前に手を翳して目が慣れるのを待った。

 少し時間がかかったが周囲の景色が見えて来た。

 そこは海の上ではなくいつの間にか洞窟のような場所に変わっていた。

 フレッドはそこにある船着き場に着けられた船の甲板に立っていた。

 そして先程から眩しいと思っていた光は船を垂らす照明だった。

 船着き場に降りて唖然としながらそこに突っ立っているとフレッドをここに案内した白髪の年配女性が洞窟内から延々と続く階段に向かいながら彼にもその階段を登るように言うと振り向かずに先に登って行ってしまった。


 これを登るのか?


 結構な高さがある階段を見上げながらも他には何処かに出られそうな場所がない状況にフレッドも諦めて延々と続く階段を登り始めた。

 結構きつい。


 先を歩く年配の女性は淡々と前を歩いて行く。

 フレッドも曲がりなりにも魔法騎士科とは言え、普通の騎士と変わらない訓練をしているはずだがなんでか前を歩く年配の女性との距離は縮まらなかった。


 なんとか距離を縮めようと力の限り速度を速めてみたが距離が変わらないまま、たぶん出口だろう箇所についた。

 出口と思われる空間から眩しい光が溢れていた。

 フレッドはその空間に年配の女性に続いて足を踏み入れた。

 その空間に入るとそこからは狭い山道が続いていた。

 人一人がやっと通れるくらいの細い道が山の上まで繋がっていた。

 片側は絶壁で油断をするととんでもないことになりそうだ。


 そんな道を先程の年配の女性はスイスイと登っていく。

 フレッドも下を見ないようにして彼女に続いた。


 そこから一時間くらいすると朱塗りの鳥居が見えて来た。

 年配の女性がその鳥居を潜ったのでフレッドもあとに続いた。


 潜った先には白髪の老人が立っていた。

 白髪の老人はジロジロとフレッドを見てから嫌そうな顔で一言呟いた。

「女にも追いつけないような奴が相手か。」


 フレッドがその老人の嫌味に何か言い返そうと口を開いた時、鳥居の先に見えた木々の間から見たこともない洋服に身を包んだ同じような白髪の女性が手に飲み物を持って現れた。

「さあ、喉が渇いたでしょ。これを三回に分けてお飲みなさい。」

 そう言って緑色の液体が入ったカップをフレッドは渡された。

 いつもならこんな得体の知れない飲み物など決して口にしないのになんでかこの時は素直に頷いて言われた通り、三回に分けてその飲み物を飲み干した。


 コク、コク、ゴックン。


 緑色の液体が喉を通って体中に行き渡っていく。

 その瞬間。

 今まで物凄く重かった体からその重さが消えてなくなった。


「すごい。」


「大分体が楽になったでしょ。」

「はい。」

「じゃ訓練はこちらで行うわ。」

 訓練?

 良くわからないままお茶をくれた女性について道場らしき建物に入るとそこにはフレッドがよく知っている人物がいた。


 ブラン=ルービック

 なんでこの人がここにいるんだ?


「じゃあ始めようか。」

 フレッドはそれから本選が開始されるまでの四日間。

 地獄の特訓を味わった。


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