34.大学対抗魔法戦出場!
花子が応接間から台所に向かう途中、実父の秘書をしているアインに出くわした。
「どうされました花子様?」
「えっ・・・と気分転換にお茶でも飲もうと思ったんだけど・・・。」
花子はチラッと応接間の方を見てからなんとも気まずくなって口を噤んだ。
すぐに花子が何に出くわしたのかを察したアインが彼女を台所ではなく逆側にあるサロンに案内した。
「ここは?」
そこには名前が全くわからないたくさんのきれいな花が咲いていて前世で言う温室のようなところだった。
「魔法薬の材料を栽培している温室です。ここからの眺めは素晴らしいですからこちらでお待ち下さい。」
アインはそういうと温室の奥にあった白い椅子の前に花子を案内した。
「ではすぐにこちらにお茶をお持ちします。」
アインはそう言ってそこから離れようとして扉の前でいくと思い出したようにクルリと振り向くと花子に声をかけてきた。
「一応、こちらにあります植物の中には猛毒となるものもございますのでくれぐれも素手でお障りになりませんようお願いします。」
花子はアインの言葉に素直に頷いた。
花子は温室を去っていったアインを見送るとテーブルの上に突っ伏して顔を横にすると窓外と手前に見えるきれいな花々を見ながらぼんやり単位取得について考えていた。
「花子様。」
「はい!」
花子はテーブルからガバッと顔を上げると声がした方を振り向いた。
どうやらぼんやりしすぎてアインが入って来たことに気づいていなかったようだ。
「どうぞ。」
アインはそういうととても良い香りのするお茶と生クリームがたっぷりのったケーキを今まで花子が突っ伏していたテーブルに置いてくれた。
「いただきます。」
花子は変なところ見られてしまいなんとも恥ずかしかったが何も言われなかったので赤い顔をしながらもケーキを口に運んだ。
うっまい。
甘すぎずそれでいって口の中で蕩けるその舌触りが最高だ。
良い香りのするお茶も砂糖を入れていないはずなのにほんのり甘くておいしい。
うーん、最高!
花子がケーキを一通り食べ終えお茶を飲んでいるとまだ傍にいたアインが何かが入った黒い箱をテーブルの上に置いた。
「花子様、遅くなりましたが先程大学から出場メンバー登録証が届きましたのでお持ちしました。」
「出場メンバー登録証?」
花子はテーブルに置かれた黒い箱を手に取るとその箱を開けた。
中には黒光りする腕輪と数枚の書類が入っていた。
その書類には大学対抗戦に関する詳細なルールとトーナメント表が記載されていた。
まずはルールだがこれは結構単純だった。
要約すると各大学二組ずつでの勝ち抜き戦だ。
ブロックは2ブロックあって花子は今回始めてなのでトータルで4回試合し、そのすべてに勝つ必要があるようだ。
でも優勝者には特典として”単位取得”に必要なポイントが加算されるとそこには太字で書かれていた。
「これって・・・。」
花子は書類から顔を上げるとアインを見た。
「はい。優勝すれば今回取れなかった単位の取得をすることが可能です。」
花子は満面の笑みを浮かべると入っていた黒光りする腕輪をすぐに右腕に着けた。




