31.アインの策謀
舞踏会から帰って来た翌日。
ブランは仕事が終わってから信子のリハビリについて行こうとしていたところに実母の来訪を受けた。
「ここにいたのね、ブラン。昨日の件は聞いたわ。何でホワイト伯爵令嬢を抱かなかったの?」
「はぁー。何の話をしているんですか?」
「あなたを昔から追いかけていた娘でしょ。一晩抱いてあげれば花子の単位は貰えたのよ。なんで拒絶したの。」
実母は社長室に入って来るなりいきなり執務をしていたブランに食って掛かった。
「あなたにそんなことを言われる筋合いはありません。」
「なんですって!大事なルービック家の跡取りの単位よ。」
「跡取りはブラウンです。花子じゃありません。」
「違うわ。ルービック家の当主がブランで”白の宮殿”の跡取りは花子よ。」
ブランの目が見開かれ思わず立ち上がると実母に掴み掛ろうとしたが彼女の傍にいたフィーアがそれを遮った。
「あなたは何をしたかわかっているんですか?」
傍にいたフィーアがブランを遮った。
「もう王家に書類は提出したわ。それに花子は私の孫よ。もう庶民じゃないわ。」
確かに実母の言うことは間違っていない。
間違っていないがまさか実母が花子を”白の宮殿”の跡取りすなわちルービック家の影の当主に指名するとは思っていなかった。
ブランはどうやら実母のことを甘く見ていたようだ。
「今さらこの件は覆らないわよ。」
二人の最悪な状況を見て執務室で仕事を手伝っていたアインが助け舟を出した。
「マリア様。花子様の単位なら心配ありません。大学対抗の魔法戦に出場なさいますので。」
「大学対抗の魔法戦ですって!本当なの。」
「はい。今年は幸運なことに5年に一度行われる五か国との魔法対抗戦がある年です。優勝すれば問題なく単位を獲得できるでしょう。」
「まあそうだったの。早く言いなさい。仕事の邪魔をしましたね。」
実母はすぐに部屋を出て行った。
ブランはアインを睨み付けた。
まだブランは大学対抗戦に出るための保護者の書類にサインをしていなかった。
「お前、謀ったな。」
ブランは机の上に置かれていた魔法戦に出場するための保護者の承諾書に渋々サインをするとアインに渡した。
アインはサインされた書類を受け取るとすぐにそれに魔力を乗せて大学に飛ばした。
ここで花子が魔法戦に出場することは確定された。
花子様、後はどうぞご存分に・・・。
まだ魔法戦出場を知らない花子は自宅で単位をどうしようと頭を抱えていた。