25.大学での魔法学
花子たちが会場を出るとすぐにセバスがどこからかスーと現れて二人を車まで案内するとすぐに家に向かってくれた。
その家に向こう車の中では異母兄が笑い声交じりに新入生歓迎会での出来事をセバスに語っていた。
「そうですか。さすが花子様です。あのキンソン家の令嬢をまたもやり込めるなど素晴らしい。」
「そうだろう。さすが私の異母妹だよ。」
異母兄が会場で起こった事件の様子を話し終えるとちょうど車がビルの中に入った。
建物に入って所定の位置に車が着いた瞬間に極彩色の光に照らされ、その後はエレベーターのような浮力感を感じると景色が変わって専用駐車場に停車していた。
「本日はお疲れ様でした。」
セバスが二人に声を掛けて外に出るとドアを開いた。
「花子。今日は疲れただろ。」
異母兄はそっと花子の手を取ると車から連れ出してくれた。
「あ・・・ありがとうございます。お異母兄様」
「き・・プッ・・・気に・・・しなくっていいよ・・・クックックッ。」
なんでか未だに今日のことを思い出しては笑っているようだ。
そんなに面白いことがあっただろうか。
今だに笑っている異母兄の気持ちが花子には理解出来なかった。
首を傾げる花子の手を引いて異母兄が扉を開けるとそこにはブランが待っていた。
「お帰り花子。本当に今日は花子と一緒に行けなくてとても残念だったよ。」
ブランはそういうと扉を入って来た花子をギュッと抱きしめた。
思いがけないブランの態度に花子は戸惑った。
この年齢で親に抱き付かれるとかあるものなの?
「それにしてもその衣装は花子に似合っていてとても素晴らしいなぁ。ああこんなに素敵な花子と一緒に行けなかったなんてやっぱり残念だ。」
なかなか花子を離してくれない実父にセバスが気を利かして声を掛けてくれた。
「ブラン様。花子様もお疲れですからお話は後になさってください。」
「そうだったね。ごめんよ花子。あちらに夕食の用意をしていたんだ。さあ行こう。」
花子はその後、実母も交えて四人で夕食を済ますとそのまま部屋に戻ってシャワーを浴びるとベッドにダイブした。
パッフン。
ぼふっ。
ふかふかのベッドで花子はすぐに爆睡した。
花子。
花子。
花子。
花子は思いっきり肩を揺さぶられ、慌ててフカフカベッドから起き上がると目の前には両手を腰に置いた実母が立っていた。
「いつまで寝てるつもりなの花子。今日から大学で講義があるでしょ。早く食事して大学に向かわないと間に合わなくなるわよ。ブランはもうとっくに出かけたわよ。」
へっ大学の講義?
えっとなに?
「ほら早く洋服を着て食事しなさい。」
花子は疑問符を浮かべながらも実母から渡された洋服に着替えると用意された食事をして車に乗り込んだ。
そこにはよく見知った雰囲気を纏った女性二人が花子を囲むように両脇に座った。
「「おはようございます。花子様。」」
「はい!おはようございます。」
えっと誰だったか?
うーん、ここまで出かかっているけど思い出せない。
花子は視線を二人に向けどう話を切り出そうか悩んだ。
そんな花子の様子に気がついた二人の方から先に挨拶して来た。
「私が今後花子様の護衛につきますムツキと申します。」
花子の右隣に座った白銀の髪色の細身の女性が挨拶してきた。
「私がキサラギです。」
今度は左隣に座っていたこちらも同じような白銀の髪色をした細身の背の低い女性が同じように挨拶して来た。
「「よろしくお願いします。」」
二人は同時に花子にお辞儀をした。
「護衛?」
無意識に前世と同じように挨拶を返しながら何で大学に行くのに護衛が必要なんだと思わず声に出して呟いた。
「花子様。セキュリティがいくらしっかりしていようとあそこは一般庶民も講義を受けているんです。」
なんで一般庶民がいるのが問題なの?
「彼らは時に敵対する貴族に唆されて襲ってくる時があるんです。」
「はぁー。」
襲って来るっていわれてもねぇー。
「なんでまた私を襲う意味があるか分からないんですけど?」
「い・い・ですか花子様。花子様はAAAで高校を超短期間で卒業されたお方。それだけで相手が襲うには十分な理由になります。」
「そういうもんですか?」
「「はい、そうです。」」
なんでかその肯定の部分だけは二人は声を揃えて強調して来た。
「ですから花子様。構内でもし襲われた時はすぐに私たちを御呼びください。もし私たちが間に合わないと感じた時は躊躇なく相手を魔法で抹殺してください。」
「まっ抹殺っていくら何でもそれはちょっと・・・。」
「「問題なく私たちが後始末しますので何もご心配には及びません。」」
「はぁーわかりました。ではその時はそうします。」
いくら何でもそんなことはおきないと思った花子だが二人の剣幕に仕方なくそう返事をした。
それからすぐに車が大学構内に入ると花子は二人の護衛に付き添われて今日受ける予定の講義が行われる居室に向かった。
「えっとムツキさん。」
「ムツキで結構です。」
自分より年上の人を呼び捨てですか?
ムツキは笑顔で花子に呼び捨てるように圧力をかけてきた。
「うっ・・・む・・・ムツキ。今日はなんの講義があるんでしょうか?」
「一限目は魔法学、二限目が数学、三限目が歴史となっております。各教室には私かキサラギがご案内しますのご安心ください。」
どうやら教室を捜してあちこちウロウロしなくてもよさそうだ。
それはそれでラッキーか。
とは言えずっと護衛に張り付けかれているって普通なんだろうか?
思わず目を周囲にいる貴族らしい人物に向ければまったく護衛がいない人も結構いた。
「ねえムツキさ・・・じゃなかったムツキ。貴族でも護衛つけてない人も結構いるんじゃない。」
「すでにご結婚されている方々は確かにつけていません。あとはそうでね。男性の方は護衛を付けない方もおられます。」
「なるほどね。結婚してない女性はつけるってことね。」
「「はい。」」
二人は同時に頷いた。
そんなことを話しているうちに教室についたようで花子はそのまま教室に入るとそこには昨日花子に魔法を放ったキンソン家の令嬢がいた。
思わず目線が合ってものすごーく怖い目で睨まれた。
あれは別に私が悪いわけじゃない。
二人の視線が絡み合い爆発しそうになった寸前に運よく始業の鐘が鳴った。
教室に魔法学の先生が入って来てすぐに授業が始まった。
魔法学の授業の先生は結構面白く授業を進め、終始なんでか花子を指しては呪文をどのように行使しするべきかなどといきなり問いかけて来た。
花子の持論は魔法は想像力とその魔法を構成する成り立ちを理解することだと考えていると答えるとブラボーと大絶賛された。
魔法学の授業はなんでか花子を中心に勧められた。
お陰で授業が終わる頃にはキンソン家のリーナ嬢の表情は般若化していた。
その魔法学の授業が終わって教室を出ようすると花子の後ろから彼女の脅し文句が飛んだ。
「いい気にならないことね。」
いい気にはなっていないし今の授業で私が中心になったのは偶然で特別頼んだわけじゃない。
それは正真正銘の逆恨みです。
そう言いたかったが彼女の顔が怖すぎたので花子はそのまま退却した。
ちなみに教室を出るとムツキがリーナ嬢が四人の護衛を連れていたがあのくらいの力量の護衛ならキサラギ一人で十分ですと怖いことを進言して来た。
襲撃するとかいうのは普通は最終手段だからね。
思わず力説するとこれは護衛の仕事だから花子様は命令だけすればいいと言われた。
いやだからそもそも敵対しないってそう言う意味でいったんだけど。
「花子様。二時限目の数学はあちらの教室となります。」
どうやら数学の授業はこの建物じゃなく二つ向こうにある建物のようで花子はムツキに案内されその教室に向かった。
そこには昨日新入生歓迎会でレーナ嬢のパートナーをしていた人物がいた。




