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20.魔法科新入生の歓迎会

 翌朝は昨日の惨状のせいか異母兄は朝食の席に現れなかった。

「やあ、おはよう花子はなこ。昨日はよく眠れたかい。」

 花子はなこは実父が起き上がっていて笑顔で挨拶して来たことに驚愕した。

 信じられない。

 あの実母のふかーい愛情の籠った料理を食べて次の朝起き上がれる人間が存在したなんて・・・。

「どうしたんだい花子はなこ。どこか具合が悪いのかい?」

「ぐ・・・具合はむしろお父様の方が悪いのではないですか?」

 ブランは娘の驚愕の眼差しの理由にやっと思い至って笑い声を上げた。

「あの信子(のぶこ)の愛情溢れる手料理なら食べ慣れてるからね。僕なら大丈夫だよ。」

 花子はなこはこの時生まれて始めて目の前にいる人を尊敬の眼差しで見た。

「そんな目で見られると少し恥ずかしいけど君が生まれる何年も前から食べてるんだからいい加減僕も耐性がつくよ。お陰でキンソン家との戦争時も毒殺されることだけはなかったしね。」

 よくわからないが母の愛情あふれる料理を食べられるのはこの人だけだと理解した瞬間だった。

「ところで異母兄とセバスさんの姿が見当たらないんですけど、どうかしたんですか?」

「昨日僕と一緒に二人も食べたからね。今日は一日寝込んでるんじゃあないかな。ちなみに信子(のぶこ)もある意味はしゃぎ過ぎたようで疲れて眠っているよ。」

「そうですか。」

 花子はなこはほっと肩の力を抜いた。

 実母に手料理をいかにして作らせないかの課題はなくなったようだ。


「じゃあ一緒に食事にしよう。そうそう昨日遅く魔法学校から飛び級証明書と卒業証書が届いたよ。アイン。」

「はい、こちらになります。」

傍に控えていたアインがサッと黒い包みから青く光る魔法紙に書かれた書類を渡してくれた。

「あっ、ありがとうございます。」

 花子はなこが渡された証書を一通り眺めるとすぐにアインからお部屋に置いておきますのでお食事をどうぞお召し上がり下さいといわれた。ちょうどお腹が空いていたので花子はなこはその言葉に甘えてブランが雇っている料理人が作った高級料理に舌鼓をうった。


「お・・・おいしかったです。」

 花子はなこは朝にも関わらず運ばれて来た料理を次々に平らげるとテーブルにフォークを置いた。

「ありがとうございます。シェフが喜びます。」

 最後の食事を下げに来たアインはそう笑顔を返すと空の皿を下げながら飲物を出してくれた。

「本当においしかったと伝えてくださいね。」

「畏まりました。あと花子はなこ様。先程こちらが大学から届いておりました。どうぞ。」

 花子はなこは食事を食べ終えコーヒーを飲む前にアインが差し出してきた四角い塊を受け取った。

 彼女が手にして瞬間にその四角い塊は空間に浮かび上がりそこに封筒が現れた。

 少し驚きながらもそれに手を触れるとプシュという音とともにすぐに解凍された。

 四角い圧縮された魔力の塊が膨れ上がるとその空間から声が聞こえた。

 長々とした話だったが要約すると魔法大学にこれから所属する新入生を歓迎する歓迎会がある旨が語られ招待状が降って来た。

 それで終わりかと思ったがまだ空間に何か浮いている。

 思わずそれを触ると亜空間から透明な包装紙で包まれた箱が出現した。

 空間に浮かんでいる箱にコーヒーをテーブルに置いてから立ち上がって触るとそれはすぐに実体化した。

 実体化したものはヒラヒラと木の葉のように舞いながら花子はなこの手のひらに落ちて来た。

 落ちて来た黒い布を広げるとそれは前世でいうところのマイクロビキニの下つまり黒パンツが現れた。


「げっ・・・な・・・なにこれ!」

 花子はなこは伸縮性のある黒のパンツを両手で広げてしまった。

「ああ、それなら恒例の新入生歓迎会の時の衣装だね。」

 隣では落ち着いた様子のブランがコーヒーを優雅に飲みながら花子はなこの手で広げられたパンツを指して宣った。

「ええ!なんでパンツを穿いて新入生の歓迎会に出るんですか?」

「ああ、違う違う。それはパンツ以外を魔法で実体化させて出る歓迎会だよ。」

「まっーたくいわれていることがわからないです。」

「つまり魔力を競い合うための試験みたいなものなんだよ。その黒のパンツ以外は魔力を練って洋服を実体化させるんだ。でっ会場のゲートを新人が一人一人潜っていって最後にそのゲートを潜った人間の中で一番魔力の高い人物の魔法より少しだけ小さい無効化魔法を会場に流す。」

「流すとどうなるんですか?」

「当然無効化魔法だから実際に魔力を練って実体化した洋服は魔法が溶けてなくなっちゃうから最初に着ていたもの、つまり今花子はなこが手に持っている黒いパンツ以外はなくなるってことだよ。」

「えーーー。それだと私の魔力が弱いとこの黒いパンツ姿になるってことですか?」

「うん、そうなるね。たぶんその黒いパンツって言うのも嫌がらせかな。普通上下で送られてくるから下だけってないと思うよ。」

「じゃあ他の人は私と違ってブラジャーも付けてるってことですか?」

「まあ女性ならたぶんそうじゃないかな。」

「ブラン様。いくら何でもこれは大学に抗議を申し入れましょう。」

 アインはいつの間にか通信魔道具を手に持っていた。

「うーん。そうしてもいいけどそれをしても今回だけでまた次回、キンソン家に邪魔されるだけかな。それに確かあの魔法大学にはキンソン家の長女が通っていなかったかい。」

「はい、あまりいい噂を聞きませんが魔力量だけは飛び抜けて多いと言われている長女のリーナ嬢が通われております。」

「なら、逆にこの新入生歓迎会に花子はなこは率先して出た方がいい。」

 何を言っちゃってるの!

 花子はなこがこのトンデモ発言に異議を唱えようとすると逆に説得された。

花子はなこ憶えてるかい。魔法科高校で君に決闘を申し込んで来た女性がいたのを。」

 ああ、あのなんとも得体の知れない思考の持ち主のことならもちろん覚えていたので頷いた。

「あの娘の姉だよ。この件の首謀者はね。」

「はあぁーなんでまた?」

「きっと妹が破れたのが気に食わないってところだから今回の件を防いでもまた別の案件で嫌がらせして来る。なら今回は確実に勝てるってわかってるから向こうの仕掛けて来た罠に入って逆に返り討ちにする方がいいだろう。」

 返り討ちっていってもどうする・・・。

「そうですね。確かに花子はなこ様の魔力量なら楽勝です。むしろこれは相手をギャフンと言わす絶好の場です。申し訳ありませんでした花子はなこ様。差し出口をお許しください。」

 花子はなこが思考停止に陥っているうちにアインとブランの間で新入生歓迎会の出席が確定された。

 幾ら他人事と言ってもこれは酷い。

 なんで二人とも絶対こっちが勝つと思ってるの!

 でも今更出たくないとは言えない雰囲気にこの時ばかりは実母がいればこの二人を止めてくれたのにっという後悔が先に立った。

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