18.異母兄が義父!
ブラウンは花子が学んでいる魔法学校の高等科がすぐ近くにある会社の社長室で執務をしていた。
「ブラウン様。こちらをお読みください。」
セバスがブラウンに何かの書類を差し出した。
珍しく今の書類より先に見た方がいいという表情のセバスを訝しく思いながらブラウンは書類を手に取った。
そこにはなんとブラウンの異母妹である花子がついこの間入ったばかりの魔法学校高等科を最短時間で履修し卒業したこととその際に受けた試験内容が事細かに書かれていた。
「AAAのそれも水風火の三属性すべてを打ち負かしたって・・・。」
自分の異母妹はかなり魔力が強かったからそれなりにやるだろうとは思っていたがあまりにもとんでない内容に絶句した。
ブラウンもかつてこの学校に通っていたがそれでも飛び級は一学年だけそれも最終学年でやっとの思いで成し遂げたのだ。
それを異母妹は軽々とその三段階の飛び級を超絶短時間でやり遂げたようだ。
「天才を通り越してバケモノだな。」
「まさしく。女性でなければぜひ・・・ぜひとも我が主にと思いますのに重ね重ねにもそれが残念でなりません。」
「もしくは私の異母妹でさえなければぜひパートナーに立候補したいね。」
「私もそれについては残念でなりませんが忘れていました。こちらもどうぞ。」
セバスは持っていた書類の束から真新しい書類をブラウンに渡した。
ブラウンはそれにも目を通した。
「魔法無効化属性。そんなものがあったのか。それにしてなんでその女性があんな魔力量が高い子供を産むことが出来たんだ。」
「私見となりますが魔力が高いもの同士だとその両親より少し魔力が劣る子供が生まれるの常ですが彼女の場合これとは逆に作用するのではないかと思われます。」
「それって魔力がない者とある者がいると魔力量がより多くなる者が生まれるって言いいたいのかい。」
「はい。ただその確率も半々なのかもしれませんがそれ以上にこの方個人に非常に興味を惹かれるます。」
セバスは何かの書類にチラリと視線を動かした。
「なんでその確率を半分だと考えているのかわからないけどそれでも半分なら十分だろう。それよりセバスが興味を惹かれることとはなんだい?」
「これを。」
セバスは珍しく今度は古い日付の書類を渡してきた。
少し黄ばんだ書類の日付は今より十六年以上昔のものだった。
ブラウンは渡されたそれを丹念に読んだ。
「これは・・・信じられないな。当時の暗部は今ほどの腕前を持つものがいなかったのか。」
「いえ、むしろあの頃の暗部は今以上に腕の立つものがかなり在籍していました。その最高峰と言われる者たちが追手として差し向けられていたようですが結果はことごとく獲物に逃げられているようです。その後も追跡調査がされていますがまったく彼女の行方を掴めませんでした。今回の事故がなければたぶんまだ見つけられなかったと考えられます。」
「ほう・・・それはまた凄いことだね。ところでその事故が起こるまでその暗部のターゲットだった花子の母親はどんな仕事についていたんだい。」
「それがどう調べましても小さな有限会社での一般事務員としか出て来ず。この調査担当者が泣いておりました。」
「ちょっと待ってくれ。小さな会社だから見つかられなかったんじゃないのか?」
「いえ小さかろうと見つけられないはずがないんです。だからこそです。」
ブラウンは書類をセバスに戻すとしばし熟考した後に立ちあがった。
「セバス。この書類はこの場所で処理しなくても問題ないものばかりだよね。」
「はい。」
「なら私が一家団欒に加わるのにも問題ないな。」
「はい、ございません。すぐに出発の準備をしてまいります。」
「ああ頼むよ。」
ブラウンはここから見える異母妹が通う魔法学校の校舎を見ながら初めて会う花子の母親を思い浮かべた。
「それにしても凄腕の暗部の追手を掻い潜って逃げた女性なんてほんと興味が尽きないなぁ。それに私は父さん以上に魔力があるわけだから彼女と僕の間の子どもは花子より魔力量が多くなる可能性も否定できない。なら花子に異母兄ではなく義父と呼んでもらうのもありかな。」
ブラウンは香り高いコーヒーを飲み干すとすぐに戻って来たセバスと一緒に部屋を後にした。




