13.大貴族とは
マリアは居間で紅茶を手に憤っていた。
自分は何を読み間違ったのだろうか。
普通一般庶民からは魔法を扱えるものが生まれるはずがない。
はずがないのに三男のブランの血を引く娘は庶民との間に出来た娘なのにAAAのそれも三属性が使えるという。
一体どうなっているの?
書類をクシャクシャに握りつぶした。
このままではみすみすルービック家の貴重な血を下賤な庶民の間に捨て置くことになる。
どこで自分は見誤ったのだろうか。
このままこの件をほおってはおけない。
何とかしなくては。
あのバカ息子のことだ。
この書類を持って来たということはこちらに上がってきている娘の実母が死んだという報告も虚偽だろう。
私がそう考えることが分かっていてこれを持って来たはずだ。
キンソン家の令嬢を一瞬にして倒せる技量を持つ娘を生める庶民の女。
庶民ということが引っ掛かるがこれほどの魔力の才能がある子供を生めるのなら捨て置けない。
「フィーア!」
マリアはまずは息子の機嫌を取るためにブラウンの実母であるアンジェリーナの元に向かうことにした。
「車を手配して頂戴。アンジェリーナのところに行くわ。」
「畏まりました。」
フィーアは主の命を実行する為に部屋を出て行った。
「ブラン。悔しいけどあなたの考えた通りに動いてあげるわ。」
マリアはひとり言を呟くとここより少し離れた所にあるブラウンの実母が住む屋敷に向かった。
ブラウンの実母であるアンジェリーナは元々マリアが生んだ長男と婚約していた。
しかしキンソン家との戦争で長男と次男はあの魔法戦に敗れ亡くなってしまった。
仕方なく三男であったブランを説き伏せて長男が生まれるまでは婚姻を続ける代わりに生まれた後は離婚させてブランが庶民の娘と婚姻することを許可すると約束した。
もちろん約束を守るつもりは毛頭なかった。
密かに暗部の者を使ってブランが好いている娘の暗殺を実行させようとしたがなんでか上手くいかず。
そのうちその娘は行方不明となった。
まああの時は死んでいようがいまいがブランの邪魔にならないならいいと放置したのだがまさかあの庶民の娘がブランの子を産んでいたとは思わなかった。
どうやって二人は再会したのだろうか。
少し気になるが今は結果オーライだ。
とにかくブランの機嫌を取ってあの娘をルービック家に取り込まねばならない。
「マリア様。」
フィーアが黄金色に輝く屋敷の前で車を止めた。
何時みても醜悪な趣味だ。
だが彼女は魔法の才能溢れる孫を生んでくれたのでこの趣味の悪さには目を瞑ろうと思っていた。
しかしそれも今日までだ。
今はブラウン以上に魔法の才能がある孫がいることが分かったのだ。
アンジェリーナにはこの書類にサインをして貰おう。
非常に癪だが二番目に魔法の才能がある孫が男子なのでこのルービック家の次期当主の座も認めよう。
マリアは趣味の悪い屋敷に足を踏み入れるとアンジェリーナに彼女の息子がルービック家の次期当主になることと引き換えに離婚届にサインを入れさせた。
サインを貰った後はすぐさま趣味の悪い屋敷を辞してサインを貰った書類をフィーアに渡してブランにすぐさま持っていくように命令した。
これであの馬鹿息子の機嫌も少しはなおっただろうか。
マリアはまだ見ぬ才能溢れる孫に早く会えないかと紅茶を手にそわそわしていた。




