最終章 郷花堅乱 過去視点
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「……ねえ、あなた。今動いたわ」
『……ほんとか?』
「うん、ここに耳を当ててみて」
『おお、聞こえるぞ』
「そうでしょ?」
『本当に聞こえるものなんだな。そういえば、そろそろ名前を決めなきゃいけないな』
「そうね。お医者様の話では双子が宿っているということだし。二人分考えなきゃいけないわね」
『そうだったな。色を象徴する字を入れないといけないとはいえ、難しいよなぁ。俺の玄にお前の日を入れて、眩というのはどうだ?』
「あなた、それは女の子だったら可愛そうよ」
『確かにそうだな。うーん、難しい』
「私が一人決めていいかしら」
『もちろんだ。聞かせてくれ』
「碧というのはどうかしら」
『碧か。男の子にしても女の子にしても、問題ないな。お前の白という字が入っているが、俺の字が入ってないぞ』
「ちゃんと入ってるわよ。よく考えてみて」
『うーん。わからない。ヒントをくれ』
「そうね。囲碁からとったわ」
『……まさか、皇石を捻ったのか』
「そう、正解」
『なるほどな。黒を意味することができれば俺は問題ない。それに』
「それに?」
『親子で囲碁をすることができるな』
「そうね。今から楽しみだわ」
『それじゃあもう一人はどうしようか』
「それも実は案があるの」
『なんだ?』
「琥珀はどう?」
『琥珀か。なるほど、珀という字がお互いに入っているな。双子ならではだ』
「それだけじゃないわ。お父さんがいうには、中国で虎は死後、石になるといわれているらしいの。だから……」
『つまり琥珀も皇石に変換できるというわけか』
「そういうこと」
『じゃあ、決まりだな』
男は納得した顔を見せた。次の瞬間にはっとした顔をして女に訊いた。
『日向、どっちを先にするんだ』
女は男の顔を見た。あまりに真剣な顔をしているので、思わず笑みが零れた。
「そうね、それは囲碁でもしながら決めましょうか」




