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長編小説 3 『限りなく純粋に近いグレイ』  作者: くさなぎそうし
最終章 郷花堅乱(ごうかけんらん)
70/71

最終章 郷花堅乱 過去視点

  ★.


「……ねえ、あなた。今動いたわ」


『……ほんとか?』


「うん、ここに耳を当ててみて」


『おお、聞こえるぞ』


「そうでしょ?」


『本当に聞こえるものなんだな。そういえば、そろそろ名前を決めなきゃいけないな』


「そうね。お医者様の話では双子が宿っているということだし。二人分考えなきゃいけないわね」


『そうだったな。色を象徴する字を入れないといけないとはいえ、難しいよなぁ。俺の玄にお前の日を入れて、眩というのはどうだ?』


「あなた、それは女の子だったら可愛そうよ」


『確かにそうだな。うーん、難しい』


「私が一人決めていいかしら」


『もちろんだ。聞かせてくれ』


「碧というのはどうかしら」


『碧か。男の子にしても女の子にしても、問題ないな。お前の白という字が入っているが、俺の字が入ってないぞ』


「ちゃんと入ってるわよ。よく考えてみて」


『うーん。わからない。ヒントをくれ』


「そうね。囲碁からとったわ」


『……まさか、皇石を捻ったのか』


「そう、正解」


『なるほどな。黒を意味することができれば俺は問題ない。それに』


「それに?」


『親子で囲碁をすることができるな』


「そうね。今から楽しみだわ」


『それじゃあもう一人はどうしようか』


「それも実は案があるの」


『なんだ?』


「琥珀はどう?」


『琥珀か。なるほど、珀という字がお互いに入っているな。双子ならではだ』


「それだけじゃないわ。お父さんがいうには、中国で虎は死後、石になるといわれているらしいの。だから……」


『つまり琥珀も皇石に変換できるというわけか』


「そういうこと」


『じゃあ、決まりだな』


 男は納得した顔を見せた。次の瞬間にはっとした顔をして女に訊いた。


『日向、どっちを先にするんだ』


 女は男の顔を見た。あまりに真剣な顔をしているので、思わず笑みが零れた。


「そうね、それは囲碁でもしながら決めましょうか」

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