第六章 玄冬の『豪』雪 記憶視点 PART8
★.
「こはく」
少女は少年の顔を見ながらいった。
「星が綺麗だねぇ」
「うん」
少年は夜空を眺めながらいう。
「本当に綺麗だ」
「こっちを見てごらん」
少女は北の空に指を指した。
「あっち側に南斗六星という星があるの。日本からだと見えないけどね。南斗六星は北斗七星と対を為す存在なんだ」
「へえ。どうして対を為しているの?」
「それはね北斗は死を表し、南斗は生を表しているからみたいだよ」
「……ふうん」
少年は曖昧に返事をした。彼女がなぜこんな話を切り出したのかがわからないからだ。
「南斗六星はね、いて座の星でもあるんだ」
彼女は流暢に話を進める。
「いて座といえば天の川だね。今年はちゃんと晴れるかなぁ」
「どうだろうね。七夕の日は催涙雨といって、雨の確率が半分もあるんだ」
「詳しいじゃない。私は雨でも構わないよ。こうしてこはくと会うことができればさ……」
彼女は無邪気な笑顔を見せた。その笑みに心がふっと軽くなる。
少年は奥歯を噛んでぐっと堪えた。そうしなければ自分が泣いてしまいそうだったからだ。
「じゃあさ雨が降っても出会える方法を考えようよ。そうすれば僕達はもっと繋がっていられる」
彼女は答えなかった。別れなどないといっているようだった。
それでも彼は続けた。
「そうだ。いい案が浮かんだ」
彼はアオイの名を地面に彫った。
「アオイ姉ちゃんの名前を変えてあげる。そうすれば僕達は姉弟でも堂々と付き合うことができるよ」
彼女は首を振って同意している。言葉が出るのはもう少し後になりそうだ。
「アオイ姉ちゃんの読み方を変えて、みどりというのはどう?」
「……うん、そうだね」
彼女は腕で涙を拭きながら答える。
「いい名前だよ。ありがとう」
「それにさ熱田神宮の色にもなる。絶対に忘れないよ」
「そうだね。私の神社の色が入ってるのは嬉しいよ」
彼女と指を切って約束を交わした後、彼女は再び口を開いた。
「じゃあ出会える日を決めないといけないね」
彼女は唇を舐めて続ける。
「端午の節句はどうかな?」
「端午の節句?」
予想もしていない言葉だった。
「どうして五月五日にするの?」
「それはね黄麟の加護が得られるからよ」
なるほど、と彼は思った。黄麟は中央にあり四神の中心だ。この日に出会えることができればきっと二人はうまくいく。
「じゃあ決まりだね」
少年は手を前に出した。彼女と握手をするためにだ。
「うんっ」
少女は満面の笑みでいった。
「約束だよ。私、ずっと待ってるからね」




