第六章 玄冬の『豪』雪 記憶視点 PART6
★.
「かおる君」
少女は少年の顔を見ながらいった。
「星が綺麗だね」
「うん」
少年は夜空を眺めながらいう。
「本当に綺麗だ」
「あっちを見て?」
少女は北の空に指を指した。
「あれはね、北斗七星というの。北の空の星は年中見ることができるのよ」
「へえ。どうして年中見ることができるのかな?」
「わかんない。でも、これは本当なんだよ。北極星が北の空を指すから、道に迷っても方角を知る手がかりになるんだって」
「ふうん」
少年は曖昧に返事をした。彼女はきっと自分と別れることを知っているのだ。それでこんな話を切り出したに違いない。
「北斗七星はね、七曜の星とも呼ばれるの。曜日の星でもあるんだ。月曜日から日曜日までのね」
「……知ってるよ。太陽と月を含めているんでしょ」
「その通り」
彼女のぱっと晴れやかな顔が浮かぶ。
「私達が離れ離れになっても、北斗七星はずっとお空にあるの。だからね、きっとまたどこかで会えるよ……」
彼女は泣き出しそうになっていた。涙を流しながらしゃっくりを繰り返している。ただ泣き声は上げていない。
少年は奥歯を噛んでぐっと堪えた。そうしなければ自分も泣いてしまいそうだったからだ。
「……じゃあさ僕達が別れても、出会える日を決めようよ。そうすればもっと僕達は繋がっていられる」
彼女は答えなかった。別れなどないといっているようだった。それでも彼は続けた。
「そうだ。この日にしよう。大熊座が一番高く上がる日だ」
彼女は首を振って同意している。言葉が出るのはもう少し後になりそうだ。
「あおいちゃんの誕生日も近いしさ、ずっと覚えていられるよ。鯉幟を掛けてその下で会おう」
「……ほんと?」
彼女は手で涙を拭きながら答える。
「うん、その日がいい。恋が成就する日だし縁起がいいよ」
「どうして恋が成就する日なの?」
聞いたことがない内容だった。
「それはね恋が登るからだよ」
なるほど、と彼は思った。鯉の滝登りと恋の登りを掛けているのだ。
「……じゃあ決まりだね」
少年は手を前に出した。彼女と握手をするためにだ。
「僕達が離れてもこの日に会おう。その時は向日葵の花を持っていくからね」
「うんっ」
少女は満面の笑みでいった。
「約束だよ。私、ずっと待ってるからね」




