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長編小説 3 『限りなく純粋に近いグレイ』  作者: くさなぎそうし
第五章 黒秋の『爛』葉(らんよう)
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第五章 黒秋の『爛』葉 PART6

  6.


 ……やはりマスターから騙されいてる可能性が高い。


 もちろん自分達を騙しているからといって、祖国を裏切っているかまではわからないが。


バイの素性は知っているのか?」


「なんだ、お前は知らされていなかったのか。あの時、会釈を交わしただろう。オレの隣にいた女だ」


 ……な、なんだと?


 電話越しに驚愕する。あの人物が勾玉製作に携わっていた人物とは思いもしなかった。


「何でもお前と同じ、日本に恨みを持っている日本人らしいぜ。彼女は道具だけでなく、尾行に掛けても一流の腕を持っていた。中々できるスパイだよ」


 バイは日本人。贋作の勾玉を製作しているということから日本人の可能性が高いとは思っていたが、まさか隣にいた華奢な女とは思ってもいなかった。やはり自分はスパイをやりなれていないと痛感する。 


「オレはバイに解読した情報を流し、あいつからは諜報するための道具を預かっている。もちろん各部品を確認しているが、今の所不審な点はない」


 バイはリーとは違って様々な情報を得ているようだった。ライアーである自分には不必要な情報だろうが、言い切れない疎外感を覚える。


「これは憶測でものをいってるんだが、バイが日本のスパイだとすれば面白いほど話が噛み合うんだ」


 フォンの言葉をまとめるとこうだ。


 マスターが二重スパイだとすれば、日本側はマスターが裏切らないために監視し続けなければならない。


 監視役。それは近ければ近いほど都合がいいポジションだ。メンバーの中に日本のスパイを組み込んで置く方が一番効率がいいだろう。監視役としてバイが居座っている可能性があるということだった。


「そうなれば、今までの話は全て矛盾なく辻褄が合う。オレの行動を予測されたことも、お前が出くわしたスパイが知っている顔に見えたのも、バイが表に出ないことも」


 バイ自身が日本のスパイ。フォンの近くに潜伏しているのなら、フォンの動きが捉えられるのは当然だ。


「なるほど……つまり俺たちはマスターの掌で踊らされていると?」


「今の所はそうなるな」


「そうなると、俺がつけていた人物は」


「日本のスパイで間違いない」


 フォンは断定した。

「お前の眼を引くためだけの日本側のライアーだ」


 葵、美里と酷似していた人物。あれが日本のスパイなら確かに辻褄は合う。楸田馨という名でライアーを演じているのはきっと葵のことを調べるために違いない。


 リー自身、表向きは中国で死んだことになっており、悪用されても気づくはずがない。あの場では、自分の目を引くことと同時に、フォンと葵を調査することが目的だったのだ。


 ……ターゲットとはもう二度と会うことはないだろう。


 留学に行くというのはもちろん嘘で、他の任務に当たるために違いない。今頃は新たな仮面を被り異国の地で、諜報活動を行なっているだろう。


「くれぐれも気をつけて行動してくれ。今回の仕事はお前に掛かっているんだからな。オレはしばらくマスターとは連絡をとらないようにする」


「了解した。俺だって今回の任務に命を掛けている。必ず成功させてみせる」


「頼むよ、相棒」


 電話を切った後、リーはフォンの言葉を反芻した。


 バイが日本のスパイ。マスターが日本にも通じている二重スパイ。これらが表すことは確実に隠蔽された神がいるということだ。


 ――頼むよ、相棒。


 フォンがそんな言葉を使うのは初めてだった。自分はやっと彼に認められる腕になったらしい。今回でスパイは廃業するつもりでいるのにだ。


 ……皮肉なものだ。


 そう思いながら彼はは口元の笑いを噛み殺し電話の受話器を置いた。

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