表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
長編小説 3 『限りなく純粋に近いグレイ』  作者: くさなぎそうし
第五章 黒秋の『爛』葉(らんよう)
43/71

第五章 黒秋の『爛』葉 記憶視点 PART5

  ★.


「お父さん、あそこに面白い鳥がいるよ。白とか黒とか色が混ざってる」


 指を差すと、目の前にいた男は声を上げた。


「おお、珍しい。あれはね、鶺鴒せきれいという鳥なんだ」


「セキレイ?」


「そう。アマテラス様を生んだ男女の神をイザナギとイザナミというんだが、この神様達は子供を作る方法を鶺鴒から教わったんだ。だから別名トツギドリという名前もあるんだよ」


「へぇ。どうやって子供を作るの?」


「それはね、おまじないをするんだよ」


「どんなおまじない?」


「……うーん。お前にはまだ早すぎるな」男は顔をしかめた。「大人になって好きな人ができてからだな」


「……好きな人、いるよ」


「誰かな? お母さんじゃ駄目だぞ」


「違うよ、アオイちゃん。あ、そう呼んじゃ駄目だった。アオイ姉ちゃんだよ」


 男はかぶりを振って否定した。「おねーちゃんも駄目だ」


「えー。なんで駄目なの? 本当の兄弟じゃないんでしょ?」


「駄目なものは駄目なんだ」


 さらに強い口調で男は少年に唸った。

「そういう決まりなんだ」


「じゃあ決まりを破っておねーちゃんと結婚したらどうなるの?」


「そうなればお父さんが困るな」


「……そっか」


 少年は今は諦めることにした。父親の願いでは仕方がない。

「じゃあ、なるべくおねーちゃん以外の人を好きになるよ」


「うん。そうしなさい」


 男は安堵の溜息を漏らして続けた。

「あの鳥はこの地方では珍しいんだ。なかなか見かけることはできないだろうから、じっくりと見ておくといい」


「どうして?」


「あれは白鶺鴒という種類の名前だ。本来なら関東地方より上に住んでいる鳥なんだよ」


 顔と腹は白いが、胸は黒い。そして灰色に染まった翼を持つものは白鶺鴒というらしい。


「そうなんだ」

 

 少年は声をあげて喜んだ。

「僕、あの鳥気にいったよ。白と黒の色が入ってるなんて、囲碁みたいじゃん」


「そういえばそうだな、お前は本当に囲碁が好きだな」


 男は鳥の鳴き真似をしながら鶺鴒に近づいた。鶺鴒が声に気づいて、こちらにぴょこぴょこと跳ねながら合図を送ってくる。


「この鳥にはもう一つ、マナバシラという別名があるんだ。マナバシラとは真名の柱。お前が願えば、この鳥は何でも願い事を叶えてくれる力を持っているぞ」


 ……こんな小さい鳥に、そんな力が。


 そう聞くだけで、とても神々しい鳥に見えた。手をさし伸ばすと、鶺鴒は尾を縦に振りながらこっちに向かってお辞儀をしてくれた。


「本当に凄い鳥なんだね。でもなんでこんなに別の名前があるの?」


「花言葉というものがあるだろう? それと一緒で、鳥にも別名がつけられ人の気持ちが込められている」


「なるほど。セキレイはたくさんの思いを背負っているんだね」


 男は満足そうに頷いた。


「そうだ、神様にしても同じだ。神様はいつでもお前のことを見ているんだから、きちんとお祈りをしなくちゃいけないぞ」


「うん、わかってる。これからもお父さんのように真面目に勉強するよ」


「本当か」


 男はにっこりと微笑んだ。

「そうしてくれたらお父さんが神様にお願いをして、お前が欲しがっているプレゼントを届けてくれるように伝えておくよ」


「ほんと? 神様が誕生日プレゼント届けてくれるの?」


「ほんとだ」


 男は大きく頷いた。

「その日はお父さんの分も頼まないといけないからな。忘れるはずがない」


「……絶対だからね、ちゃんとお願いしてね」


「ああ、お父さんも神様も嘘はつかないさ」


 鶺鴒は尾を振りながら灰色の翼を広げた。

 その翼に少年は思いを込めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ