表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
長編小説 3 『限りなく純粋に近いグレイ』  作者: くさなぎそうし
第三章 白秋の『爛』葉(らんよう)
31/71

第三章 白秋の『爛』葉 記憶視点 PART4

  ★.


「……お父さん。何で伊勢神宮には二つの宮があるの?」


 少年は目の前にいる父親に尋ねた。


「それはな、神様が二人いるからだ。日の神様であるアマテラス様と、食の神様である豊受大神様がいるんだよ」


 少年は納得した顔になったが、再び疑問を口にした。


「アマテラス様は天皇陛下の神様だから、ここで祀られているのはわかるけどさ。何で食の神様がここで祀られているの?」


「何でだと思う?」


「……伊勢神宮の小宮司なのにわからないの?」


 父親は少年の両頬をつねった。だがあまり力が入っていない。

「こはくに質問してるんだ。ちゃんと答えなさい」


 少年は頬を捕まれたまま答えた。

「アマテラス様が食いしん坊だから?」


 男は大きく笑い、半分正解と述べた。

「アマテラス様は寂しがり屋なんだ。ご飯を食べる時に一人じゃ寂しいから、食の神様を連れて来て、とごねたそうだ」


 少年は頬を捕まれたまま笑った。

「へぇー、神様でも寂しがるんだねぇ」


「そうなんだ。豊受大神様は比沼の真名井まない神社という所から来たんだ」


 男は掴んでいた腕を離してから説明した。

「真名とは本当の名という意味がある。昔の日本人には二つの名があったんだよ」


「そうなの? お父さんにもあるの?」


 父親は首を振った。

「お父さんよりも、もっと昔の人だ。けどお前にもちゃんと真名がある」


 少年は目を丸くした。

「えっ、本当? どういう名前なの?」


「かおるという名だ」


 少年はがっくりとうな垂れた。どうせならもっと男らしい名前がよかったなと思った。


「えー、もっと格好いい名前がよかったよ。どっちも女の子っぽいじゃん」


「……確かにそうだなぁ」


 男は鼻を掻きながらいった。

「実はお前の名前は性別が決まる前から決まっていたんだ」


「なんで生まれる前から僕の名前が決まっていたの?」


「それはな。お前には付けなければいけない色があったんでな」


「色?」


 少年は首を傾げた。

「なんで名前に色を入れるの?僕の名前には色が入っているの?」


「その話はもうちょっと大きくなってからだな」


 男は少年の話を遮って続けた。

「けど覚えておいて欲しい。お前はここ、伊勢神宮の跡取りだ。どんな辛いことがあっても、俺と瞬の子供だ。それだけは忘れないでくれ」


「ん? もちろん忘れないよ。忘れるわけないじゃん」


「……すまない。変なことをいってしまったな」


 父親は頬を掻きながら謝った。


「さあ、家に帰ろう。母さんが待ってる」 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ