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魔物の国の外交官  作者: TAM-TAM
第9章 南の公国の革命勢力
149/154

137話 コゼット救出作戦・1(最初に大きいのを落としてあとは流れで)


「緊急事態です! コゼットさんが攫われましふひゃあっ!?」


 ルージュ家2階にある談話室(サロン)。令嬢にあるまじきフットワークでそこのバルコニーの扉からすっかり濡れ鼠になって帰ってきたセレスティナのスカートが、外からの強風を受けて翻った。


 ゴージャス路線のヘアメイクがようやく佳境に差し掛かっていたシャルロットが、その様子を見て大笑いする。


「ぷっ、あははははっ! ティナ先生……ぷふっ、いつかわたくしが差し上げた苺のショーツ……あははっ! まだ使ってたのね……っ、……ぷふっ……ひー、可笑しいー」

「くすっ……お嬢様、大口開けてお笑いになるのは……っ、お行儀が悪いですし失礼ですよ……ふふっ」


 お腹を抱えて苦しそうに悶えているシャルロットに「ぐぬぬ」と不満げな眼を向けつつ、セレスティナが言い返す。


「“まだ”じゃなくて今日が初めてです。私は似合わないから嫌だって言ったのに、シャルロットさん主催のパーティに出席するならシャルロットさんに貰ったアクセサリとかそういうのを身に着けて行くのが外交儀礼だからって押し切られて……なのによりによってこんな悪天候と重なるなんて」


 以前にシャルロッテから貰った無駄に写実的な苺柄の下着は雨に濡れた結果一層瑞々しさを増し、まるでポンコツ可愛い子向けのネタ枠にしか見えない。

 シャルロットにしても外交儀礼を説いた母セレスフィアにしても、何故こんなネタ装備が似合うと思ったのか機会があれば問い質したいセレスティナではあったが、生憎今はそれどころではなく急いで状況を説明する。


「と、とにかく、コゼットさんが攫われたようです。攫ったのは鷲獅子(グリフォン)に乗った魔獣使いの獣人の女の人で、現場にはこれが……」


 そう言って、コゼットの愛用の槍と破壊された向日葵柄の傘を取り出した。それを見たシャルロットも流石に真面目な顔に戻って一言。


「……過去の事例だと、誘拐された翌日か翌々日には身代金の催促状が届くから、本格的に動くとしたらどうしてもそれが届くまで待つことになるかしらね?」

「一応《追跡(トレース)》は仕込んでおきましたのでアジトの場所は大体把握してまして、隠密や救出なんかの特殊任務に強い人員がお借りできれば今からでも助けに向かいたいところですが」

「……もう驚かないわよ……」


 呆れた表情を見せたものの、セレスティナの奇行にももう慣れたものでシャルロットは素早く作戦案の軌道修正に入る。


「でもそうね、わたくしは今日はここを動けないし現場の仕事に直接口を出しても逆効果だから、話の続きは庭の衛視隊詰め所でしてくれる? 作戦とか人選は衛視隊長に一任するからエマも行って今の指示を伝えて」

「畏まりました」

「クロエさんもできれば一緒にお願いします。この手のミッションはクロエさんの技量があると成功率が大きく上がりますから」

「そ、そこまで言うならしょうがないわね。手伝ってあげても良いわ」

「助かります。あ、クロエさんは念の為シャルロットさんの護衛の交代人員が来てから合流して下さい」


 強い味方の協力が得られてほっとした様子で応えつつ、セレスティナは虹色に輝く外交官バッジを肩掛けの上から固定するように付け替えた。さながら騎士が留め具(フィブラ)でマントを留めるような風格を感じる。

 先程の失態に加えて濡れ透け苺ブラまで見られたら今度は何を言われるか分かったものではない。特に胸の先端の位置に写実的な苺の絵を持ってきた挑戦的なデザインは、商品企画会議の段階での提案者と承認者の正気を疑うレベルだ。


「では私は、外から飛んで詰め所に向かいますね。こんな水も滴る立派な大人のレディが館内を歩き回る訳にはいきませふひゃんっ!?」


 そう言いかけてバルコニーの扉を開けた彼女を再び強風が襲い、室内から注がれる生暖かい視線に耐えかねて逃げるように外へと飛び出した。





 それから暫く後、暴風雨のピークは過ぎ去ったようで雨足も少し弱まり移動の際の障害がようやく軽減されてきた中、公都から南西へと馬と《飛空(フライト)》を飛ばした先に広がる“底無しの森”の外縁部へと到着したセレスティナ達一行。

 セレスティナとクロエの他には、ルージュ家からの手助けの人員として騎士二人が同行することになり、総勢4人の即席パーティとなっている。


 その騎士達は公都に向かう際にシャルロットの護衛をした者達で既に顔見知りだった。

 片方は当時御者に扮していた黒髪の青年騎士レオポルド。地味な容姿と相まって隠密行動系統の訓練を受けており、今回の任務にはうってつけの人選だと言う。

 もう一人は金髪の女性騎士ロクサンヌ。貴婦人の護衛や救出経験があり、救助後のアフターケアを意識した人選なのだろう。

 両者とも騎士の正装ではなく、黒い服に音の出にくい皮製の防具を纏っており、歴戦の特殊部隊のような風格を感じる。


「それで、この奥にコゼット嬢が?」


 近くの木にここまで乗って来た馬を繋ぎ、レオポルドが尋ねてくる。“底無しの森”の中は視界も足場も悪く、馬での移動は向いていないのだ。


「はい。《追跡(トレース)》の反応は森の奥、およそ中心部になってます」


 自信ありげに頷いたセレスティナだが、「ただ……」と更に言葉を続けて心配点を伝える。


「ここから先は、空を飛ぶと見張りに発見される怖れがありますから陸路で行こうと思います。沼地は《石壁(ウォールオブストーン)》で橋を架けて、できるだけ最短距離を一直線で」

「魔力……は心配なさそうだな」


 壁系の魔術は本来魔力消費が大きくあまり多用できないものなのだが、セレスティナに人間界の常識が通用しないのは今更の話でレオポルドもよく分かっていた。

 “底無しの森”を突っ切る上で最大の困難をあっさり克服すると、セレスティナは今度は道具入れからポーションの入った瓶を4本取り出す。


「途中の獣や魔獣は応戦するのも時間の無駄ですからクロエさんの威圧で追い払って貰うとして、皆さん一応解毒薬を飲んでおいて下さい。沼地は毒草や毒虫や破傷風が怖いですから」

「ああ、助かる」

「有り難く頂くわ」


 腰に手を当ててマーリン謹製の解毒薬を飲み干し、貧乏性なので空き瓶は律儀に回収して移動を開始する。

 最近公国貴族の間では飲み終えたポーションの瓶を投げ捨てて叩き割るのが流行だと小耳に挟んだ事はあるが、そんなのは金持ちの道楽だ。


 ぬかるんだ地面を蹴りつつ、歩けない程の深みがあれば石の壁を生み出す魔術で足場を構築し、目標地点へと必要時以外は喋らずに淡々と進んで行く様子はどこぞの特殊部隊のようだ。

 その間、捕食者の気配を全開にして周囲を威嚇していたクロエのお陰で野獣や魔獣との遭遇も無く、“底無しの森”の中心部へ拍子抜けするぐらいすんなりと到達した。


「……小屋がありますね。《追跡(トレース)》の座標もあの中です」


 木々の隙間から息を潜めて見る先が開けた沼地になっており、その真ん中に桟橋状に組み立てられた木製の土台の上に建てられた水上コテージのような建築物が見えた。

 恐らく鷲獅子(グリフォン)の発着場と思われる平たい場所には今は何も居らず、別の拠点へと帰った後なのだろう。見晴らしの良い荒野や山岳を好む鷲獅子(グリフォン)の立場だとここは長居したくない場所だ。


 また陸地への経路として桟橋の一部が跳ね橋の構造になっている。小屋の側から操作する構造になっており現在は斜め上に向けて折れ曲がっていた。


 木の陰からじっと小屋の中の気配を探っていたクロエが、やがて声を落として情報を伝える。


「コゼット以外には4人ぐらい居るわ。どいつも隠れ慣れしてなくて真っ正面から戦うタイプね。分かりやすいわ」

「この距離で判別できるのか……凄いな」


 クロエの探知能力にレオポルドが感服の声を出す。その反応にふふんと得意げに胸を張るクロエにセレスティナが追加で尋ねた。


「見張りの様子はどんな感じですか?」

「うん。四方の窓を順番に見てるみたいね。人質にも意識向いてるからローテが雑だけどその分不定期で予測しにくいかも」

「了解しました。ローテーションの隙を突いて近寄る案は危険ですね」


 クロエの返答を受けて少し思案した後、セレスティナは皆に向けて修正案を披露する。


「対応する隙を与えずに一気に決めましょう。もうすぐ小屋の向こう側のあの大きな木に雷が落ちます(・・・・)ので、それを目晦ましに《石壁(ウォールオブストーン)》を足場に沼を渡って扉をぶち破って電撃的に制圧、で如何でしょう?」

「……落ちる、なの? 落とすの間違いじゃなくて?」

「…………自然現象はそう簡単にコントロールできませんよ?」


 胡乱げに問うクロエから目を逸らして答えるセレスティナ。

 レオポルドとロクサンヌも落雷の場所まで特定し予告することはいまいち信じられない様子だったが、実際に空では雷鳴が断続的に轟いており、大き目の稲光に合わせるのは何も準備せず突入するよりマシだと考えて彼女の案に乗ることにした。


「では、目を足元の方に逸らして耳も塞いでおいて下さい」


 そう言うとセレスティナの左の魔眼が紅く輝く。少し慣れの要る技術だが両目を同時に解放するのに比べて威力が落ちる代わりに身体への負担が抑えられ持続時間が延びる利点がある。実の所はアリアを見てふと思いついた小技だ。


 アイディア料代わりにまた何か魔道具(マジックアイテム)の試作品でも提供しようか、などとこの場ではどうでもいいことを考えつつ、周囲に渦巻く膨大な魔力をゆっくりと確実に纏め上げ、彼女は天と地を繋ぐ一本の道を編み込んで行く――





 一方その頃、小屋の内側ではコゼットの甲高い声が壁や窓を震わせていた。


「は!? コゼットの身代金に金貨3万枚!? おかしいんじゃないの!? 幾ら勇者でもお父さんにそんな大金出せる訳ないじゃないっ!」

「……五月蝿い。大声を出すな。外の物音が聞こえん」


 魔封じの枷をかけられ更に両足も縛られてはいるが床の上にではなくベッドに転がされているのは、一応人質として丁重に扱われている証だろう。


 小屋の中に居るのはコゼットの他には30代から40代に見える男達が4人。統制の取れた動きを見せる、訓練を積んだ兵士のような集団だ。

 隊長に見える最年長の大柄な男が室内外を広く監視し、残る三人が四方の窓やコゼットを見張っている。交代式で時々休憩も取っているらしく、警戒体制に綻びは感じられない。


「で、だ。お前さんの言う通り、個人じゃあ無理だろうな。そこで俺達が身代金を要求する相手は、ルミエルージュ公国政府さ」


 変わらない外の景色を見続けても気が滅入る。そんな状況からの気分転換も兼ねて隊長はコゼットの話に付き合うことにしたらしい。


「政府? なんで政府がコゼットの身代金を出すのよ?」

「そりゃぁ、お前さんの親父は政府に選ばれて勇者になって政府の命令で公国の敵とされるモノを撃退してるんじゃねえか。だったら勇者の肩書きが仇になって娘に危険が迫ったら政府が何とかするのが筋ってモンじゃねえか」


 そう言ってニヤリと笑い、隊長は続く展開を口にする。


「で、だ。万が一それで政府が金持ってる癖に勇者の娘を見捨てたとかなったら、政府に仕えてる連中はどう思うだろうな? 政府は自分達のことを平気で見捨てるのに自分達は政府に忠義を尽くすなんて馬鹿らしくなるかもなあ?」

「……そうね。コゼットだったらそんな依頼人の下で仕事したくないわ」

「そういうこった。上の連中は、自分達の金や権力を守る為なら下で働く騎士や兵士を平気で切り捨てやがる……そんな奴らにマトモな国の運営なんぞできる訳が無え」


 そう語る隊長の目に、一瞬だけ激しい憎悪の炎が灯る。“堕ちた勇者”を生み“正義の革命団”が結成されるきっかけとなった以前の事件で、その時に騎士の職と地位を剥奪された者達の中に彼らが含まれていたのだ。


「政府が身代金を拒否したら、俺達の仲間が勇者クロヴィスに接触して仲間に引き入れる手筈になっている。彼も本当の意味で民衆を救うなら“正義の革命団”に入って今の腐った貴族と商人を一掃するべきだと解ってくれる筈さ」

「そんなっ!?」


 難しいことはあまりよく解らないコゼットだが、隊長の言葉が実現してルージュ家が潰れたりすると飯の種が一つ減って困る。

 それに、武力革命が起こるとなればきっと公都が戦場に変わり大勢の人が死ぬことになる。きっとそれは父クロヴィスも望まない。


「……させないわ! そんなこと!」

「ほう、参考に聞くがどうやってだ?」

「……コゼットの友達に、凄い冒険者が居る。けど手段は秘密。言うと対策されちゃうもん!」


 最近知り合ったばかりのパーティメンバー、セレスティナの姿が頭に浮かんだ。実力は折り紙つきだし、もしも父クロヴィスかルージュ家が無理の無い報酬で救出依頼を出せば受けてくれるぐらいの友情は期待したい。


「はははっ、そうか。それならおじさん達も対策してしっかり外を見張らないとなあ。おいお前ら! 油断はするなよ!」


 軽くあしらわれたが、今はそれで良い。そう思ってコゼットは呼吸を整えて冷静さを引き戻した。


 流石にこんなどことも知れない場所にこの瞬間奇跡的に助けがやって来るとは期待していない。勝負は人質と身代金の引き換えの瞬間だろう。

 誘拐犯側が移動と輸送に鷲獅子(グリフォン)を使うのは規定路線だろうが、空中戦ならセレスティナに分がある筈だ。そうするとコゼット自身は限られた状況の中でどう振る舞うのが最善か……


 いずれにしても長期戦を覚悟すべきだ。コゼットがそう思って今は少しでも体力を温存しようとベッドに身体を預けてふと窓の外を見た時――


 網膜を灼く程の眩い閃光と共に、落雷の轟音が小屋を大きく揺るがした。


「――あきゃあああああああああぁぁぁぁっ!?」


 体力温存の誓いはどこへやら、思わず腹の底からの悲鳴を上げてベッドから転がり落ちる。

 だがそんなコゼットには構わず、男達の注意は窓の外、落雷地点にだけ向いていた。


「近いぞ! 落ちたか!?」

「向こう側の木が! 燃えてます!」

「沼を隔ててるからここまで延焼することはなさそうだな」


 すぐ近くに落ちたが小屋自体に被害が無さそうだと思い至り、男達が意識を引き戻す。


「直撃は無かったが油断はできん。おい、誰か一人外に出て建物に外傷がねえか確かめてくれ」

「はっ」


 隊長に命じられた部下の一人が、小屋に一つだけの扉の鍵を開けてノブへと手を掛ける。


 その瞬間、部下の身体ごと扉が蹴破られ、吹っ飛ばされた。


「ぐはっ!!」

「動くな! ルージュ家の騎士だ! 我々に逆らうことはルージュ大公爵家に仇を為す行為だと知れ!」


 扉を踏み倒す勢いで部屋に突入したレオポルドが、剣を手に威圧する。

 その後ろから左目を紅く輝かせたセレスティナとロクサンヌも続き、それぞれの武器を手に左右に展開する。


「そっちこそ動くな! この娘の命がどうなっても――」

「《連鎖雷撃(チェインライトニング)》!!」

「ぎゃっ!?」

「ぐあっ!?」

「げぶっ!」


 部下の一人が短剣を手にコゼットを人質に取ろうと動いたが、彼らにとっては不幸なことにセレスティナはこの状況に最適な魔術――以前彼女が語ったことがある、乱戦の中で敵だけを選んで一掃できる素敵な攻撃魔術を既に実用化していた。

 得意の《雷撃(サンダーボルト)》を発展させ、一筆書きを描くように任意の対象を選んで電撃を奔らせ討ち倒す新技の《連鎖雷撃(チェインライトニング)》を受け、男達4人が為す術も無く昏倒する。


 勿論この魔術の電気回路的構成は直列接続になり、単体相手の《雷撃(サンダーボルト)》に比べ人数倍の魔力が必要なので、今の彼女の実力では魔眼開放中しか使い物にならない制限付きの切り札であるが。


「……生きてるわね? 痛い所とか無い?」


 その裏側で、仮に今のセレスティナの攻撃でも相手が倒れなかった時の保険として影に潜むようにこっそり移動していたクロエがコゼットを起き上がらせ、手枷とロープを外す。


「あ、うん、特には……でも何でここが分かったの!?」

「ティナが、この雨の中追いかけて見つけたのよ」

「ティナ……っ!」


 未来の勇者たるコゼットのパーティメンバーの魔術師は、思った以上に凄くてそして思った以上に友達だった。その事実にコゼットの心が温かくなり、目から涙が落ちそうになる。


「はい。ご無事で良かったです。さあ、遠慮せずにどーんとどうぞっ」


 そんな彼女にセレスティナも、抱擁を待つかのように笑顔で両手を広げた。


「ティナ、ありがっ――」


 流れに乗せられたかのようにセレスティナに向かって駆け出すコゼットだが、身体が触れる直前に気付いてしまう。

 雨の中しかも泥濘を踏み越えてここまで来たセレスティナの全身は、ずぶ濡れの上に跳ねた泥にまみれていた。

 しかも彼女は魔術で足場を作る為に先頭に立って移動していた都合上、しばしば深みに嵌っており特に足元は擬似的に絶対領域が構成できるほどの惨状だ。


 ちなみに先程コゼットを抱き起こしたクロエは雨に濡れてはいるものの靴以外に汚れは無かった。走り方にコツでもあるのだろうか。


 それはさておき、対するコゼットはパーティに出向く途中で攫われたので、絶対に汚したくない高価なワンピース姿のままだ。


「――って、嫌あっ!」


 なので年頃の乙女としての本能に従って、反射的にセレスティナの胸をどーんと突き飛ばすのも仕方の無いことで、


「ふぎゃっ!?」


 前衛職なので細い身体の割に力があるコゼットの一撃を受け、べしょっと尻餅をつくセレスティナ。その姿を見たコゼットが思わずお腹を抱えて笑い出した。


「っ! あははっ! ティナの、苺パンツ、あはっ! 可愛いわねっ!」

「か、可愛くないですし外交儀礼だから仕方ないんです! あと大声で暴露するのはやめて下さい!」


 既視感のあるその光景にセレスティナが慌ててスカートを押さえて抗議した。見るとレオポルドは聞かなかったことにして目を逸らし、ロクサンヌはとても優しく生暖かい笑顔を向けてくる。今はその優しさも辛い。


「……不幸な事故が重なったみたいだけど基本的に自業自得だわ」

「はふん」


 そう締めるクロエに肩を叩かれて、がっくり項垂れるセレスティナだった。



次回は11月22日頃(努力目標)に投稿予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] コゼットの弱点だと分かっていて雷を落とすセレスティナさん(笑)。 >すっかり濡れ鼠になって帰ってきたセレスティナのスカートが、外からの風を受けて翻った 濡れたスカートは翻らないのではっ!?…
[良い点] いちごぱんつ ……ただでさえ少ない女子力が更に……いや、恥じらいにより上がった……のか?
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