プロローグ
――――さあ、いらっしゃい。
……声が聞こえる。
何も見えない暗闇の中で、決して大きくは無いけれど、その声は俺を引き付ける。
――――こっちへ、いらっしゃい。
行っては駄目だ。
本能が、そう理解する。俺の心の声は、声のする方へ行ってはいけないと訴える。
――――いっらしゃい。
行くな!
だが、足は止まらない。何も見えない暗闇のくせに、俺の足は確実に声のするほうへと歩き出す。声に導かれるよう、迷うことなく。俺の意思とは裏腹に、淫靡な声に吸い寄せられるように。
――――さあ、ここへ……。
そのとき、暗闇の中に一粒の光が見えた。声は、あそこから聞こえているのか。
行っては駄目だと、いまだに俺は俺の足に命令するが、好奇心旺盛な子供が親の声を聞かないように、着実に光へと近づいていく。
――――さあ、もう少し……。
点のようだった光は次第に大きくなり、その光の中心にあるものが何かを、俺の目に映し出す。
それは、赤い果実を実らせた一本の小さな木だった。その木の枝の一本に、蛇が絡み付いてこっちを見ている。
――――実を、手に……。
声が、その蛇から聞こえた。どうやら俺は、この蛇に導かれていたらしい。
俺は、木に一つだけなっている真っ赤なリンゴのような果実に手を伸ばす。
――――手に……。
駄目だ。やめろ。それを手に取っちゃいけない。それに触れちゃいけない。
心が、理性が、本能が、俺の中のありとあらゆるものが同じことを訴える。だが、止まらない。俺ではない何かに操られているかのように、俺の手は赤い果実をもぎ取った。
――――食べなさい。
俺は、その果実にかじりついた。
はじめまして、ホウレンといいます。
いろんなジャンルの小説を書いてみたいと思いまして、今回は恋愛というか女の子のたくさん出てくるものに挑戦です。
といあえず当面の目標は、セリフを書くときに私が照れてしまうのを克服することです。