ゆうれい船とオオトカゲ1
0番格納庫の一角に停泊する船「心獣丸」の一室でムギムギパッチンは体を脱ぎ捨て幽体に船長服を着せていた。インコのジャムスキンは、空中をパタパタと飛んでいる。
この服は、幽体のみが着ることのできるマトー石を編み込んだ品であり、幽体離脱者達にとっては必需品だ。幽体離脱者には個人差はあるものの離脱できる時間が限られている、長期間離れた幽体は最寄りの実体に宿る習性があるからだ。ジャムスキンが普段インコに宿っているのはそのためである。もちろんジャムスキン自身の体も存在するが、ムギムギパッチンの体を借りる者達は全て実体の時はそれぞれの生活を営んでいた。
部屋の窓から美しくも苛立ちの混じる声がした。
「いったいいつまで待たせるのよ。早く探しに行きたいの」
依頼人の少女セティだ。
彼女は船の外で待っていた。
この船にはある事情で操縦室を兼ねた部屋一つしかないのだ。
宙を舞うインコが脱ぎ捨てられた体の頭上に着地した。
「カノジョモ、ツレテイクノカ」
「もちろん連れてくよ。蒼竜の姿も分からないし。会社のことは任せたよジャムスキンくん」
「ワタシガヤッテンダロ、キレイナキシャダカラッテ、シュザイニダケカオダシヤガッテ」
ムギムギパッチンは船長服にマントを掛けると高さのある帽子を被りジャムスキンの方を向いた。
「似合う」
「イツモノ、オマエダ」
「じゃサクッと解決してセティとデートと決め込もう。奴を呼ぶぞ」