霊海探偵社の依頼人3
神秘の竜サーカス団は、竜とのコンビネーションで演技を行うことで知られる人気のサーカス団。
セティはこの一座に幼なじみの蒼竜の子竜、チャコと共に半年前に入団した。
セティの美貌と青く輝く竜が繰り出すアクロバットは、すぐにサーカス団の看板演目となり多くの人々の視線を集めた。
この頃からセティは周囲に異変を感じるようになる。普通は目に入らない幽体離脱者の影を霊能力者の血を引くセティは目視することができた。
セティは身の危険を感じチャコと共にサーカス団を抜け出した。
しかし海に出た直後、その幽体離脱者は巨大なゆうれい船に乗って現れセティの前からチャコをさらって消えたのである。
で、方々を探した末に霊海探偵社に辿り着いたとのことだ。
「おめでとう。セティの大切な竜は密猟者に奪われたってことだよ。でも大丈夫。ここに来たのは正解さ。なぜならこの事件、ボクが君のために解決してあげるから」
幽体ムギムギパッチンが、セティの隣に着地して触れることのできない手に手を重ねる、フリをする。
セティはモヤモヤした幽体を振り払って目の前の少年の手を握った。
「チャコとはずっと一緒にいたんです。どうか助けてください。ジャムスキンさん」
「大丈夫ですセティさん。このボク、ムギムギパッチンが事件を解決して見せます」
ジャムスキンが頷き目を閉じる。
「フム、セティさんの話によるとこの事件には大規模な密輸組織が関わっているようですな。ムギムギパッチン殿、私は賛成です。この娘さんに力を貸してやってはいかがかな」
「体を変われぇ」
ジャムスキンの幽体が少年の体からインコへと戻り、ムギムギパッチンと入れ替わった。
「だから、言ってるでしょセティ。ボクが解決するって」
少年の表情の変化。真面目→アホ面。へ不安を募らせるセティ。握っていた手をそっと戻す。
「ええ、よろしく」
「ダイジョウブダ。ムギムギパッチン、ドノハ、ナカナカタヨリニナル、コトモアル」
「ではさっそく。出発の準備をしましょう。来てくれセティ」
ムギムギパッチンはそう言って格納庫の奥へと歩き出した。