霊海探偵社の依頼人2
インコを頭に乗せ、従業員の間を横切る少年。モチロンみんなの視線はクギヅケである。
格納庫通りの奥のおく、誰も近寄ることのない0番格納庫。
ムギムギパッチンの裏家業「霊海探偵社」の事務所はここにある。
ソファーに腰掛け、部屋の主を待つ依頼人が扉の前でポーズをとる少年に視線を送る。
「来たのね。裏世界の、ゆーれい探偵さん」
「よし」
少年は小さくガッツポーズして依頼人の向かいに座る。
サングラスにフードを被ってはいるが依頼人は、女だ。しかも同年代の少女に違いない。
南国にふさわしい褐色のよいほどよく焼けた肌に、ぷるんとした唇、スカートからチラリと見える太もも。
「ああ、お嬢さん。ぜひ美しいお顔を見せてくださいまし」
少女は、フードとサングラスを取り顔を見せる。
「私の名前はセティ。神秘の竜サーカス団で女優をしているの」
「ああ、ああやっぱりだ。だからこんなに美しいのか。隣に座ってじっくり観察してもいいですか」
「駄目よ。さっそくだけど依頼があるの。貴方と頭の上の小鳥さん、どっちと話せばいいかしら。できれば小鳥さんであってほしいけど」
少年の頭上で沈黙していたインコが目を覚ます。
「ホオ、キズカレマシタカ」
「当然よ、貴方たち2人が同じものだってことは見ればわかるもの、私は霊能力者の血を引いているから」
頭上のインコが少年の隣に降り立つ。
「ナルホド」
「貴方たち2人とも幽体離脱者だってことがね。さぁ、本物のムギムギパッチンはどっちなの」
インコの表情が強ばる。
「ザンネンナガラ」
「そのまんまボクがムギムギパッチンです」
少年ムギムギパッチンは、目をキラキラさせながら手を上げた。
セティは頭を抱えてインコと少年を見比べた。
「小鳥さんは真面目そうなのに、残念ね」
「失礼だなお嬢さん、いやセティ。君もボクの活躍は風の噂かネットで知っているだろう」
「ぜーん、ぜん。座長に聞いたら貴方しか知らなかったのよ」
「ああ、そうかい」
少年は天を仰ぎ上空へ幽体離脱した。先程まで少年の幽体を宿していた体は机に俯せに倒れた。
セティは離脱する幽体をジッと目で追いながらため息をついた。
「私の依頼を受けてくれる」
「はーい、ここで聞きますよ」
少年の幽体はプカプカと空中を漂う。
「デハ、ワタシガ、ウカガイマショウ」
インコはバタと倒れるのと同時に幽体が体を一瞬にして飛び出し、空の少年の体に乗り移った。
少年は目覚め真顔でセティと向き合った。
「では、私がこの体を借りて話を伺いましょう。さすがにインコの体では話しづらいのでね。いいですかな、ムギムギパッチン殿」
「どうぞ。ボクはこの辺で聞いてるからね」
「真面目な小鳥さん、ありがとう。えっとなんて呼べばいいかしら」
「私の名はジャムスキン。執事にして体を借りる幽体の1人です」