気になる女の子
聖桜学園高等部1年F組。
昴が在籍しているクラスだ。
超がつく俺様気質の昴にも、気になる女生徒がいる。
いつも慌てて、挙動不審。
小動物みたいに愛くるしい動作は、見ていて飽きがこない女の子。
口調は常に敬語で、朗らかな笑顔が特徴だった。
昴は自然と目が向く。
名前は、黒姫 今日子。
肩までの薄茶色の髪は、輪郭に添うように内側に巻いており、仔犬のように愛くるしい、大きな瞳は人を疑う事を知らないかのような、まっさらな眼をしている。
今日も今日とて、日直の仕事であるプリント運びに、忙しく動き回っているが、その姿はなんとも危なっかしい。
「黒姫ー。それ終わったら、この教材も資料室に戻しておいてくれ」
「はい、解りました!」
教師に言い付けられた仕事を、嫌な顔一つせず、笑顔で引き受ける今日子が、山になったプリント用紙を両手で抱えた。
だが、抱えたプリント用紙の量は、明らかに彼女の頭二つ分以上あり、前方は全く見えていない。
「……あわわ、こ、これは、気をつけて運ばないといけませんね。よいしょっと……」
そう言って、バランスをとりながら、教室から出て行こうと、歩き出す今日子だが、その姿を見ている方からしたら、とても気が気じゃないと、自分の席にいた昴が、溜め息を漏らしてしまう。
そして席を立つと、彼は教室の入口でフラフラしている今日子の元へ向かって行く。
「おい」
「あ、紫狼くん」
不意に声を掛けられた今日子が足を止め、笑顔で振り向くが、その拍子に、抱えていたプリント用紙はバランスを崩して、横に大きく揺れる。
「はわっ!! たたた大変です!」
気付いた今日子が慌てだすが、彼女があたふたすればする程、プリント用紙の山も、グラグラと揺れまくった。
「あわわわっ!!と、とと止まって下さい~~~っ!!」
プリント用紙に止まれと言っても仕方ないだろと、もう一度、深い溜め息を漏らした昴が口を開く。
「まず、お前が止まれ。阿呆」
「はうっ?! 」
右手でプリント用紙、左手で今日子の頭をおさえた昴が、呆れまぎれに、溜め息を漏らす。




