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high school symphony  作者: 結城麗漓
3/16

就任(前編)





昴が心当たりとなる人物を思い悩んでいた為、自然と一騎や紗弓たちは沈黙を守る。


蕾も足をパタパタさせながら、暇潰しに室内をキョロキョロ見渡していた。


もっとも誠は会話についていけずに、すでに持ち込んだポータブルゲームでギャルゲーを始めている。



そんな沈黙を破ったのは、扉を叩く音だった。




「剣術部部長、己嶋(コジマ) (カナメ)だ。入っても構わないか?」




「ああ、構わん。入れ」




促した昴の声を合図に、生徒会小屋に入って来たのは、少し伸ばした緋色の髪を、(うなじ)で束ね、右方に鋭い刀傷が残った顔は精悍で、そこに黙って立っているだけでも、存在感を強く際立たせている男子生徒。


彼こそが、件の人物・己嶋(コジマ) (カナメ)である。


剣術部部長と言うだけあり、逞しい体躯だ。


身長も、昴ほどとはいかないが、それなりに長身が高い。



剣の腕でもそうだが、それ以外にも一目置かれているのが頷けると、昴が彼を近くの椅子に促しながら思った。




「悪いな、突然呼び出して」




「いや。こっちこそ助かった。人払いの件、ありがとうな」




そう感謝の言葉を口にした要が、昴に一礼し、少し離れた席にいた蕾と誠にも、同じく礼を口にする。




「蕾に誠だったか。お前たちもありがとうな、お陰で大事な話をゆっくりする事が出来た」




「おうよー!どういたしましてだじぇい!」




「いやーそれほどでも~。この海老沢 誠にかかれば、あんな事、造作もないんでね!! 」




明るく応えた蕾はともかく、凄い得意気に胸を張った誠の態度には、すかさず蕾がローキックを入れる。




「オメーは、ひっきりなしにナンパしてただけだろーが!! このエロザリガニ!! 」




「あうーんっ!! 」




ローキックを喰らわされた誠が、何やら気持ち良さそうな悲鳴を上げた為、表情をひきつらせた紗弓が、「気持ち悪い」と呟く。




「ああっ!! 胡蝶さん、その蔑むような眼たまらないね!ゾクゾクするよ!! 」




「きゃあああっ!! 本気で気持ち悪いっ!! 」




変なスイッチが入ったのか、息遣いを荒くした誠が紗弓に這いずり寄った為、ぶっとい青筋を浮かべた昴が、近くにあった銅器の置物を投げつけ黙らせる。




「せやから、昴。鈍器はあかんって……」




「知るか」




笑顔をひきつらせた一騎が、床でピクピクと痙攣してる誠を見やりながらぼやくが、吐き捨てた昴が改めて要に話かける。




「悪いな、騒がしくて」




「いや、楽しそうで良い。生徒会メンバーは、仲が良いんだな」




そう穏やかに微笑んだ要の様子に、昴、一騎、紗弓は、彼と言う人物像を改めて知る。


剣術家としての己嶋 要は、全学年を通して知らぬ者はいない程の猛者だが、一個人としての要は、年齢、性別問わず友好的で誠実だ。


だからこそ、年下だろうと、抵抗なく礼儀を通せる。




「ま、ボクも仕事だし。またいつでも頼ってよ、要さん」




再び椅子の上で胡座をかいた蕾が言う。


どうやら、先輩呼びが堅苦しく感じたのか、さん付けで彼を呼ぶ事にしたようだ。


もちろん、要もそんな小さい事は気にしていない。



と、その時。


昴が軽く咳払いし、本題を話す合図を一騎たちに送る。




「要、いいか」




「ん、ああ。すまない、始めてくれ」




昴は会長席に座り直すと、真っ直ぐに要を見据えて告げた。




「要、いや、敢えて剣術部の部長としてのお前に頼みたい。すでに噂を聞いてるかもしれないが、お前を部活動長、または風紀委員長にと言う推薦が多数きている」




「ち、ちょっと待て。オレに、その部活動長と風紀委員長の両方をやれと?! 」




案の定、驚きを見せた要が声を上げる。


だが、無理はないだろうと、昴は静かに眼を伏せた。


剣術部部長、部活動長、風紀委員長の一人三役はとてもじゃないが、無理な相談だ。




「あ、あの、さすがに要先輩でも一人で三つの役職をこなすのが難しいのは、解っています」




「そうや、だから先輩には部活動長をお願いしようと思っとったんです」




昴のフォローをするように、紗弓と一騎が口々に言い、頭を下げた。


そして、再び昴が口を開く。




「責任の重い役職の為、誰もやりたがらない。俺も、無責任な奴にはやって欲しくないんでな。その点、お前なら信頼できる。頼まれてくれないか?」




真剣な昴たちの頼みに、要は腕を組み、少し考える。


正直、信頼し頼られるのは嬉しいが、さすがに即答できる問題ではない。




「……各部活動の費用を管轄するのは生徒会で、トラブルが起きた際に対処するのが風紀委員。じゃあ、部活動長の管轄はなんだ?」




ふと抱いた疑問が、口をついて出た。


あまり聞き慣れない部活動長の管轄は、すぐに思い浮かばない。

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